「ニッチ」の意味と分野別の使い方!類語やビジネス用語も解説

「ニッチな市場を狙う」「ニッチ商品を開発」など、「ニッチ」という言葉をビジネスシーンでよく聞きます。他にも「ニッチな趣味」や「ニッチな人」などという使い方もされます。

多彩な意味をもつカタカナ語「ニッチ」について、語源の意味とともにそれぞれの使い方と、「ニッチ市場」についても詳しく解説しますので、参考にしてください。

「ニッチ」(niche)の意味と語源は?

「ニッチ」の語源となった英語には複数の意味があります。カタカナ語の「ニッチ」にもその複数の意味が引き継がれているため、英語の意味から確認しておくと理解しやすいです。

「ニッチ」の意味は「隙間」「壁のくぼみ」

「ニッチ」の意味は、「隙間」「壁のくぼみ」です。もともとは、西洋建築における壁のくぼみを表す言葉でしたが、20世紀の前半に生物学用語として「生態的地位」を意味する概念の「niche」が提唱されました。そのとき「競争者の居ない隙間」という意味が「niche」に加えられたため、その後に転じて経済用語として「隙間市場」を表すようになりました。

「ニッチ」の語源「niche」の意味は複数ある

「ニッチ」の語源は英語の「niche」です。英語の発音も「ニッチ」です。意味は次の通りです。

【建築用語】 彫刻や花瓶などを設置するために設けられた壁のくぼみ
【地学用語】 岩などのくぼみ、裂け目、割れ目
【生物学用語】ある生物の生態系内での地位、生態的地位
【経済用語】 特定の製品やサービスに向けた隙間市場
【一般用語】 人の能力などに応じた適所、得意分野

「ニッチ」のさまざまな用語としての意味は?

英語の複数の意味と同じ意味がカタカナ語「ニッチ」にもあります。それぞれの意味を分野ごとに紹介します。

経済用語としての意味は「隙間」

「ニッチ」は、経済・マーケティング用語として使われることが多く、大資本が手をつけない、市場の「隙間」という意味で用いられます。

例えば、隙間産業のことをニッチ産業といったり、隙間市場をニッチ市場といったりします。「ニッチ市場」についてはのちほど詳しく説明します。

建築用語としての意味は「壁のくぼみ」

建築用語としても「ニッチ」が使われます。建物やインテリアに関して「ニッチ」というときは、「壁の一部をくぼませた部分」「小物などを飾る飾り棚」のことを指します。

生物学用語としての意味は「生態的地位」

生物学用語としても使われています。自然環境の中で、ある生物が生存競争などを経た結果、適応した特有の生息場所のことを「ニッチ」といいます。

「ニッチな〇〇」というときは「一般的ではない事柄」を指す

一般的な意味で「ニッチ」という時は、一般的には知られていない物や、一部の人しか興味を持たないような事柄のことを指します。「ニッチな〇〇」というように、形容詞として使われます。

例えば「ニッチな人」とは「マニアックな人」や「風変わりな人」と同じ意味で使われ、「ニッチな趣味」も同じく「マニアックな趣味」や「風変りな趣味」という意味で使われます。

以前は一部の人しか興味を持たないような事柄はネガティブにとらえられていましたが、多様性が受け入れられてきた近年における「ニッチな〇〇」という表現は、良い意味で個性的であるという、ポジティブな表現として一般的に使われています。

「ニッチ」の類語・対義語

ニッチの類語は「すき間」「風変わりな」

「ニッチ」の類語としては、「ニッチ市場」や「ニッチな領域」のように経済用語として使う場合、「隙間」と言い換えることができます。

一方、「ニッチな人」のように、一般的な事象を形容する形で使う場合には「風変わりな」「奇抜な」「マイナー」などが類語になります。

ニッチの対義語は「マス」「メジャー」

「ニッチ」の経済用語としての対義語は「マス」になります。「ニッチ市場」(隙間市場)に対して、「マス市場」(大衆市場)のように使われます。

また「ニッチ」を「マイナー」と同じ意味で使う場合には、「メジャー」も対義語になります。「メジャーな市場」や「メジャーな人」というように使うことができます。

「ニッチ」を使ったビジネス用語の意味

「ニッチ」は経済用語やマーケティング用語として主に使われ、意味は「隙間」であることを説明しました。その「隙間」とは、「大資本が手をつけない市場の隙間」の意味です。ここでは、「ニッチ」を使ったビジネス用語を解説します。

ニッチ市場の意味は「隙間市場」

「ニッチ市場」は英語で「Niche market」と書き、カタカナ語で「ニッチマーケット」ということもあります。市場の中でも一般的ではない、特定の需要や客層を持つ、規模の小さい市場のことを指します。

また、小さな市場は消費者の数が少ないため収益性が低かったり、潜在的な需要の掘り起こしが必要だったりするため、大資本の企業が参入しないことから、中小企業が生き残り策として狙う大企業が参入しない市場という意味で、「隙間(ニッチ)市場」と表現されることがあります。

次に「ニッチ市場」に関して、よく使われる関連用語について説明します。

ニッチ戦略の意味

大手企業が手をつけていない分野や、需要の掘り起こされていない分野を戦略的にねらって進出することを「ニッチ戦略」といいます。

ニッチャー企業の意味

ニッチ市場をビジネスチャンスとしてとらえ、独自の市場を開拓してオンリーワンを狙うニッチ戦略をとる企業のことを「ニッチャー」といいます。

ニッチ商品/製品の意味

ニッチ戦略によって生み出された商品のことを「ニッチ商品」といいます。オンリーワンを狙って戦略的に開発された商品の他にも、100円ショップなどで売られている、いわゆる「便利グッズ」などもニッチ商品といえます。

グローバル・ニッチの意味

国内市場ではなく、世界市場においてニッチとされる市場のことを「グローバル・ニッチ」といいます。海外企業と競合しても、依然としてニッチ分野であるような事業分野を指します。

グローバル・ニッチ戦略の意味

世界市場のニッチ分野を戦略的にねらって進出することを「グローバル・ニッチ戦略」といいます。例えば地方の中小企業が日本の伝統技術を使って新しい製品を生み出し、海外に新しいマーケットを開拓し、成功した事例などがあります。

グローバル・ニッチトップの意味

グローバル・ニッチにおけるトップ企業のことを「グローバル・ニッチトップ」や「グローバル・ニッチトップ企業」と呼びます。

まとめ

「ニッチ」にはさまざまな意味がありますが、特に経済用語として「隙間市場」を意味する言葉としてよく使われています。昨今は国内のみならず、海外の隙間市場を狙って戦略的に「グローバル・ニッチ」を狙う企業の動きも盛んになっています。

その意味では「ニッチ」には、「隙間というチャンス」の意味合いが含まれてきたともいえるのではないでしょうか。現代日本の「ニッチ」は単なる「隙間」ではなく、中小企業の救世主であるともいえそうです。