「怨嗟」の意味や読み方とは?類語「怨恨・怨念」との違いも解説

「怨嗟」は見たことがあってもその正しい読み方が「えんさ」だと知らない人も多いのではないでしょうか。また、怨恨や怨念とも似ていて違いが分かりにくいですよね。今回は「怨嗟」の意味と読み方のほかに、「怨嗟」を使った言い回しを解説します。また「怨恨」や「怨念」との違いや英語表現も紹介します。

「怨嗟」の意味と読み方とは?

「怨嗟」の意味は”嘆くほどの恨む気持ち”

「怨嗟」の意味は、“嘆くほどの恨む気持ち”です。「怨嗟」のうらみ嘆く状態とは、不満や愚痴を漏らすといった程度ではなく、腹の底から煮えたぎるような怒りや憎しみを抱くほどのとても激しい感情です。

「怨嗟」に「怨」の意味は恨むという意味があり、「嗟」は嘆くという意味があります。

「怨嗟」の読み方は”えんさ”、「おんさ」は誤り

「怨嗟」の正しい読み方は“えんさ”です。よくある読み間違いとして「おんさ」があります。この読み間違えは、「怨嗟」の”怨”という漢字が「怨念」や「怨霊」などに使われていて、その時の「怨」の読み方が”オン”だからでしょう。

「怨」は漢字検定2級に出題される難易度の高い漢字であり、怨嗟の「嗟」は常用外の漢字です。正しく読むのは難しい言葉ですが、「怨嗟」を使った表現とあわせて覚えておきましょう。

「怨嗟」の使い方と例文とは?

怨嗟の念:うらみ嘆いている感情

「怨嗟の念(ねん)」とは、うらみ嘆いている感情という意味の言い回しです。「念」とは、思いやきもちという意味で、もともとは仏教用語でした。仏教用語としての「念」は、ものごとをはっきりと記憶することという意味です。

たとえば、「彼は彼女に振られてからずっと怨嗟の念を抱いている」というように使います。

怨嗟の声:うらんでいる人の意見や考え

「怨嗟」を使った言い回しの中でもよく聞かれる「怨嗟の声」とは恨んでいる人の意見や考えという意味です。ちょっとした不満程度には使われず、不満を通り越して憤りさえ感じている人の意見や考えのことです。

例文
  • 購入者から怨嗟の声が上がった。
  • 怨嗟の声を吐くことで、彼女の怒りは収まったかのように見えた。

怨嗟の的:うらみ嘆くほどの相手

「怨嗟の的(まと)」とはうらみ嘆くほどの相手のことを意味する典型的な言い回しです。「的」は狙った対象という意味で使われています。

例文
  • 機密情報をばらした元会社員は怨嗟の的になった。
  • 私が怨嗟の的になっているところに駆けつけた彼のお陰で命拾いをした思いだった。

怨嗟を買う:相手がうらみ嘆くこと

「怨嗟を買う」とは、相手に恨み嘆かれることを意味します。自分がしたことが引き金になって、相手がうらみ嘆く気持ちが強まったときに使われる表現です。使い方の例として、「所得税の値上げが国民の怨嗟を買うことになった」と表現します。

「怨嗟する」はあまり使わず”怨嗟を生む”と使う

「怨嗟」を動詞化して「怨嗟する」という用法はあるのですが、あまり使われない使い方です。
「怨嗟する」の代わりには「怨嗟を生む」などの言い回しを使うといいでしょう。「怨嗟を生む」で、怨嗟の念が出てくることを表しています。

「怨嗟を生む」を使った例文
  • これ以上給料を引き下げたら、社員の怨嗟を生むだろう。
  • たくさんのルールでしばりつけたら、怨嗟が生まれてくるんじゃないか。

「怨嗟」を使った例文

「怨嗟」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 社長の弁解を聞いていた社員の感情は徐々に怨嗟へと変わっていった。
  • 市長の横暴なやり方に、市民から怨嗟の声が上がった。
  • 言葉を失った彼女は、怨嗟のまなざしで恋人を見つめた。

「怨嗟」の類語と例文とは?

類語①「怨恨」とは深く恨むこと

「怨恨(えんこん)」とは深く恨むことという意味で、相手への恨みがとても深く、怒りや憎悪などのネガティブな感情が入り混じっている状態です。「怨恨の念」のように「怨嗟」と似た使われ方をして、「怨嗟」よりも使われる機会の多い言葉でしょう。

例文
  • 怨恨による犯罪だった。
  • 心の底に眠っていた怨恨が波立ってきた。

類語②「怨念」とは恨む気持ち

「怨念(おんねん)」とはうらむ気持ちという意味の言葉です。執念になっているほどの恨んでいる思いのことを指します。

「怨念」と「怨嗟」の両方とも恨みの度合いは同じくらい深いのですが、「怨念」はその恨んでいる気持ちそのものにフォーカスされているのに対して、「怨嗟」は恨む気持ちがあふれだしそうな状態にまで高まっている様子を表しています。

例文
  • 何年も続いた夫からの虐待から、妻は怨念を抱くようになった。
  • 怨念を晴らすかのように、被害者は犯人を罵倒した。

類語③「遺恨」とは忘れられないほどの恨み

「遺恨(いこん)」とは忘れられないほどの憎しみや恨みのことです。「遺恨」の「遺」という漢字は”残す”という意味があり、「遺恨」は恨む気持ちが残ることから、忘れられないほど深い恨みという意味になります。

「怨嗟」のように「遺恨」には嘆くという意味合いはないが、その恨みの深さは「怨嗟」のように深いと言えるでしょう。

「怨嗟」の英語表現と例文とは?

「怨嗟」は英語で”resentment”

「怨嗟」は英訳は“resentment”ですが、ただ怨嗟の意味合いほどに「resentment」は恨みの度合いは深いとは言えないので、深いという意味の形容詞「deep」などと組み合わせると「怨嗟」の意味に近くなるでしょう。

「怨嗟」の英語例文

「怨嗟」の英語表現を使った例文をご紹介しましょう。

  • “They have deep resentment.”
    「彼らは怨嗟の念を抱いている」
  • “The feeling of the employees who were listening to the excuse of president gradually turned into resentment.”
    「社長の弁解を聞いていた社員の感情は徐々に怨嗟へと変わっていった」

まとめ

「怨嗟」とは深い恨みにより嘆くことという意味の言葉ですが、恨む感情が大変強い状況で使われる言葉です。軽々しくは使えない言葉ですので、「怨嗟」という言葉を聞いたときには相手の恨みの度合いは大変深いものだと思った方がいいでしょう。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。