「足るを知る者は富む」とは、老子が記した仏教の教えを説いた書物「道徳教」の一節が由来のことわざ。「強めて行う者は志有り」と続き、四字熟語では「知足者富」と表記します。
この記事は「足るを知る者は富む」の意味や由来、使い方や例文の解説です。類語や英語表現として使えるフレーズも紹介します。
「足るを知る者は富む」とは?
意味は「満足を知る人は貧しくても心は豊かである」
「足ると知る者は富む」の意味は、“満足することを知っている人は、たとえ貧しくても心が豊かであること”です。「足る」とは”十分であること・満ち足りている”という意味で、「富む」とは”財産がある”とは別に”豊富である”という意味をもちます。
自分にとって必要なものや持っているものの大切さを知っている人は、貧しい生活をしていても精神的に豊かであるという戒めの言葉です。
由来は「老子」による仏教の教えの四字熟語
「足るを知る者は富む」の由来は、老子(ろうし)が記した「道徳教(どうとくきょう)」の一節です。老子は古代中国の戦国時代の思想家であり哲学者ですが、その存在については疑問視されている部分もあります。「道徳教」は老子が書いたとされる書物です。
「足るを知る者は富む」は老子の言葉で「知足者富」と表記します。
「強めて行う者は志有り」と続きがある
「足るを知る者は富む」はその後に「強めて行う者は志有り」と続きますが、さらにその前後にも文脈があります。「老子」が記したとされる「道徳教」の一節と、書き下し文・現代語訳を紹介しましょう。
人を知る者は智、自ら知る者は明なり。
人に勝つ者は力有り、自ら勝つ者は強し。
足るを知る者は富み、強(つと)めて行う者は志有り。
其の所を失わざる者は久し。死して而(しか)も亡びざる者は寿(いのちなが)し。
他人を理解することは普通の知恵の働きだが、自分自身を理解することは優れた知恵の働きが必要である。
力が有る者は他人に勝てるが、本当の強さが有る者は自分自身に勝つ。
満足することを知っている者は心が豊かであり、努力を続ける者はすでに志がある。
自分の本来の在り方を見失わない者は長生きをする。死んでもなお本来の自分を忘れない者が本当の長寿である。
「足るを知る者は富む」の使い方と例文とは?
内面が豊かなことが幸せであることの例え
「足るを知る者は富む」という言葉は、内面が豊かでいることは幸せであることの例えとして使います。
今あるものや周囲への感謝を忘れない人は、例え多くの物や財産を持っていなくても、心が豊かです。そういった人に対し「足ると知る者は富むとは彼女のような人のことだ」などと表現します。心が豊かで幸せに過ごしている人に対する称賛の言葉です。
現状を受け入れることで幸せに気づくことの例え
「足るを知る者は富む」という言葉は、今ある現状を受け入れることで、満足感や幸福感につながることに気がつく例えとしても使えます。
必要以上の物を手にいれたいと欲求するのではなく、日常の小さなことや周囲の人へ感謝する気持ちを持つことで、心が豊かになり幸せにつながるのです。「周囲への感謝を意識したら、足るを知る者は富むの言葉の意味がようやくわかりました」などと使います。
「足るを知る者は富む」を使った例文
「足るを知る者は富む」を使った例文をご紹介しましょう。
- いつも笑顔でつつましく過ごす彼女のような人を「足るを知る者は富む」と言うのでしょう。
- 人をうらやんでばかりいるのはどうかと思う。「足るを知る者は富む」と言うではないですか。
- 「足るを知る者は富む」とは言うが、その境地に至るのは難しい。
「足るを知る者は富む」の類語とは?
類語「足るを知るは第一の富なり」
「足るを知るは第一の富なり(たるをしるはだいいちのとみなり)」とは、”満足することを知っているのは一番の豊かさである”という意味です。
たくさんの物を持っていたり金銭的に恵まれていたりしても、その状態に満足をしていなければ心豊かであるとは言えないということ。決してお金持ちが幸せであるとは限らないという意味の言葉です。
類語「富は足るを知るにあり」
「富は足るを知るにあり(とみはたるとしるにあり)」とは、”心の豊かさは満足することを知ることである”という意味です。
現状に満足し周囲に感謝の気持ちを忘れないことこそが、心が豊かで幸せであるという意味の言葉です。幸せでありたいなら、現状に満足することを知るべきだとも言えます。
「足るを知る者は富む」の英語表現とは?
英語では「Enough is as good as a feast」
「足るを知る者は富む」に似た意味を持つことわざやフレーズは英語にもあります。そのひとつが“Enough is as good as a feast”ということわざです。
「Enough」は”十分な・足る”という意味で、「feast」は”ごちそう”という意味の単語。直訳すると「満腹ならごちそうも同然である」や「物事はほどほどにしなさい」という意味です。「足るを知る者は富む」の英語表現としても適しています。
まとめ
「足るを知る者は富む」とは、”満足することを知っている人は、たとえ貧しくても心が豊かであること”という意味のことわざです。日常の小さなことや周囲の人への感謝を忘れないことこそ幸せにつながるという、戒めの言葉。由来は老子の記した書物「道徳教」の一節です。
知人者智、自知者明。勝人者有力、自勝者強。知足者富、強行者有志。不失其所者久。死而不亡者壽。