「叙述」の意味とは「順序どおりに述べる」です。日常的にはあまり使われない言葉のため、イメージが湧かない人も多いかもしれません。意味や対義語、類語との違いを例文とあわせて確認しましょう。また「叙述トリック」に使われる描写・表現や、叙述用法(叙述的用法とも)についても説明します。
「叙述」とは?
「叙述」の意味は”順序どおりに述べる”
「叙述」の意味は、“物事や意見などを、順序どおりに述べること”です。また、述べたもの(文章など)を示す意味もあります。
「述べる(のべる)」とは、理路整然と意見を伝えることを意味します。「述べる」自体は口頭・文章問わず使用可能です。
「叙述」の読み方は”じょじゅつ”
「叙述」の読み方は“じょじゅつ”です。
「叙述」は文章に使われる
「叙述」は基本的に「文章に書く」ことにしか使用されません。会話で伝える描写に使用すると、相手に違和感を与える可能性があるため避けた方が無難です。
「叙述」の使い方と例文とは?
「叙述」はかしこまった文章を書くときに使う
「叙述」はかしこまった文章を書くときの表現に使います。文章のルールを守る必要がある報告書や論文を書く場面に向いています。
逆に、殴り書きのメモを「叙述する」と描写するのは相応しくありません。順序どおりに整頓していないためです。
「叙述トリック」は文章のしかけで読者をだますトリック
「叙述トリック」は小説(特にミステリー・推理小説)でよく使われる用語です。文章のしかけで、作者が読者をだますトリックを意味します。「登場人物にとっては明らかなことを、読者に誤解させる」のが一般的です。例えばユニセックスな名前にして「性別を誤解させる」描写がよくあります。他にも「20年前の回想シーンを現在の話のように書く」ような、時代を勘違いさせる表現も叙述トリックです。
マンガや映画の読者・視聴者をだますしかけも「叙述トリック」と呼ばれることもあります。例えば「普通に描かれているキャラクターが実は幽霊で、読者・視聴者にしか見えていなかった」ような描写が叙述トリックと呼ばれます。
叙述トリックの例
明日からまた学校だと思うとAは憂うつだった。そんなAに母親は声をかけた。
「夕飯はあんたの好きなハンバーグにしてあげるから、学校がんばりなさい。暗い顔してたら『先生なのに』って笑われるわよ」
(途中まで、Aが子ども・学生だと勘違いさせようとしている)
「叙述用法(叙述的用法)」は英語の文法用語
「叙述用法」は英語の文法用語です。英語では「predicative use」です。「叙述的用法」と訳すこともあります。
文章全体の主な意味を表す言葉が叙述用法です。例えば「I am happy.(私は幸せです)」という文章の場合、「happy」が叙述用法になります。
「叙述式」は文章で解答を書くこと
一部の試験・テストでは、解答を「叙述式」で書くよう求められます。選択肢を選ぶのではなく、自分で考えた文章で解答を書くことを意味します。
文章を答える場合「記述式」を使うのが一般的です。あえて「叙述式」を使う理由は問題作成者によって違うでしょう。「記述式」は単語だけを答える場合にも使用されるのが関係するかもしれません。”単語ではなく、論理的な文章でないと正解とみなさない”という意味で「叙述式」を使っていると推測できます。
「叙述」を使った例文
「叙述」を使った例文をご紹介しましょう。
- 集中して卒業論文を叙述するために、耳栓をすることにした。
- B先生の小説はどれも丁寧に叙述されていて、とても読みやすい。
- 「B先生の新作推理小説は叙述トリックを使っている」とネタバレされてしまい、読む気がなくなってしまった。
「叙述」の類語との違いとは?
類語「記述」との違いは主観的か客観的か
「叙述」の類語は“記述(きじゅつ)”です。ふたつの違いは「主観的か客観的か」になります。
「記述」とは”文章に書き記すこと”という意味です。「叙述」の言い換えに使っても問題ない場面も多い言葉です。使い分ける場合、「記述」は客観的、「叙述」は主観的な文章に使います。
「叙述」の対義語とは?
「叙述」の対義語は”口述”
「叙述」の対義語は明確に定まっていません。意味から考えると“口述(こうじゅつ)”が対義語になるでしょう。「口述」は”口で述べる・話して伝える”という意味になります。そのまま文章として書類にできるぐらい、順序立った内容の書き言葉である場合に用いられることが一般的です。
ちなみに、「口頭」も”口で述べる”という意味です。ただし「口頭」は順序立った書き言葉であることは重要視されず、話し言葉にも使われます。そのため、「供述」の対義語には「口述」の方が向いているでしょう。
「乱文」も対義語と言える
「乱文(らんぶん)」も「叙述」の類語だと言えます。「乱文」とは、乱れて読みにくい文章です。「叙述」と違って動詞にはならないため「乱文を書く」のように使用します。
一般的に「乱文」は、手紙の結びの言葉に用いられます。「乱文乱筆にて失礼いたします」と書いて、自分の文章や字が乱れていると謙遜する表現です。メールやSNSでは「乱筆」を抜いて結びの言葉に使う人もいますが、古風で大げさな謙遜だと否定的な人もいるようです。
まとめ
「叙述」とは、かしこまった文章を書く場面に使う言葉です。日常的には小説の「叙述トリック」の方がよく使われるかもしれません。
論文や報告書を書く際に「叙述する」とすると、ただ「書く」とするより相応しい表現になることもあります。ニュアンスを覚えて活用してみてください。
急いで伝えたかったので、電話で叙述した。