人を見下すという意味の「傲岸不遜」という言葉。このような難しい漢字の四字熟語は敬遠しがちですが、誤って解釈することのないよう、意味をしっかりおさえておきましょう。この記事では、「傲岸不遜」の意味や使い方を例文をまじえて紹介します。あわせて類語や言い換え方、対義語も解説します。
「傲岸不遜」の意味と由来とは?
「傲岸不遜」の意味は”いばりかえって人を見下すこと”
「傲岸不遜(ごうがんふそん)」の意味は、“いばりかえって人を見下すこと・おごりたかぶる”ということです。「傲岸不遜な態度」や「傲岸不遜な人物」など、そのようなさまや人を表現します。
「傲岸」とは”思い上がって人に頭を下げない”という意味
「傲岸不遜」の「傲岸(ごうがん)」とは、自分を偉い人物だと思い上がって、人に頭を下げないさまを意味します。
さらに「傲」の一字だけでも、”おごりたかぶる・人を人とも思わない”という意味を持ちます。「傲」はおごりたかぶり人を見下す態度である「傲慢(ごうまん)」の熟語にも用いられています。また、「岸」は、他とはなれているという意味を持ちます。
「不遜」とは”思い上がってへりくだる気持ちがない”という意味
「傲岸不遜」の「不遜(ふそん)」とは、”思い上がってへりくだる気持ちがないこと”という意味です。「遜」は”へりくだる”という意味であり、それを否定した形が「不遜」です。「不遜」の反対は「謙遜(けんそん)」です。
「傲岸不遜」の由来は”傲岸”と”不遜”
「傲岸不遜」は難しい漢字ですが、故事などの由来は特になく、似た意味を持つ二字熟語である「傲岸」と「不遜」を合わせて意味を強めた四字熟語です。その意味では、「傲岸不遜」の由来は「傲岸」と「不遜」となります。
「傲岸不遜」の使い方と例文とは?
「傲岸不遜」は批判的な文脈で使う表現
「傲岸不遜」は、批判的な意味を込めてネガティブな文脈で使われます。「傲岸不遜」な人の特徴として、周囲への配慮が欠けていたり、嫌悪感を与える言動やふるまいがあるからです。
「傲岸不遜」を使った例文
「傲岸不遜」を使った例文をご紹介しましょう。
- A部長は部下には厳しいが上司にはへつらう傲岸不遜な人物だという評判だ
- 傲岸不遜な態度を続けた結果、誰からも相手にされなくなってしまった
- 独裁者はおしなべて傲岸不遜であるといえる
- 親会社だからといって子会社を傲岸不遜に扱うのは我慢ならない[/box]
「傲岸不遜」の類語や言い換え方とは?
類語の四字熟語は「傲岸無礼・傲慢無礼・傲慢不遜」
「傲岸不遜」の類語の四字熟語には、“傲岸無礼(ごうがんぶれい)・傲慢無礼(ごうまんぶれい)・傲慢不遜(ごうまんふそん)”があります。全て「傲岸不遜」と同じ意味です。
「無礼」と「傲慢」は、いばりかえって人を見下すという意味を持ちます。同じような意味を持つ二字熟語の組み合わせで同じ意味の四字熟語が複数あるというのは、それだけ需要が多いということなのかもしれません。
また、似た意味のメージを持つ熟語「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」も無礼であることの意味では同じですが、類語ではないといえます。「慇懃無礼」とは、過度に丁寧で礼儀正しい態度を取ることはその実、尊大であることを意味する言葉です。
似た意味を持つ四字熟語「傍若無人」
「傲岸不遜」に似た意味を持つ言葉に”傍若無人(ぼうじゃくぶじん)”があります。周囲の人をまるで気にかけず、騒ぐなどして自分勝手にふるまうさまをいいます。
他者を尊重せず、人を人とも思わない無礼な態度であることが「傲岸不遜」の態度との共通点です。しかし、”いばりかえる・おごりたかぶる”という意味は「傍若無人」にはありません。
自分が最上であるとうぬぼれる意味の「唯我独尊」
「唯我独尊(ゆいがどくそん)」とは、”この世で自分ほど偉いものは他にいない”とうぬぼれる態度を意味する言葉です。この態度は「傲岸不遜」の態度と共通します。
しかしこの意味は実は誤用であり、釈迦が誕生した際に「天上天下唯我独尊」と口にしたと伝わる言葉の意味が転じたものです。本来は「天上天下、自分だけがただひとりの存在である」という自尊の意味の教えだったものが、「うぬぼれ」の意味でも使われるようになりました。
「傲岸不遜」は”おごりたかぶる”と言い換えられる
「傲岸不遜」をやさしい表現に言い換える場合には、”おごりたかぶる態度・いばりかえる態度・思い上がり”などに言い換えることができます。
「彼は他者を常に見下す傲岸不遜な人物だ」は”彼は他者を常に見下す思い上がった人物だ”などと言い換えることができます。
「傲岸不遜」の対義語とは?
穏やかで誠実な人柄の「温厚篤実」
「温厚篤実(おんこうとくじつ)」とは、穏やかで誠実な人柄のことをいいます。「温厚」は穏やかで優しいこと、「篤実」は誠実なことを意味します。
いばりかえって人を見下す態度である「傲岸不遜」とは、まさに反対の態度が「温厚篤実」だと言えます。反対の意味の言葉に「誠実」の意味が含まれることは、「傲岸不遜」の本質を表しています。
ひたすら恐縮する「平身低頭」
「温厚篤実」とはまた違った意味で、「傲岸不遜」の対義語に挙げられるのが「平身低頭(へいしんていとう)」です。「平身低頭」とは、身体をかがめ、頭を低くする意から、ひたすら恐縮することという意味です。
「温厚篤実」は、穏やかな態度ということから反対の意味の言葉でしたが、「平身低頭」は恐縮する態度という視点から反対の意味の言葉となります。
まとめ
「傲岸不遜」は使われる頻度の多い言葉ではありませんが、他人を見下すというネガティブな意味を強く持つ熟語であるため、その意味をよく知っておきたい表現です。紹介したように、同じ意味の四字熟語や似た意味の表現がたくさんあるので、まとめておさえておきましょう。