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なぜ「敵に塩を送る」?意味と語源からひも解く正しい使い方【例文つき】

「敵に塩を送る」は経験豊富な社会人やキャリアを重ねた人なら一度は実行したことがある「ビジネス戦略」の一つでしょう。ところで、本来の言葉の意味や語源を知っていますか?

ここでは「敵に塩を送る」の本当の意味と語源、類語と例文、英語表現をあわせて紹介しています。

「敵に塩を送る」の意味と語源とは?

まず始めに「敵に塩を送る」の本当の意味と語源をみてみましょう。

意味は「敵でも苦境の時は助ける」

「敵に塩を送る」の意味は「敵でも苦境の時は助ける」です。「敵だからといって、弱みに付け込まない」ということを指したことざわです。たとえば、点を競い合っているにあるライバルや競合会社など、ビジネスシーンでも対象となる相手はいくつか挙げられるでしょう。相手が弱っているときでも見捨てることなく、別の方法で相手に利を与えることが「敵に塩を送る」です。

語源は上杉謙信と武田信玄の故事

「敵に塩を送る」は故事から上杉謙信が敵である武田信玄を「塩」で救ったという逸話が載っていますが、この話が事実かどうかは定かではありません。上杉謙信は「義の人」と呼ばれ、義理人情の厚い人物だと語られていることから「美談」として残る逸話との見方もあります。

なぜ上杉謙信は「敵に塩を送った」のか

戦国時代のついての資料によれば、越後の上杉謙信が甲斐の武田信玄に塩を送ったという背景に、「塩留め」という禁止令があるようです。「塩留め」は甲斐、駿河、相模で結ばれた三国同盟が崩壊した後、武田信玄の領地である甲斐へ塩を売ることを禁じたものです。

この時、上杉謙信とは長年にわたり敵対関係にありましたが、海に面していない甲斐の人々は塩不足で困っていたと考えられます。謙信は、甲斐に生きる人々のことを想って、塩を送ったのかもしれません。

このように知られている”美談”ではありますが、上杉謙信が「本当に塩を送ったのか?」という点に関しては正式な文書が残っていません。

しかし、武田信玄からの塩を送ってもらったことへの御礼の品である「塩留めの太刀」が重要文化財となっていることもあり、真実は明らかになっていません。

「敵に塩を送る」の使い方と5つの例文

それでは「敵に塩を送る」の正しい使い方と例文を5つ挙げてみましょう。

「敵に塩を送る」の使い方の注意点

「敵に塩を送る」を文章で使う時は、同じ「塩」を用いることわざ「傷口に塩を塗る」の意味と混同しないように気を付けましょう。

「傷口に塩を塗る」はものごとや状況が思わしくない時に、さらに悪化させようとすることを指します。そのため「非協力的だった下請け会社が経営難に陥っているが、敵に塩を送るような行為はやめておこう」は間違った使い方です。

ビジネスでも使える5つの例文

ビジネスでも使える5つの例文をご紹介しましょう。

  • 彼女とケンカの最中だが、「敵に塩を送る」で大量に抱えた仕事を手伝ってあげよう。
  • 競合会社に「敵に塩を送る」ような気持ちで、パートナーシップの話し合いを進めたい。
  • 「敵に塩を送ること」で、かえって相手を逆なですることがあるかもしれない。
  • 私の上司は「敵に塩を送る」ことで、不可能だと思われていた商談を成立させた。
  • 犬猿のライバルが上司に怒鳴られていた。「敵に塩を送る」ではないが酒でも誘ってみるか。

「敵に塩を送る」の類語は?

続いて「敵に塩を送る」の類語について紹介します。

類語①「相手を利する」の意味と例文

「敵に塩を送る」の類義語で「敵を有利にさせる」という意義のある言葉は「相手を利する」「相手の得になる」「敵に味方する」があります。

  • 「相手を利する」ではないが、納品期限に10日の猶予を与えた。
  • ライバル会社の過激な宣伝活動に拍手を送った。「敵に味方する」つもりか?

ビジネスシーンでは、これらの行為が状況によってやむをえない場合もあるでしょう。

類語②「ハンデを与える」の意味と例文

「敵に塩を送る」の意味で「敵に有利な状況を与える」という意義で考えれば「ハンデを与える」「ハンデを付ける」も類語の仲間となるでしょう。

  • 風邪で1週間休んでいたから、目標件数にハンデを与えてあげよう。
  • ハンデを付けてくれれば、同じ条件で戦うことができる。

たとえ敵であっても「公平な立場であるべき」「対等な状況であるべき」という義理にあふれる考え方と捉えることができます。

「敵に塩を送る」の英語表現は?

最後に「敵に塩を送る」の英語表現を挙げてみます。海外では「敵に塩を送る」と同じような言い回しが存在するのでしょうか?

英語では「Let’s show humanity even to one’s  enemy」

「敵に塩を送る」は戦国時代を語る故事から由来していたり、さらに日本独自の言い回しであることから、海外では「なぜ塩なのか」と理解が難しいようです。

海外では「敵に塩を送る」の意味に準ずる「敵であろうと何であろうと、良い人間性を見せるのが義だ」という考え方があります。そのため「Let’s show humanity even to one’s  enemy=敵でも人間味を見せようじゃないか」という表現が適切となるでしょう。

「敵に塩を送る」の英語例文

「敵に塩を送る」の英語例文をご紹介しましょう。

  • You should show humanity to your enemy even you are in bad position.
    自分の立場が危うくても、敵に塩を送ろうじゃないか。(人間味は忘れずにという意味)
  • I am still showing humanity to one of my clients who has cheated on me a couple of times.
    何度か騙されたクライアントだけど、「塩を敵に送る」で対応しているよ。(人間性をもって対応しているという意味)

まとめ

「敵に塩を送る」は「敵が苦境に立たされている時は、助けてあげること」を意味することわざです。「敵でも弱っているときは救う」という上杉謙信の「義の心」が反映された一句とも言えるでしょう。

また、ビジネスシーンでは相手への憎しみや恨みの感情を捨て「敵に塩を送る」ことは、ビジネスでの戦略の一つとも考えることもできます。良い人間性をアピールしながら敵と対話ができるのは、ビジネスパーソンとしても大きな課題なのかもしれません。