「蟄居」の意味と使い方とは?「幽閉」「謹慎」との違いも解説

家で過ごすことが多いコロナ禍の状況において、「蟄居」の言葉が注目されています。そこで今回は江戸時代には刑罰であった「蟄居」の意味や使い方を解説します。あわせて蟄居にまつわる四字熟語や類語、さらに蟄居と「幽閉」「謹慎」との違いについても解説しています。

「蟄居」とは?

「蟄居」の意味は”家に閉じこもって外出しないこと”

「蟄居(ちっきょ)」の意味は、“家に閉じこもって外出しないこと”です。「冬の間は蟄居して過ごす」や「定年を迎えたら蟄居したい」などと使います。

また、現役生活から身を引いて隠居している老人のことを「蟄居している」と表現することもあり、隠居に近い意味で使われることもあります。

「蟄居」は江戸時代の”謹慎刑”でもあった

「蟄居」は、江戸時代には武士などに与えられた刑罰の名前でもありました。屋敷内の一室から一歩も出ることを許されない「謹慎刑」のひとつでした。

刑罰である「蟄居」には段階があり、罪が重くなると終身刑に近い「永蟄居」に処せられ、一生座敷から出ることが許されませんでした。家督を譲り権限がなくなる「蟄居隠居」もありました。

現在は刑罰の意味での「蟄居」の言葉は使われていません。

「蟄」には”かくれる・とじこもる”という意味がある

「蟄」は”かくれる・とじこもる”という意味です。「人が閉じこもる・虫が土中にこもって冬ごもりする」という意味もあります。

「虫が冬ごもりする」という意味の「蟄」にまつわる熟語には「啓蟄(けいちつ)」があります。「啓蟄」とは、二十四節気のうちの二月節を指し、”冬籠りの虫が這い出る”という意味を持ちます。「啓」とは”開く”という意味です。

「蟄居」と「幽閉・謹慎」との違いとは?

「蟄居」に似た意味を持つ言葉に「幽閉」と「謹慎」があります。それぞれについて意味の違いを解説します。

「幽閉」とは”自由を奪いある場所に閉じ込めること”

「幽閉(ゆうへい)」とは、自由に行動してもらうと困る人などを”ある場所に閉じ込めること”という意味です。「地下牢に幽閉する」などと使われるとおり、単に閉じ込めるだけでなく、社会的地位や人権などを奪い社会から抹消する目的を伴うことが「蟄居」との違いです。

「謹慎」とは”失敗を反省して外部との接触を避けること”

「謹慎(きんしん)」とは、”失敗を反省して外部との接触を避けること”という意味です。外部との接触を避けるために家からなるべく出ないようにすることを求められることもあります。他の人から命ぜられて謹慎する場合と、自らの意思で謹慎することがあります。

刑罰処分としての「蟄居」と「謹慎」は意味が似ていますが、単に家に閉じこもるという意味の「蟄居」とは意味が異なります。「謹慎」は失敗などの反省のための自粛であることがその違いです。

「蟄居」の使い方と例文とは?

「蟄居」は自粛生活を表現するのに使われる

江戸時代の刑罰としての「蟄居」という言葉は現代ではなじみがないものですが、家に閉じこもるという意味ではしばしば使われることがあります。特にコロナ禍での自粛生活を表現するのに使われることが多くなりました。

「蟄居」を使った例文

「蟄居」を使った例文をご紹介しましょう。

例文
  • 外出を自粛する蟄居の日々が続いている
  • コロナが怖いので蟄居閉門に即することにした

「蟄居」にまつわる四字熟語とは?

江戸時代の刑罰「蟄居閉門」

「蟄居」にまつわる四字熟語に「蟄居閉門(ちっきょへいもん)」があります。「蟄居閉門」とは、江戸時代に武士などに命じられた刑罰です。居室の一室にこもって外出をすることを禁じられた「蟄居」よりも重い刑罰となり、居宅の門も閉じることを命じられました。

刑罰とは違う意味で、家にこもることを象徴的に伝えるために「蟄居閉門」を使うこともあります。

息をひそめて家にこもる「蟄居屏息」

江戸時代の刑罰にである「蟄居」は”蟄居屏息(ちっきょへいそく)”とも呼ばれました。「屏息」とは”息をひそめて隠れる”という意味です。刑罰の意味から離れて、外出せずに息をひそめて家にこもることを「蟄居屏息」と呼ぶこともあります。

「蟄居」の類語とは?

「外出せず自分の住処にこもること」という意味の”巣ごもり”

「巣ごもり」とは、”外出せず自分の住処にこもること”という意味です。「巣にこもる」という虫や鳥などの行動を、人が外に出ることを控えて家にこもることにたとえた表現です。

2020年に始まったコロナ禍における外出自粛で、家にこもることから生まれた消費需要を「巣ごもり需要」と呼びましたが、巣ごもり需要は蟄居需要でもあったわけです。

「蟄居」の英語表現とは?

「蟄居」は英語で”confinement”

「蟄居」の英語表現は、一般的なものに“confinement”があります。「being confined to one’s house」とは”蟄居となる”という意味です。「彼は蟄居となった」は”He was confined to his house.”です。自ら自発的に家に閉じこもるのではなく、命令などによりそのような状態となったときの表現です。コロナ禍での外出制限における閉じこもりも「confinement」が使われます。

他に「蟄居する(家に閉じこもる・引きこもる)」を意味する英語の表現には「keep to the house」「keep to one’s house」「shut oneself up in one’s house」などがあります。

まとめ

江戸時代の武士への謹慎刑であった「蟄居」ですが、現代では自分が自ら家にとじこもることを「蟄居」と呼びます。その意味での蟄居は「巣ごもり」と同義です。コロナ禍で外出を自粛するなかで、「新型コロナ防疫のため蟄居する」などと蟄居の表現を使う人が見られるようになりました。

しかし現役を引退した人が隠居することを「蟄居」と呼ぶこともあるため、テレワークをしながらの巣ごもりとは少しニュアンスやイメージが異なるかもしれません。