人をおどして恐れさせる行為をさす「恫喝」。恫喝まがいのパワハラが横行しているとも指摘されています。恫喝がエスカレートすると「恐喝」や「脅迫」などの犯罪にまで発展するため、正しく認識しておくことが大切です。
この記事では、「恫喝」の意味からパワハラにおける恫喝の例、関連する刑罰なども紹介。あわせて類語との違いも解説します。
「恫喝」の意味とは?
「恫喝」の意味は”おどして恐れさせること”
「恫喝(どうかつ)」の意味は、“おどして、恐れさせること”です。職場での部下に対するパワハラ行為としての恫喝や、相手の人権を無視したいじめ行為の中で行われる恫喝などがあります。
いずれにしても「恫喝」は、態度や言葉によって相手を理不尽に「恐れさせる」行為であり、人権を無視した行為です。
「恫・喝」どちらも”おどす”という意味
「恫・喝」のどちらも”おどす”という意味を持ちます。「恫」の漢字は「恫喝」のほかには一般的な熟語には用いられていませんが、「喝」の漢字は”恐喝・一喝・喝破”などの熟語に用いられています。
「恫喝」の事例と刑法の関係とは?
「パワハラ」における”恫喝”
パワハラとは、和製カタカナ語である「パワーハラスメント」の略語で、「職権などを背景にして、人格や尊厳を侵害する行為を行うこと」という意味です。厚生労働省は、パワーハラスメントの具体的な定義のひとつに「身体的もしくは精神的な苦痛を与えること」を示しています。
事例としては、「ふざけるな・役立たず」などの暴言を吐いたり、大勢の前での叱責、名誉棄損などの行為です。これらの行為は、おどして恐れさせる「恫喝」にもあたります。パワハラによって被害を受けた被害者は民事で訴訟を起こし、損害賠償を求めることが可能。
また、「恫喝」が無理を迫る強迫行為・害悪を加える強要行為に発展すると、刑事事件として刑罰に問われることになります。
「恫喝」から犯罪になることも
「恫喝罪」という刑罰はありませんが、刑法によって定められている刑罰に「恐喝罪・脅迫罪・強要罪」があります。つまり、おどして恐れさせる恫喝行為に加えて危害を加えることを告知したり、義務のないことを強要したりすると刑罰の対象となるということです。
「恫喝」から発展する刑罰の例
- 恐喝罪
人をおそれさせ財産を交付させる行為が処罰の対象。
たとえば「〇〇されたくなければ10万円をよこせ」などとおどして金品を要求する行為です。 - 脅迫罪
生命や自由などに対して危害を加えることを告知した場合が対象です。
たとえば、職場内で上司が部下に対して「時間通りに終わらなければ痛い目にあわせるぞ」と発言した場合は危害を加えることを伝えているため、脅迫罪が成立する可能性があります。 - 強要罪
相手の生命や財産などに対して害悪を与えることを告知し、相手に義務のないことを強要する行為に対して成立します。わかりやすい例が、おどして土下座を無理強いする行為です。
「恫喝」の類語や言い換え方とは?
恐喝:おどして金品などをゆすりとること
「恫喝」はおどして恐れさせることですが、「恐喝」はおどして恐れさせる行為に加えて金品などをゆすりとることをいいます。恐喝行為は、恐喝罪に問われる犯罪行為です。
強迫:おどして無理を迫ること
「強迫(きょうはく)」とは、人をおどして恐れさせるという意味です。「強く迫る」と書くとおり、相手の自由な意思の決定を妨げ、無理なことを要求します。
「恫喝」はおどして恐れさせる行為ですが、「強迫」はそれに加えて無理を迫る行為であることが両者の違いです。たとえば、嘘を言うように相手をおどして強制することを「嘘を言うように強迫する」と表現しますが、「嘘を言うように恫喝する」とは表現しません。また、「強迫観念」との言葉があるとおり、「強迫」は、迫るように頭に浮かんでくる不快な考えのことも意味します。
脅迫:刑法で罪を規定する用語
「強迫」の同音語でかつ「おどす」という意味も同じ言葉に「脅迫(きょうはく)」があります。両者の違いは、「脅迫」が刑法において罪を規定する用語となっていることです。
威嚇:威力や武力によるおどし
「威嚇」は「恫喝」と同じ意味、すなわち「おどす」という意味です。そのほか、「威嚇(いかく)」には「威力・武力などによるおどかし」という意味もあり、使い方の例として「威嚇射撃」が挙げられます。
威圧:強い勢いで相手をおさえつける
「威圧(いあつ)」とは、相手を圧倒したり従わせたりするような強い勢いで相手をおさえつけることという意味です。「威圧的な態度」とよく使われるように、言葉や表情・しぐさなどを含めた全体的な態度に対して使われます。
まとめ
パワハラが「人格や尊厳を侵害する行為」であると定義されていることと同様に、「恫喝」も相手の人格や尊厳を侵害する行為です。刑事罰となる恐喝や脅迫が行われていなくとも、人格や尊厳を侵害された場合には、民事訴訟を起こすことができます。
また、平成元年には、事業主に対して、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務が新設されています。社員にハラスメントの被害が発生した場合、会社はその損害を賠償する責任があることも知っておきたいところです。