「上意下達」の言葉は、組織管理の「トップダウン手法」のスマートなイメージがある一方、独裁国家の統治手法のような窮屈なイメージを思い浮かべることもあるかもしれません。加えて間違った読み方を多くの人がしていると指摘されることが多い熟語です。
この記事では、「上意下達」の意味や読み方を改めて確認し、使い方や類語・対義語も紹介しています。
「上意下達」の意味とは?
「上意下達」の意味は”上の者の命令や意志を下の者に伝えること”
「上意下達(じょういかたつ)」の意味は、“上の者の命令や意志を下の者に伝えること”です。あわせて、上意下達で統制される組織の管理体制を指して使われる四字熟語です。
「上意下達」の管理手法は「トップダウン手法」とも同義で用いられることから、意思決定を迅速に行い素早く成果を上げることができるアメリカ式の合理的な管理手法を指す言葉としても用いられます。
その一方で、軍隊や一党独裁による抑圧的な管理手法のイメージもあるため、「上意下達」の語が用いられる状況や背景によってポジティブな意味で捉えられたり、ネガティブな意味で捉えられたりします。
「上意」とは”上に立つ人や組織の考え”という意味
「上意」とは”上に立つ人や組織の考え”という意味です。「上意」の「上」とは”序列が高い人・上位にいる人”や”組織の上”という意味を持ちます。
「下達」とは”上の者の命令や意志を下の者に伝えること”
「下達」とは”上の者の命令や意志を下の者に伝えること”、またそれに加えて「その意思を徹底させること」をも含めた意味を持ちます。つまり、「下達」の語のみで”上意下達”の意味を持っていることになりますが、下達の管理体制を示す際には「上意下達」が使われます。
「上意下達」の読み方とは?
「上意下達」の読み方は”じょういかたつ”
「上意下達」の読み方は“じょういかたつ”です。「じょういげだつ」と読む誤読が多いので注意が必要です。
「上流・下流(じょうりゅう・かりゅう)」「上限・下限(じょうげん・かげん)」のような読み方がされる熟語と同じ読み方として覚えておきましょう。
「上下」の読み方につられて”じょういげたつ”と読まないように注意
「下達(かたつ)」を”げだつ”と誤読してしまう原因としては、「上下」の読み方が”じょうげ”であることや、「上巻・下巻(じょうかん・げかん)」「上旬・下旬(じょうじゅん・げじゅん)」などのように「上(じょう)」と「下(げ)」の読み方が対になる熟語が多いことではないかと思われます。
「上意下達」の使い方と例文とは?
組織の管理体制を指す「上意下達」の使い方
「上意下達」は、組織の体制を言及する際に使われることが多い言葉です。次の例文のような使い方です。
- 上意下達の組織は意思決定が早いというメリットがあるが独裁になりやすいデメリットもある
- 日本の企業組織は上意下達の文化がある一方で、下意上達の民主的な文化も大切にしてきたという側面もある
「上意下達」の類語とは?
企業経営の管理方式の類語「トップダウン」
日本語で「上意下達」と訳される外来語に「トップダウン」があります。トップダウンは英語で「top-down」と書き、「top(頂点)」から「down(下)」へという意味の企業経営の管理方式です。
具体的には、組織の上層部が意思決定を行い、下部の組織に実行を指示します。下部の組織はピラミッド構造となっており、上位から下位に向かって段階的に指示が行われます。
ある側面では類語となる「全体主義」
「全体主義」とは、政治体制としての意味は「個人の権利や社会集団の自由な活動を認めず、すべてを国家の統制下に置く主義」となります。広い意味では「個に対して全体を優先させる主義」のことで、「全体主義的な〇〇」というときはそのような考え方や傾向があることを指します。
全体主義の政治体制としてはナチス・ドイツや一党独裁の共産主義国などが代表例です。政治体制とは別に、個人が異を唱えることを禁じたり、上意下達で統制しようとする組織や集団を指す言葉としても使われます。
いずれの場合も上位の者が全体を統治するという意味で、全体主義は上意下達と親和性が高い考え方です。
「上意下達」の対義語とは?
下の意見が上位の人に届くこと「下意上達」
「上意下達」の対義語は「下意上達(かいじょうたつ)」です。「下意上達」とは、”下の者の気持ちや意見が上位の人に届くこと”という意味です。組織の下の人が上の人に意見を言える組織形態を指すこともあります。
下からの意見を吸い上げる管理方式「ボトムアップ」
下からの意見を広く吸い上げ経営に反映させる管理方式を「ボトムアップ」と呼びます。トップダウンの対義語です。トップダウンの日本語訳が「上意下達」とされることと対比して、ボトムアップの日本語訳が「下意上達」とされることもあります。
まとめ
「上意下達」とは、”上の者の命令や意志を下の者に伝えること”という意味ですが、組織の上層部が意思決定を行い、下部の組織に実行を指示する組織形態のことを指すこともあります。
その意味では「トップダウン」と同じ意味とされますが、同じ意味でありながらも、トップダウンはアメリカ式の合理的な管理手法とのイメージがある一方、上意下達は戦前の軍隊や独裁者による支配政治をイメージするという違いがあるように思われます。