「耄碌」の意味と語源とは?使い方や類語・対義語も例文解説

「耄碌(もうろく)」は、「祖父はだいぶ耄碌してきた」「耄碌してきたせいで、覚えが悪い」などというように使われます。主に高齢者の記憶がおろそかになったり思考力が減退した時に使われますが、正しい意味や使い方はおさえておきたいものです。

ここでは「耄碌」の意味と語源の他、使い方の例文や類語・対義語、また英語フレーズも紹介します。

「耄碌」の意味と語源とは?

「耄碌(耄碌する)」の意味は”老いぼれること”

「耄碌」の意味は、“年を取って老いぼれること”です。年齢を重ねて老いること、高齢になることを意味します。また「耄碌」は”年を取って身心が老化することで、記憶力や思考能力が減退すること”も意味します。

たとえば、年を取ったことで物忘れがひどくなったり、過去の記憶がひどく衰えたりする時に「耄碌」という表現を使うことがあります。その他、高齢になったことで、運動機能が低下し、転びやすくなったり、耳が聞こえにくくなった時などにも使う言葉です。

「耄碌」の語源は”老いて毛のようにやせ細る”

「耄碌」の語源は「耄碌」の「耄」と「碌」それぞれが持つ意味にあります。

「耄」は「老」の下に「毛」がつく漢字ですが、これは”老いて毛のようにやせ細る”ことを示しています。「耄」は江戸時代にはすでに使われていた漢字で、主に80歳以上の高齢者を指す言葉として浸透していたと言われています。

また「碌」には”役に立たない”という意味が込められています。つまり、年をとり老いて役に立たないというのが基本的な意味です。これが「耄碌」の語源となります。

「耄碌」の使い方と例文とは?

「耄碌」は年配者が謙遜の意図で使うことがある

「耄碌」は”老いぼれること”や”高齢になった結果、記憶や身体の衰えが進むこと”を意味します。基本的にはネガティブな表現ですが、年配者が謙遜や自虐的なニュアンスで使うことがあります。

たとえば、「私も耄碌したので、社長の座を息子に譲ろうかと考えている」という会話からは、「自分自身はまだまだ社長としてやっていける」という気持ちがありながら、相手に謙遜の意図を持って、息子に社長の座をバトンタッチする意思を伝えています。

また「新人から気を遣ってもらうなんて、私も耄碌したもんだ」という文章からは、自分はまだまだ若いと思っていたが、若手に年寄り扱いされるなんて情けない」という気持ちが感じ取れます。加えて、自虐的なニュアンスを含みながら、少しながらのユーモアさえも感じられるでしょう。

「耄碌」を使った例文

耄碌」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • この頃、祖父は耄碌したせいか、物忘れがひどくなった。
  • 私も年でね。耄碌して視力が一気に落ちてしまったよ。
  • 気持ちは若いが、耄碌したと言われても仕方がない。
  • 耄碌していない証拠に、記憶力だけは自信がある。
  • まだまだエンジニアとして働けますよ。耄碌したとはいえどもね。

「耄碌」の類語・類義語とは?

「耄碌」の類語①焼きが回る

「焼きが回る」とは熟語表現の一つで”年を取り覚えが悪くなる”ことを意味します。年を取ると、若いころのように記憶が冴えたり、仕事が早く腕前が良いということが減ってきます。そのような場合に「焼きが回る」という表現を使って「年を取った結果、頭の働きや仕事のスピードや技術が衰える」ということを表現します。

例文
  • 最近、仕事の腕が落ちた。そろそろ焼きが回ったか。
  • 焼きが回ってきたのか、記憶力が格段に落ちてきた。

「耄碌」の類語②老境に入る

「老境に入る」とは”老年期に入る・高齢期に入る”という意味です。老人の境地、つまり老人として仲間入りをするという意味で使われます。年老いた身の上を示す際に使われる言葉ですが、年をとったことで身体の衰えや記憶力、思考力の衰えを直接的に示す言葉ではありません。

例文
  • 老境に入っても仕事を続けるつもりだ。
  • 父もいよいよ老境に入り、昔を懐かしむことが増えてきたようだ。

「耄碌」の対義語とは?

「耄碌」の対義語①矍鑠とする

「矍鑠とする(かくしゃくとする)」とは、年をとっても心身ともに丈夫で、元気盛んなことを意味します。まさに、背筋が伸びて発声が良く、自信に満ち溢れたような姿を「矍鑠とする」といいます。

たとえば、真冬の早朝から寒風摩擦をしたり、ダンスや歌のサークルなどで意気盛んに励むような高齢の人に対して使うことができます。

例文
  • おとなりのお爺ちゃんは本当に矍鑠としていますね。
  • 矍鑠と毎日を過ごす祖母の姿を見ると、私も嬉しい。

「耄碌」の対義語②壮健である

「壮健である」とは”高齢になっても健康で元気な様子”を表す言葉です。身体に一向に衰えがなく、老いを感じないような元気な人に対して使われます。「壮健である」を直接的に相手に使う時は、「ご壮健である・ご壮健ですね」というように、尊敬の意を込めて使うようにしましょう。

例文
  • 週末はお友達とウオーキングですか?ご壮健ですね。
  • ご壮健な様子を拝見し、心から嬉しく思います。

「耄碌」の英語表現とは?

「耄碌」は英語で”senile”

「耄碌」は英語で“senile(シーナイル)”といいます。「senile」は年を取り身体機能が衰えたり、覚えが悪くなったりすることを指す言葉で、老齢の結果として起こる身心の衰えや減退を意味します。

「耄碌」の英語表現を使った例文

耄碌」の英語表現を使った例文をご紹介しましょう。

  • 私の父も、だいぶ耄碌してきたようだ。
    It seems that my father is getting really senile.
  • 耄碌したなんて言わないよね?気持ちだけはまだまだ若いんだから!
    You don’t say I am getting senile, don’t you? I still fell like I am young age.

まとめ

「耄碌(もうろく)」とは”老いぼれること・年を取ることで記憶や思考など、身体の機能がひどく衰えること”を意味します。

高齢になると、視力や聴力が衰えたり、体力が減退して、若い頃のように敏速に動くことが難しくなることがあります。しかし、現代では高齢者とは信じがたいような身体能力や、思考力を維持している方もいます。

そのような背景からも、本人は「耄碌したよ」とは言っても、相手に謙遜の意図を込めて、また時には自虐的なニュアンスで「耄碌」を使う場合もあることを、ぜひ理解しておきましょう。