「知らぬが仏」は日常でも職場でも広く使われていますが、本当の意味や由来について理解している人は少ないでしょう。
ここでは「知らぬが仏」の意味と由来、類語と対義語、また英語表現をわかりやすい例文で紹介しています。この機会に言葉の意味を深めてみて下さい。
「知らぬが仏」の意味と由来とは?
さっそく、「知らぬが仏」の言葉の由来と意味から解説していきましょう。
意味は「知らないことの幸せ」
「知らぬが仏」の意味は、「知らないことの幸せ」です。「知ると不愉快になるものごとでも、知らなければ心を乱すことはない」という意味のことわざです。つまり「知らなければ、仏のようでいられる」ということになります。
また「知らぬが仏」は「事実や出来事を知らなければ腹を立てたり、憎しみを抱いたりしなくて済む」「知らないが故に気が楽である」というような状況を指している言葉です。しかし、もっと深く考察すれば「知るまでは良いことか悪いことかはわからない、だけど、もし悪いことなら知らないほうが平静でいられる」という気持ちの表れだとも解釈できるでしょう。
由来は「江戸いろはかるた」の一句
「知らぬが仏」の由来は「江戸いろはかるた」です。後世では正岡子規の「かけはしの記」、菊池寛の「私の日常道徳」、夏目漱石の「吾輩は猫である」で「知らぬが仏」がそれぞれ使われています。
「知るが煩悩」を後につけて使う
「知らぬが仏」は「知らぬが仏、知るが煩悩」というようにも言葉の意味を補足する形で使われることもあります。「知らぬが仏」で「知らなければ心を乱すこともない」ことを示し、「知るが煩悩」で「知ってしまえば悩みが増すだけ」と念を押しているのです。
「知らぬが仏」の使い方と5つの例文とは?
続いて「知らぬが仏」の正しい使い方を説明しながら、5つの例文を挙げてみましょう。
「知らないほうが良いこともある」場合に使う
「知らぬが仏」を使う時は、あれやこれや首を突っ込んで何でも知りたがろうとするよりも「仏のように穏やかな気持ちでいたいのなら、敢えて知ろうとすることはない」という状況で使います。
「知らぬが仏」を使った5つの例文
「知らぬが仏」を使った5つの例文をご紹介しましょう。
- 母の日記を読むのはやめておこう。「知らぬが仏」だ。
- 「知らぬが仏」だ。定時後、会社に電話をするのはやめよう。
- 同僚が上司に呼び出されていたが「知らぬが仏」といって放っておくわけにはいかない。
- もめ事をしている同僚のカップルを横に「知らぬが仏」と言い聞かせている自分がいた。
- 「知らぬが仏」とは言うが、取引先の噂の真相は明らかにしたい。
「知らぬが仏」の類語と対義語とは?
それでは「知らぬが仏」と言い換えができる類語と対義語についてみてみましょう。
類語は「言わぬが花」
「知らぬが仏」の類語にあたるのは「言わぬが花」「見ぬは極楽」「見ぬ物清し」「世間知らずの高枕」「聞くは気の毒、見ぬは目の毒」「知らぬが亭主ばかりなり」などかあります。
中でも「言わぬが花」は「ものごとを露骨に話すより、黙っていたほうが値打ちがある」ということのたとえです。口数の少ない人の方が趣があるように思えるのは、まさに「言わぬが花」のことでしょう。
対義語は「知は力なり」
「知らぬが仏」の対義語にあたるの言葉は「知は力なり」です。「知は力なり」は16世紀から17世紀に活躍したイギリスの哲学者フランシス・ベーコンが残した名言であり、英語では「Knowledge is power」、意味は「知識そのものが力になる」となります。
「知らぬが仏」の英語表現とは?
最後に「知らぬが仏」の英語表現を紹介しましょう。日本のことわざを勉強している方のために、「知らぬが仏」の英語での説明文も加えています。
英語では「blessed ignorance」「happy ignorance」
「知らぬが仏」を英語で表すなら「blessed ignorance」「happy ignorance」などが適切な表現になるでしょう。「知らないことは幸せ」「無知の美徳」などのようなニュアンスがあり、海外でも日本と同じような感覚で使われています。
- 「Your boss has been looking for you」「Oh well I am going home. Happy ignorance」
「ボスが探していたみたいだけど」「いや、家に帰るよ。知らぬが仏というでしょう」
まとめ
「知らぬが仏」は「知ることで傷つくなら、知らないままでいたほうが平静でいられる」という意味のことわざで、「知らなければ、仏のように穏やかさを保つことができる」ことのたとえです。
職場ではありとあらゆるゴシップや、嘘や誠が飛び交う場所でもあるでしょう。しかし、一度耳に入ってきたしまった情報は、フィルターを通しても、ろ過しきれないこともあるでしょう。
「知らぬが仏」の精神で仕事に集中できる環境を守るのも、ビジネスパーソンとして成功する一つのテクニックです。仏のように穏やかになるのは、案外難しいことではないのかもしれません。