「自虐史観」の意味や使い方とは?注意点や教育・教科書との関係

「自虐史観」という言葉は、掲載しない辞書が多いため、言葉や意味を知らない人もいるでしょう。歴史の考え方に関する言葉で、教育・教科書にも影響を与えていると考える人もいます。意味や使い方、注意点をご紹介します。

「自虐史観」の意味とは?

「自虐史観」の意味とは”自国の歴史を過剰に悪とする考え方”

「自虐史観(じぎゃくしかん)」の意味は“自分の国の歴史・過去を過剰に悪とする考え方”です。数々の問題から、自虐史観を改めるべきだという声を上げる人もいます。

「自虐史観」自体は辞書に載っていません。しかし「自虐」と「史観」はどちらも辞書に載る一般的な言葉です。「自虐」は”自ら自分をいじめて苦しめること”、「史観」は”歴史を全体的に見て解釈する考え方・立場”を意味します。

「自虐史観」の使い方と例文とは?

主に太平洋戦争やアメリカの占領政策の話題に使用する

日本で主に「自虐史観」を使うのは、太平洋戦争の話題です。例えば、歴史上他国も行っていた侵略・植民地支配を日本だけが悪いかのように自ら責めることを「自虐史観」と表現します。なお、「自虐史観」はネガティブな言葉です。そのため、改善を求めたり批判したりする際に使用します。

太平洋戦争に関する自虐史観が広まったのは、アメリカの占領政策だという意見もあります。WGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)という政策で、敗戦国である日本に罪悪感を強く意識させたかったという説です。WGIPには不明点が多く、都市伝説のように様々な説が唱えられています。

ドイツも「自虐史観」が強いとする意見もある

日本と同じく、太平洋戦争の敗戦国とされるドイツにも「自虐史観」が強いという意見もあります。ドイツの場合はナチを生み出してしまった事を恥じ、自虐史観をしているという考えです。

ただし、これには反対意見もあります。ドイツはナチの事は深く反省していますが、国家自体を悪とは見なしていません。そのため、「自虐史観とは言えない」と考える人もいるようです。

「自虐史観を改める」は”公平な歴史の考え方をする”こと

「自虐史観を改める」と使う場合、”過去の自国を悪だと決めつけず、公平に歴史を考える”という意味になります。他にも「自虐史観から脱却する」も、同じ意味で使われています。

自国を無条件に肯定して全ての罪を認めないことは「自虐史観を改める」とは言えません。ただし、そのような意見の人も「自虐史観」という言葉を使うことがあるようです。

「自虐史観」はレッテル貼りに使用されることがある

「自虐史観」はレッテル貼りに使用されることがあります。日本を貶めるつもりではなく、しっかりとした資料を基に発言する人に「自虐史観で史実を捻じ曲げている」と決めつけてしまうことが起こり得ます。逆に、公平に歴史を見ようとしている人を「自虐史観だと思い込んで、歴史を不適切に修正しようとしている」と非難することもあるでしょう。

どちらの場合も、相手とのトラブルにつながる可能性があります。「自虐史観」がレッテルになっていないか、慎重に判断するべきでしょう。

「自虐史観」を使った例文

「自虐史観」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 自虐史観を改めるためには、当時の史料を集める必要がある。
  • 噂レベルの犯罪も事実のように伝えるのは、自虐史観に他ならない。
  • 信ぴょう性の高い史料があるのに「自虐史観だから」と目を反らすのは問題ではないだろうか。
  • 自虐史観から脱却し、客観的な考え方をしていきたい。

「自虐史観」の注意点とは?

「自虐史観」は辞書にない言葉のため使う場所・相手に配慮する

先ほどお伝えした通り「自虐史観」は殆どの辞書に掲載されていません。日常的に使われる言葉でもありませんので、歴史に詳しくない人は知らない可能性があります。会話や文章に使用する場合、相手に通じないことを想定しておきましょう。

「自虐史観を改める」=「軍国主義の肯定」ではない

自虐史観に関する考えで誤解されやすいのが「自虐史観を改める」ことが必ずしも「戦前・戦中の軍国主義の肯定」につながるとは限らないという点です。

軍国主義を肯定する人たちも、自虐史観の是正を求めることがあります。しかし、本来「自虐史観を改める」のは、不公平に自国を悪く扱うのを止めることを意味します。「軍国主義の否定」と「自虐史観の否定」は両立する考え方です。

「自虐史観」の問題点とは?

「自虐史観」の問題点は”自国・自分に誇りを持てない”

「自虐史観」の問題点のひとつは、自分の国に誇りを持てなくなることです。同時に、そんな国に生まれた自分自身を大切に思えなくなったり、自信を失ってしまうと危険視する人もいます。

教育・教科書が過度に「自虐史観」だとする考えがある

自虐史観は教育・教科書にも影響を与えています。日本の悪事を過度に強調する、他国を助けた内容は掲載しないなどの過度に自虐的な教育内容になっているという考えです。現在は教科書改善の声を受け、内容が変更されつつあるようです。

まとめ

「自虐史観」とは”自分の国の歴史・過去を過剰に悪とする考え方”です。ネガティブな言葉のため改善を求める、批判するなどの用途でよく使用されます。

歴史は立場によって見方が変わるものなので、単純に善悪を決められるものではありません。安易に「自虐史観」と批判するとトラブルにつながる可能性があります。