「竹馬の友」の意味と語源は?類語や『走れメロス』との関係も解説

「彼とは竹馬の友(ちくばのとも)だ」と日常会話にも使われるのが「竹馬の友」です。もともとは中国にいた二人の軍人の関係から生まれた言葉だと、ご存知でしょうか?

ここでは「竹馬の友」について、意味と語源、類語や例文を紹介します。名作「走れメロス」に見る「竹馬の友」のあり方にも触れながら解説しましょう。

「竹馬の友」の意味とは?

「竹馬の友」の意味は「幼なじみ」

「竹馬の友」は「小さい頃から遊んでいた友達」つまり「幼なじみ」のことです。「竹馬の友」は「幼い頃からの付き合い」であり、泣いたり転んだりしながらも日暮れまで一緒に遊んだというような、また、かけがえのない記憶をも蘇らせる言葉なのかもしれません。

「良きライバル」の意味もある

「竹馬の友」の意味として使われているのは「幼なじみ」ですが、昔は「良きライバル」という意味でした。「竹馬の友」の由来については後ほど解説しますが、語源となった中国の軍人「殷浩(いんこう)」と「桓温(かんおん)」は、子供ながらに「闘争心」が強かったと言われていたそうです。結局は「殷浩」が北伐の司令官となったり、「桓温」に至っては皇帝の位を奪おうとするところまで到達し、二人そろって偉大な人物となりました。

それでも「殷浩」は「桓温」との長い付き合いがあるため、「まあ、桓温より私の方が上だということにしておくか」と「敬意」を示し、話していたことが綴られています。まさに「竹馬の友」とは「良きライバル」であったということが理解できます。

後漢という怒涛の時代に生まれた「竹馬」に、幼い頃の「ライバル心」と「幼なじみ」であるという無二の存在が重なってできた言葉が「竹馬の友」ということなのでしょう。

読み方は「ちくばのとも」、「たけうま」は誤り

「竹馬の友」は竹でできた昔の遊具「竹馬」と書くために、「たけうまのとも」と読み間違えてしまうこともあるでしょう。「たけうまのとも」は誤りで、正しい読み方は「ちくばのとも」となります。

しかし、「たけうま」と誤読してしまうことは、意味や由来から考えると納得する点も無きにしも非ずです。

「竹馬の友」の語源と由来

「竹馬」は「春駒」と呼ばれた遊具

「竹馬の友」の「竹馬」とは、現在の竹馬とは違い、昔子供たちが「馬」に見立ててこしらえた「春駒」と呼ばれる遊具のことです。春駒は竹の棒の先の部分に馬の鬣をつけたもので、子供たちはそれに跨り、競い合うように走って遊んでいたそうです。

由来は「晋書 殷浩伝」から

中国の「晋書 殷浩伝」によれば、殷浩(いんこう)と桓温(かんおん)という二人の軍人による「幼い時の記憶」が、現在の「竹馬の友」の由来になっていることが理解できます。

話は三国時代が終わり、太平の時代を迎えようとしていた頃、異民族の侵略により晋王朝が滅ぼされてしまいました。緊迫した状況の中、当時、哲学議論が国を沸かせており、その中で名声の高かったのが「殷浩」でした。

そして、「殷浩」の幼なじみ「桓温」が民衆に言った言葉が「殷浩とは幼き頃、竹馬で遊んだものだ。私(桓温)が竹馬を棄てたら、殷浩がそれを拾って遊んでいたのだから、私{桓温)の方が上だ」と立場を主張したことが書かれています。

「走れメロス」における「竹馬の友」とは?

メロスにとっての「竹馬の友」はセリヌンティウス

太宰治の「走れメロス」では、メロスの「竹馬の友」である「セリヌンティウス」の存在はとても偉大でしょう。

セリヌンティウスはメロスと2年間会っていませんでした。しかし、突然、警備兵に呼び出されたかと思ったら、メロスに「妹の結婚式に出たい、身代わりになってほしい」とお願いされてしまいます。しかも、それを引き受け、さらに3日間で戻らなければ「セリヌンティウス」は死刑となってしまう、という話です。罪を一つも犯していない者が鞭に打たれる場面に、心を痛めた人もいるかもしれません。

正直者で猪突猛進な性格であったというメロスと心優しいセリヌンティウスの関係は、多くの人の心に関心を呼びました。「嫌とは言えない友達」なのか「心から信頼できる友達」なのか、メロスとセリヌンティウスに見る「竹馬の友」にはさまざまな意見もあることでしょう。

「竹馬の友」を使った例文

「竹馬の友」5つの例文

  • 彼とは竹馬の友だ。一緒に学校に通い放課後はサッカーをして遊んだ友達である。
  • 高校が別々になり離れてしまったが、竹馬の友であるNとは連絡をずっととっている。
  • 竹馬の友だからこそ、たまには喧嘩もするものだ。
  • 気心が知れた友達は、小学校からの友人、つまり「竹馬の友」ばかりである。
  • 竹馬の友はかけがえのない宝であろう。幼いころの記憶を楽しく話せる仲間だからね。

「竹馬の友」の類語

「竹馬の友」の類語は「旧友」「旧知の仲」

「竹馬の友」の類語には「旧友」「旧知の仲」「年来の友人」「古友」「古馴染み」「幼友達」などがあります。状況に応じで適した類語を選び、口語や文章で言い換えてみましょう。

  • そんなに怒らないでくれよ。旧知の仲と言うではないか?
  • 幼友達であるからこそ、気兼ねなく何でも相談できるものだ。

中国から伝わった話が由来の類語は「断琴の交わり」「管鮑の交わり」

「竹馬の友」のように、中国から伝わった話が由来となる類語には「断琴(だんきん)の交わり」「管鮑(かんぽう)の交わり」「刎頚(ふんけい)の交わり」「水魚(すいぎょ)の交わり」「金石(きんせき)の交わり」があります。どれも中国の古い話から成語となった「幼なじみ」を表現する言葉です。

  • 私と君とは「断琴の交わり」だと言ったら、大げさであろうか?
  • 同僚の田中さんとはケンカもするが、実は「金石の交わり」である。

まとめ

「竹馬の友」は「ちくばのとも」と読み、「幼なじみ」「小さい頃から一緒に遊んだ友達」を指す言葉です。由来は中国で、もともと「良きライバルであるが、時にはケンカをする仲間」という意味で使われていました。

中国から伝わった言葉の由来や「走れメロス」に見る幼なじみのあり方から、学ぶべき点はいくつもあるでしょう。あなたにとっての「竹馬の友」とはどのような存在ですか?