スイスは高級な時計メーカーが多いことで知られていますが、なぜスイスの時計産業は、世界的な規模へと成長したのでしょうか。今回は、スイスの時計産業が有名になった歴史とその理由のほかに、主な有名時計メーカーや駅に設置されている鉄道時計についても解説します。
※この記事の担当:Light1(海外在住20年。スイス在住経験あり。アルプス山脈のトレッキングは最高です!)
なぜスイスの時計は有名なのか?
スイスの時計産業に歴史あり
スイスが時計で有名なのは、時計産業の歴史にあります。スイスが世界的に有名な時計産業の中心地として成長したいきさつは、16世紀にまでさかのぼります。宗教革命によりフランスにいたキリスト教カルバン派の時計職人が弾圧を受けて、スイスに亡命しました。一方、スイスの宝飾職人は宗教的な理由から贅沢が禁じられていたので、仕事にあぶれていました。
フランスから亡命してきた時計職人と、スイスの宝飾職人が技術を提供して、お互いが協力しながら時計を作り始めたのでした。
19世紀ごろにはスイス製の時計の知名度が高まり、現在では全世界の時計の売り上げにおいてスイス時計が20%以上をシェアするようになりました。
豊かな自然が時計作りに合っていた
スイスの時計産業が活発化したのは、時計職人がいたからだけではありません。スイスの自然が時計という精密機械を作るのに適した環境だったからです。
精密機械の製造には、空気が澄んでいることときれいな水が必要です。豊かな自然に恵まれたスイスは澄んだ空気ときれいな水の両方があったため、時計の製造に向いていたのです。
スイスが高品質の時計を作り続けられる理由
スイスで高品質の時計を作り続けられる理由として、優れた時計職人を育てるためにメーカー協賛の時計職人の養成機関などがあることです。
クォーツ(水晶)式の時計が主流なのに対して、スイスの高級時計には今でもぜんまいを使った機械式ムーブメントが採用されています。このムーブメントの製造には職人の技術は欠かせません。手間と時間のかかる機械式ムーブメントですが、これを使い続けることがスイス時計の誇りとも言えるでしょう。
スイス時計のブランド力を維持する秘訣は伝統を守ること
安くて大量に生産できるクォーツ時計が流行したときにも、スイスの時計メーカーは時代の波に押し流されることはありませんでした。伝統的なデザインやスイス時計の技術力の高さなどをPRすることでスイス時計ブランドのイメージアップを図りました。
またスイス時計としては価格を抑えた時計ブランド「スウォッチ」はクォーツを採用するもののスイスの高い時計の技術力は生かしました。こうしたブランドの人気が出ることで、スイスの高級ブランドの人気も復活を果たしたのです。
世界的に有名なスイス時計メーカーとは?
高級時計メーカーの人気は衰えを知らない
クォーツ時計が圧巻したときにもスイスの高級時計メーカーは時計の価格を下げることなく高級ブランドとしてのステイタスを守りました。なぜなら高級時計を買い求める人というのは、その時計を身につけたときの満足感を重視することをメーカー側が知っていたからです。高級時計のイメージを落とさない戦略を維持したため、現在もなおスイス時計の人気は衰えていません。
スイス時計を代表する主な高級時計メーカー
スイスを代表する時計メーカーは数多く、ここではスイス時計を代表する高級時計メーカーに絞って、その一部を紹介します。
- 「オメガ」
1848年創業。オリンピックの公式タイムキーパーとして採用されていて、品質に折り紙つきです。代表モデルにダイバースウォッチのシーマスター、ドレスモデルのコンステレーションがあります。 - 「タグホイヤー」
自動車業界で有名なメーカーで、プロドライバーが見やすい文字盤になっています。計測技術では画期的な技術革新を遂げて、1917年に世界初となる1/100秒まで、1966年には1/1000秒が計測できるマイクロタイマーを発表しました。 - 「ロレックス」
時計メーカーとして知名度の高い「ロレックス」。しかし創業は1905年とスイスの時計産業界では比較的歴史は浅いです。デザイン性を備えながら防水性など実用的でもある時計を作り続けています。
代表的なモデルはデイトナシリーズで、機械式でありながらストップウォッチ機能やベゼルに刻み込まれたメモリの「タキメーター」が特徴的です。 - 「オーデマ・ピゲ」
1875年創業で、今でも家族経営の時計メーカーです。世界初でステンレススティールを採用したモデル「ロイヤルオーク」は八角形のケースが特徴的で、オーデマ・ピゲの代表的なモデルです。 - 「パテック・フィリップ」
芸術の域に入っているとも言われることのあるデザイン性の高さが有名です。100件以上の特許を取り、現在でも職人による手作業によって製造されています。 - 「ヴァシュロンコンスタンタン」
1755年創業で歴史の長い時計メーカーです。ブランドのシンボルマーク「マルタ十字」で、高い技術力を誇り、複雑な機械式ムーブメントを採用したモデルを数多く発表しています。100年以上を経過したアンティークも市場で取引されていて、その価格は1億円を超えることもあります。
他にも、スイスの時計メーカーには、パイロットウォッチで有名な「IWC」や、角形デザインの「レベルソ」が人気の「ジャガー・ルクルト」、航空業界で有名な「ブライトリング」などたくさんの時計メーカーがあります。
スイスの駅に設置されている時計も有名って本当なの?
スイスの駅の時計は美術館に所蔵されている
モディーン社製造の「スイス・レイルウェイ・ステーションクロック」はスイスにある3000駅構内やプラットフォームに設置されていて、この時計のデザインを採用した腕時計も発売されています。
見やすいだけでなくデザイン性が高いことからニューヨーク近代美術館にも所蔵されています。
まとめ
スイス時計の性能が高くデザイン性もあるため世界的に有名です。これほど高い技術力が保たれているのは、長い歴史に裏付けされた時計生産のノウハウを持ち、それを維持するために職人の養成機関があるからでしょう。またスイスの豊かな自然があったから時計という精密機械の製造ができることも忘れてはいけないポイントです。