「萌芽」は小説や詩などで好んで使われる言葉です。漢字のニュアンスから何となく意味は想像できても、正しい使い方を把握している人は少ないのではないでしょうか?
ここでは「萌芽」の意味と読み方の他、使い方の例文、類語や英語フレーズについて解説しています。「芽生え」との違いについてもご紹介していますので、参考にしてみてください。
「萌芽」の意味と読み方とは?
「萌芽」の意味は”物事が起こる兆候”
「萌芽」の意味は、“物事が起ころうとする兆候”です。これから何か新しい物事が始まること、また物事が始まる兆候を表し、「ものごとの始まり、兆し」などを示す言葉となります。
「萌芽」の「萌」は”芽生え・萌える”、また「芽」は”草花の芽・ものごとの始まり”という意味があります。そして「萌芽」で、草木の芽が出始めること、萌え出ることを表します。
ちなみに「萌芽」は草木が芽生えるという意味で使われますが、現代の流行り言葉である「萌える(もえる)」と言い回しは、「萌芽」の意味合いに近いニュアンスで使われています。
「萌芽」の読み方は”ほうが”
「萌芽」の読み方は“ほうが”です。「萌芽」は”萌える芽”と表記しますが、「もえが」や「ほうめ」などと、誤読しないように気を付けましょう。
「萌芽」の使い方と例文とは?
「萌芽」は書籍や詩などで使われる
「萌芽」は、日常的な会話で頻繁に見聞きする表現ではないかもしれません。しかし、小説や詩などの書籍の分野においては、好んで使われています。
「萌芽」には”草木の芽が姿を表し始め、萌え出る”という意味があるため、物事が始まることを比喩的に相手に示唆し、なぞらえることができます。そういったことからも、「萌芽」は新しいことがスタートするワクワクとした気持ち乗せて用いる言葉としても、ピッタリな表現でしょう。
「芽生え」は会話や一般的な文章で使われる
「萌芽」と似たような表現に「芽生え」があります。この二つの言葉は、ほぼ同じ意味合いを持ちますが、使い方において若干の違いがあります。
上記でもご説明しましたが、おおむね「萌芽」は文章の中で使われ、「芽生え」は一般的な会話や話し言葉で用いられることが多いです。たとえば以下ニュアンスの違いを挙げてみます。
このように、「萌芽」と「芽生え」では言葉が持つニュアンスや使い方が異なることを理解しておきましょう。
「萌芽」を使った例文
「萌芽」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 難病治療に効果を発揮する、特効薬の萌芽が見られる。
- プログラム開発へのスペシャリストが揃い、今年は会社発展の萌芽が期待される。
- 不況が続く中、仕事を失った人が家を手放すという萌芽が目立ち始めている。
- 仏教の萌芽により、多くの人が病んだ心から救われた過去があった。
- 新社会人になった息子に対し、自立心や独立心の萌芽を感じる、今日この頃である。
- 春来たり、心も踊る、萌芽かな。
「萌芽」の類語とは?
「萌芽」の類語①発芽
「発芽(はつが)」とは、草花が芽を出すことを意味します。植物の種や花粉、枝などから芽が出ることを表し、動詞形では「発芽する」となります。「発芽」も「萌芽」が持つ”新しいことがが始まる兆候”という意味で使われることがありますが、こちらも比喩的で独特な情景を描写する時に好んで文章に用いられます。
- 庭のチューリップが、先週に発芽した。
- スポーツへの興味が発芽し始めたかな?
「萌芽」の類語②芽ぐむ
「芽ぐむ」は草木や花の目が出始めることを意味します。「萌芽」とほぼ同じ意味を持ちますが、接尾語「ぐむ」が付く言葉であるため、やや古語的な語調を持つのが特徴と言えるでしょう。「芽ぐむ」は実際的にも、古い書物や古文で多く使われる表現の一つです。
- 川沿いにも春の兆し。そこかしこに草花が芽ぐむ季節となりました。(手紙での文章)
- 自然たるもの、芽ぐむを止めず。(自然というものは、いつも芽を出すものである)
「萌芽」の英語フレーズとは?
「萌芽」は英語で”come out”や”appear”など
「萌芽」や「兆候が見られる」ということを英語でいう時は“come out”や“appear”です。また「show」や「indicate」などを使います。
厳密に言うと、「芽」は「sprout(スプラウト)」となりますが、「何かしらの兆候が見られる・物事が始まる」という意味で使う時は、「sprout」を使わず「come out」や「appear」などのみで表現します。
「萌芽」の英語表現を使った例文
「萌芽」の英語表現を使った例文をご紹介しましょう。
- 新しい革新の萌芽に注目している。
We all keep an eye on the indication of the new innovation. - 彼は顔色も良く、回復への萌芽が見られる。
He looks great and starts showing some recovery.
まとめ
「萌芽」の読み方は”ほうが”で、「草花が芽生える」の他、「何か新しい物事が始まる兆し」という意味を持ちます。「萌芽」は主に書籍や一般的な文章の中で使われ、会話や口語的な使い方においては「芽生え」という表現を使うことが多いでしょう。
「萌芽」は何かまったり、何かしらの兆候が見られる時に使われますが、文脈によっては良い意味でも悪い意味でも用いられる表現となります。
もちろん、ビジネスシーンでも、分野によっては会議資料や報告書などで使うこともできます。正しく「萌芽」を使って、言葉のマンネリ化を改善していきましょう。
<会話の例>
この頃、彼への恋が芽生えたみたいだわ。(適切)
この頃、彼への恋が萌芽したみたいだわ。(やや独特で詩的な響き)
<小説や詩、俳句の例>
新改革の萌芽に国民が注目している。(適切)
新改革の芽生えに国民が注目している。(適切だがやや口語的)