「補完」とは「補って完全なものにする」という意味です。名詞としてだけでなく「補完する」「補完しあう」のように動詞として使うこともあります。詳しい意味や使い方の注意点を、例文をあわせて説明しましょう。他にも「相互補完関係」という熟語や、「補間」との違い、英語を元にした類語「カバー」も紹介します。
「補完」とは?
「補完」の意味とは「補って完全なものにする」
「補完」の意味は、“補って、完全なものにする”ということです。対象を「完成していないもの」や「欠けているもの」と見なしているという意味合いを持ちます。英語では”complete”や”complement”と表現します。
「補完」の読み方は”ほかん”
「補完」の読み方は“ほかん”です。
「相互補完関係」はお互いに補い合う関係を表す熟語
「相互補完関係(そうごほかんかんけい)」とは、お互いに補い合う(補完しあう)関係を表す熟語です。「補完関係」や「相互補完」と、四字熟語にして使うこともあります。相手の足りない点を補い、助け合う関係性を意味します。
「補完」の使い方と例文とは?
「補完」は未完成・不十分なものに対して使う
「補完」を使用する場面は、未完成なもの・不十分なものを補って完成させるときです。補い方や完成のさせ方は、補完する対象によって変化します。
例えば「新人の作った書類を補完しておいて」と上司に頼まれた場合で考えてみましょう。この場合は新人の書類を完成させてほしいと頼まれています。間違いの修正だけではなく、不足分があれば追記し、これ以上は手を加える必要がない状態にする必要があります。
「補完する」が失礼になる場面に注意する
「補完する」を他人の作ったものに使う場合、慎重に判断するべきです。「補完」は、対象が不完全であると見なしている言葉です。そのため「あなたの作った〇〇を補完します」と言うことは「あなたの作った〇〇は不完全だ」と言っていることと同じだと受け取られる可能性があります。
自分の作ったものを上司や先輩に「補完してください」と見せるのも避けた方が無難です。「補完」には”完成させる”という意味もあるためです。そのため、「もう自分はなにもしないので、仕上げてください」と言っていることになってしまいます。「修正箇所がありましたら、教えてください」と言い換えるとよいでしょう。
「補完」を使った例文
「補完」を使った例文をご紹介しましょう。
- 去年の赤字を、新商品の売り上げで補完した。
- 入力内容が不足していても、自動補完するシステムの搭載を計画している。
- プレゼン資料に記載もれを発見したので、口頭で補完することにした。
「補完」と類語「補間」の違いとは?
「補間」とは”中間の値を推測して補う”こと
「補間(ほかん)」の意味とは”中間の値を推測して補うこと”です。中間の値が欠けている場合に、前後の数字から推測・算出します。
例えば「1、4、7、〇、13、16、19」という数字データがあるとしましょう。前後の数字から「1から3ずつ増えている」と推測し「〇=10」と補うことを「補間する」と呼びます。
「補完」と「補間」の違いは”対象が数字かどうか”
「補完」と「補間」の違いは”対象が数字かどうか”です。「補間」は数値データだけに使うのが一般的です。
- 報告書にまとめるために、降水量の欠落データを補間した。(降水量は数値のため補間)
- 雑誌連載中には書ききれなかった物語を、単行本を発売する際に加筆して補完した。(物語は数値ではないため補完)
「補完」のその他の類語とは?
「補完」の類語は”補足”
「補完」の類語は“補足(ほそく)”です。「足りないものを足して、補うこと」を意味します。不十分な内容を足すことで、改善させる際に使用します。
よく使用されるのは、説明の追加です。「補足説明ですが……」「前の方に補足ですが……」のように、説明を補うことを伝えます。また、追加の資料を「補足資料」と呼ぶこともあります。
対象を限定した類語は「補填・補充」
「補填(ほてん)」と「補充(ほじゅう)」も、補完の類語です。どちらも不足しているものを補う意味を持ちますが、対象が限定されています。
補填の主な対象は金銭です。ゲーム内通貨のように、現金以外を対象にすることもあります。ちなみに「ほちん」と読み間違えやすいので注意しましょう。正しい読み方は「ほてん」です。
補充の主な対象は「定量が決まっているもの」です。また、補充には「元の充分な状態へ戻す」というニュアンスもあります。「在庫を補充する」「トイレットペーパーを補充する」のように使います。
英語「カバー」も類語として使用できる
英語の「cover」がカタカナ語になった「カバー」も、補完の類語として使えます。「カバー」はさまざまな使い方をする言葉ですが、類語としての意味は”不備不足を補うこと”です。補完では文章が固すぎるのでカジュアルにしたい、という際の言い換えにも向いています。
彼らは短所を補完しあう最高のコンビだ。
→彼らは短所をカバーしあう最高のコンビだ。
まとめ
「補完」は「補間」と違って対象が限定されないため、さまざまな対象に使用できる言葉です。しかし「不完全なものを」「完成させる」というニュアンスがあるため、使い方を間違えると相手に失礼だと受け取られる可能性があります。特に目上の人とのやり取りに使う場合は、慎重に判断しましょう。