「自戒」は、おごりたかぶるらないよう自らを自制したり、失敗を反省したりするときに使う言葉です。自らを戒めると書くため、厳しい言葉のように思えますが、どのような意味や使い方があるのでしょうか?
この記事では、「自戒」の意味や使い方・例文を紹介します。あわせて類語や「自戒」の意味を持つ「ことわざ」も解説しています。
「自戒」の意味とは?
「自戒」の意味は”自分で自分を戒めること”
「自戒(じかい)」の意味は、“自分で自分を戒めること”です。「気を緩めないように自戒する」や「おごりたかぶることのないよう自戒する」などと使われます。
「戒める」とは”間違わないように前もって注意する”
「戒める(いましめる)」とは、”間違いをしないように前もって注意する”という意味です。「出過ぎたことをしないよう、慎む」といった意味でも使われます。誰かから自分を戒めるよう指示されるのではなく、自ら進んで自分を戒めるのが「自戒」です。
「自戒」の使い方と例文とは?
使い方1:失敗に対して反省する気持ちを表す
自分が行った何らかの失敗について、反省の気持ちを表すときに「自戒」を使うことがあります。たとえば「二度と同じ過ちを犯さないように自戒する」などの使い方です。
使い方2:失敗をしないように前もって注意する
自分が失敗や過ちを犯したわけではないが、他人の失敗などを教訓として、自分を律する意味で「自戒」を使うことがあります。「あの人のように道に外れたことをしないよう自戒していこう」などの使い方です。
「自戒を込めて」は自分に自戒を言い聞かせる
また、手紙などの文章の最後に「自戒をこめて」あるいは「自戒の念を込めて」と書くことがあります。これらの場合は、自分の失敗を反省する意味や、誤ったことをしないよう、自分に言い聞かせる、といったような意味で、内省的に使われています。
あるいは、他者を批判したあとに、「私も人のことは言えないのですが」といったニュアンスで使われることもあります。
「自粛自戒・自重自戒」は”自戒”を強調する四字熟語
「自粛自戒(じしゅくじかい)」という四字熟語があります。「自粛」とは、”自ら進んで、行いや態度を改め慎むこと”という意味です。同じような意味の言葉を重ねることで、自らを改めよという意味を強調しています。
また、”品位を保つように自分の言動を慎むこと”という意味の「自重(じちょう)」と「自戒」を重ねた「自重自戒」という四字熟語もあります。「自粛自戒」と同じく、似た意味の熟語を並べて意味を強めたものです。
「自戒」の類語とは?
類語1「自粛」:自分の行動を慎むという意味
「自粛(じしゅく)」とは、”自ら進んで行動や態度を慎むこと”という意味です。間違うことがないよう自らを戒める「自戒」とは、自らの行動などを顧みて慎もうとする部分が共通します。
「自粛」は言動を慎む、控えるという抑制の意味が強いのに対して、「自戒」は行いや態度を間違わないよう自らを注意する意味が強いことが両者の違いです。
類語2「自重」:自分の言動に気を付けるという意味
「自重(じちょう)」とは、”自分の言動に気を付けること”という意味です。自分の言動を慎むように戒める心であるため、「自戒」と意味が重なります。
なお、「自戒」は自らすすんで行うものであるため、他人に対して「自戒するように」と促すことはあまりありませんが、「自重をするように」と促すことはあります。他人に対して「自重」を促す場合は、”言動に気を付けるように”という意味で使われます。
「自戒」の意味を持つことわざとは?
「自戒」のことわざ1:人の振り見て我が振り直せ
「人の振り見て我が振り直せ」とは、”他人の言動を見て、良いところは見習い、直すべきところは改めよ”という意味です。どちらかといえば、良いところを見習うことよりも、悪いところを改めよという方に意味の重点が置かれた使い方されます。
そのような意味では、「反面教師(はんめんきょうし)」に近い意味があります。「反面教師」とは、”悪い意味での手本となる人物や存在”を指す言葉です。そのような対象を見たとき、同じようになってはいけないと、反省の材料とするという意味で用いられます。
「人の振り見て我が振り直せ」「反面教師」とも、「自戒」を自らに求めることわざ、慣用句です。
「自戒」のことわざ2:良薬は口に苦し
「良薬は口に苦し(りょうやくはくちににがし)」とは、良い薬は苦くて飲みにくいものだが、効き目も高いという意味が転じて、過ちを指摘してくれる言葉を受け入れるのはつらいものだが、素直に聞くことが本人のためになるということをたとえたことわざとなりました。
目を向けたくないことにあえて目を向け、自分を律する「自戒」とも共通する意味を持つといえます。
「自戒」のことわざ3:他山の石
「他山の石(たざんのいし)」とは、他人の過ちを自分の反省や修養の材料として役立てることをいいます。
古代中国の詩経に「他山の石、以て玉を攻むべし」とあるのが語源で、”よその山から出た粗悪な石でも、それを利用して自分の宝石を磨くことができる”という意味です。「攻む(おさむ)」とは、”磨き加工する”という意味です。
これが転じて、「他人のつまらぬ言動や誤りも、自分を磨く手助けとなる」という意味の格言となりました。「あの人の言葉を他山の石として、気持ちを引き締めたい」などと、誤った言動に対して自分を自戒する意味でも使われます。
なお、他人の良い言動について自分の行いの手本とするという意味で「他山の石」を用いる誤用が多いとの調査もあるため、注意しておきたいところです。
まとめ
「自戒」とは、過ちを犯さないよう、前もって自分を注意するという意味です。「人の振り見て我が振り直せ」のことわざのように、他者の好ましくない言動などを鏡として、自らを改めるという意味でも使われます。
近年は責任のある立場の人々が、倫理・道徳を逸脱するような言動が目立つようにもなっています。それが当たり前の世の中にならないよう、それぞれが自戒してゆきたいところです。
また、「良薬は口に苦し」のように、見たくない事柄の中に自分を高めるヒントが詰まっているという意味でも、進んで「自戒」の態度を持つことは重要です。「自戒」の言葉そのものが、格言であるといえるかもしれません。