「得てして」の意味と語源とは?使い方や類語・英語も例文解説

「得てして(えてして)」は、文章の前に「ある状態になる傾向がある」という意味で使われる言葉です。一般的な会話だけではなく、ビジネスシーンでも使われる表現ですが、正しい意味や語源を把握していますか?

ここでは「得てして」の意味の他、正しい使い方や類語、英語フレーズなどを例文を用いて解説しています。

「得てして」の意味と語源とは?

「得てして」の意味は”そのようになる傾向がある”

「得てして」の意味は、“そのような状態や状況になる傾向があること”です。副詞の一つで、ある事態になりがちな様子や、とかくそのように傾く可能性が高いことを表し、「そうなりがちであるさま」を意味する言葉となります。

おおむね「得てして」は「とかく・ともすると・ややもすると」という意味で使われます。

「得てして」は”えてして”と読み、語源は可能を意味する「え」

「得てして」は“えてして”と読み、古い言葉で可能を意味する副詞「え」に助詞「て」をつけた「えて」が語源とされています。「え」とは、”得(う)”の連用形が転じた言葉です。現代になってから「えて」の後ろに「為て(して)」が付け加えられ、「えてして(得てして)」と確立された背景があります。

「得てして」の使い方と例文とは?

「得てして」は性格や行動に対しても使われる

「得てして」は”とかくそのような傾向がある”という意味を持つ言葉ですが、人の性格や性質、行動などに対して使われることがあります。

たとえば、せっかちな性格を持つ人に対して「彼は得てしてミスを連発してしまう」と言ったり、時間にルーズな人に対して「彼女は得てして遅刻をしがちである」と表現したりします。

このように「得てして」は人の性格や性質を考えた上で「だからこそ、こういった事態を招いてしまう傾向がある」という意味で使われます。

「得てして」を使った例文

「得てして」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 父は得てして、私の婚約者につっけんどんな態度をとってしまう。
  • 体育祭の日は、得てして雨になることが多い。
  • ナルシストである私は、得てして自分の世界にどっぷりと浸りがちだ。
  • 子どもというものは、遠足の前夜は興奮して、得てして寝られないものだ。
  • 得てしてとは言え、才能ある音楽家は孤独な人生を送ると言われている。

「言い得て妙」とは”実によく言い表している”

「得てして」と同じ「得て」を使った言葉に「言い得て妙(いいえてみょう)」があります。「言い得て」とは、”言い表している・言い当てている”という意味です。そして、「妙」には”不思議・奇妙なこと”のほかに”きわめてよいこと・すぐれていること”という意味があります。

すなわち、「言い得て妙」とは”きわめて的を得た発言”や”実によく言い表している”という意味の言葉です。

「得てして」の類語や言い換えとは?

「得てして」の類語は”往々にして”

「往々にして(おうおうにして)」とは、”そうなる場合がほとんど・大概そうなる”という意味を持つ言葉です。「往々にして」は「得てして」と非常に近いニュアンスを持ちますが、ネガティブな意味を持ち合わせているのが特徴です。

また「往々にして」は”そうなる場合が多い”という意味合いがありますが、対して「得てして」の場合は「ある傾向になる可能性が高い」となります。そのため、ものごとに対して断定的な言い回しをする時は「往々にして」を使うことが多いと言えます。

「往々にして」を使った例文

「往々にして」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 往々にして、週末は残業になってしまう。
  • 頭の回転が早い人は、往々にしてよく喋るものだ。
  • このレストランは、往々にして待ち時間が長い。

「しょっちゅう・しばしば」とも言い換えられる

「しょっちゅう」や「しばしば」は普段の会話でも使われ、「よく」という意味で用いられる使用頻度の高い表現です。

「得てして」は”そのような傾向があり、ある事態になりがちなこと”という可能性の高さを示す言葉ですが、「しょっちゅう・しばしば」は”しきりにそうすること、また頻度が高い様子”を意味します。そのため、「得てして」よりも確定的な状態で使う言葉です。

「しょっちゅう・しばしば」を使った例文

「しょっちゅう・しばしば」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 彼はしょっちゅう海外旅行に出かける。
  • しょっちゅう恥をかいているので、さすがにもう慣れた。
  • ダイエットがうまくいかないことなどしばしばだ。

「得てして」の英語表現とは?

「得てして」は英語で”tend to”や”has a tendency”

「得てして」は英語で“tend to”“has a tendency”を使います。「tend」は”〇〇の傾向がある”、また「tendency」はその名詞形”傾向”を意味します。どちらも、「ものごとや状態がそうなりがちである」という意味で使われる使用頻度の高いフレーズや単語です。

また、ある状態になる傾向が極めて高い場合は「mostly(ほとんど)」や「generally(一般的には)」などを使うのも良いでしょう。「in most cases(ほとんどの場合)」もよく使われますので、併せて覚えておきましょう。

「得てして」を使った英語例文

「得てして」の英語表現を使った例文をご紹介しましょう。

  • 私は、得てして甘いものを食べすぎてしまう。
    I tend to eat a lot of sweets.
  • 得てしてとはいえ、部長に歯向かうのはやめようと思う。
    I know myself having a tendency to back chat to my boss but I should stop now.
  • 私は得てして仕事に集中できるタイプである。
    I can mostly focus on my job at work.

まとめ

「得てして(えてして)」とは、”そのような傾向があること・ある事態になりがちな様子”を意味する言葉です。「得てして」は「往々にして」と似たようなニュアンスがありますが、「往々にして」の方が断定的な意味合いが強くなります。

また「得てして」は副詞であるため、文章の内容を補う効果があります。正しい意味をマスターし、会話に強弱をつけていきましょう。