「老いては子に従え」は江戸いろはかるたにも収録されていることわざです。身近なことわざですが、仏教や儒教の古い理論が由来になっています。意味や使い方とあわせて確認しましょう。また、反対語・類義語もご紹介します。
「老いては子に従え」のことわざの意味と由来とは?
「老いては子に従え」の意味は”年老いたら子どもに任せた方がよい”
「老いては子に従え」の意味は“年老いたら、何事も子どもに任せた方がよい”です。男性・女性を問わず高齢者のあり方を説いたことわざです。
ここでの「子」は、話題になっている高齢者の子どものことを意味します。親子関係に関することわざのため、若い世代全般のことを例えているわけではありません。また、何歳からなのかの目安も定まっていません。
「老いては子に従え」由来は女性に向けた儒教の理論”三従”
「老いては子に従え」の由来は仏教・儒教の古い理論”三従(さんじゅう)”です。「子どもの頃は親に、結婚してからは夫に、老人になったら子どもに」従うよう女性に勧める教えです。中国から伝わり、日本でも規範とされていた時代がありました。
「老いては子に従え」三従の全文
江戸時代の初めごろには最後の部分のみを、主に男性に使うようになったそうです。現在では性別を問わず使うようになりました。また、最初の2つは現在の日本では性差別だと感じる人が多いため、言われることは少ないでしょう。
「老いては子に従え」の使い方と例文とは?
「老いては子に従え」は親を説得する際に使う
「老いては子に従え」は、親を説得する際に子どもが使用します。格言として真剣に諭すよりも、冗談めいた言い方で、意地をはらないで欲しいとお願いすることが多いようです。
娘「お母さん、いつも家にこもっていないで、昔みたいにいっしょに遊園地に行こう」
母「私みたいなおばあさんが行ったら、周りの人に迷惑だわ」
娘「そんなことないって。『老いては子に従え』って言うでしょ、私の言うことを信じてよ」
同族経営の場合はビジネスシーンでも使用できる
「老いては子に従え」は親子関係に関することわざのため、基本的にはビジネスシーンで使用されません。しかし、同族経営の場合、自分の子どもへの世代交代の話題など「老いては子に従え」が相応しい場面もあり得るでしょう。
- 「老いては子に従え」のことわざの通り、店のことは息子に任せてそろそろ引退するべきかもしれない。
- 社長は見事な手腕で仕事を続けている。そのため「老いては子に従え」だと言う人はいなかった。
第三者がたしなめる場合は同年代以上が使う
第三者が親をたしなめる際に「老いては子に従え」を使う場合は、相手との関係や年齢差に注意する必要があります。相手を老人だとみなしていることになるためです。
若い人から言われると、失礼だと感じる人もいるでしょう。同年代か、自分の方が年上の場合のみ使うようにした方が無難です。
自分も昔は60歳なんてまだ若いと思っていたが、実際に還暦になると体力の衰えを実感したものだ。「老いては子に従え」という言葉もあるんだし、大きな事故になる前に子どもに頼った方がいいよ。
「老人は常に若い世代に従うべき」として使うのは誤り
「老いては子に従え」の誤用として多い意味は「老人は常に若い世代に従うべき」です。ことわざの意味とは違っていますので注意しましょう。
先ほどご説明した通り「老いては子に従え」は親子関係に関することわざのため「若い世代に従うべき」という意味はありません。
「老いては子に従え」の反対語とは?
「老いては子に従え」の反対語は”亀の甲より年の功”
「老いては子に従え」の反対語(対義語)は”亀の甲より年の功”です。「長年の経験や年長者の知恵は貴重なものだ」という意味になります。
本来は「亀の甲より年の劫」と書きますが、どちらの記載でも誤用とはされません。「劫」は長い時間を意味します。
「亀の甲より年の功」を使った例文
「亀の甲より年の功」を使った例文をご紹介しましょう。
- ベテランのA先輩は「亀の甲より年の功」のことわざの通り、誰にも負けない技術力を持っている。
- 災害で物流がストップしたが、祖母から聞いた節約術のおかげで何とか乗り切れた。「亀の甲より年の劫」とはまさにこのことだ。
「老いては子に従え」の類義語(類語)とは?
「老いては子に従え」の類義語は”負うた子に教えられて浅瀬を渡る”
「老いては子に従え」の類語は”負うた子に教えられて浅瀬を渡る”です。「負うた子に教えられる」と略することもあります。”自分より若い・経験が浅い人にも、教えを請うべき場面がある”という意味です。子どもを背負って、浅い場所を教えてもらいながら川を渡る様子で例えられています。
「老いては子に従え」と違い、このことわざの「子」は若い世代全般を意味します。
「負うた子に教えられて浅瀬を渡る」を使った例文
頼りない新人だと思っていたが、最新技術の知識はすでに自分を超えていた。「負うた子に教えられて浅瀬を渡る」とも言うし、素直に教えを請うべきだろう。
まとめ
「老いては子に従え」とは”年老いたら何事も子どもに任せた方がよい”という意味のことわざです。由来の理論は女性だけを対象にしたものでしたが、現在は性別を問わず使用されます。
年齢や親子関係に関わる言葉のため、第三者がさとすために使う場合は注意が必要です。相手との関係や年齢差を考慮して使用しましょう。