「いろは歌」とは「ひらがな全てを1度ずつ使った歌」です。現在はあまり使用せず、年代によっては小学生・中学生の頃に習わないこともあるようです。そのため、歌詞の読み方や漢字表記が分からない人が増えているかもしれません。現代語訳や意味とあわせて解説しましょう。また、覚え方のコツや、怖い説も紹介します。
「いろは歌」とは?
「いろは歌」の意味は”ひらがな全てを1度ずつ使った歌”
「いろは歌」の意味は、“ひらがな全てを、繰り返さず1度ずつ使った歌”のことです。歴史的仮名遣いのため、現在は使われないひらがなが含まれています。また、「ん」は含まれていません(最後に付け足していることもあります)
発見されている最古のものは万葉仮名(まんようがな)で表記されていました。万葉仮名とは、漢字の音だけを借りて、日本語を表現したものです。万葉仮名を元にひらがな、カタカナが作られました。
「いろは歌」の読み方は”いろはうた”
「いろは歌」の読み方は“いろはうた”です。
「いろは歌」の歌詞は現在と読み方違う箇所がある
「いろは歌」の歌詞は歴史的仮名遣いのため、現在と読み方が違う箇所があります(わかりやすくなるよう、違う箇所は太字にしてあります)
歌詞
いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす
読み方
いろわにおえど ちりぬるお
わがよたれぞ つねならん
ういのおくやま きょうこえて
あさきゆめみじ えいもせず
(※すべて清音で読む場合もあります)
「いろは歌」の作者は不明
「いろは歌」の作者は明らかになっていません。空海という説もありましたが、推定される製作年代と合わないため否定されています。国語学的な観点から、空海がすでに亡くなっている平安時代中期頃に製作されたと考えられています。
空海とは平安時代初期の僧侶です。死後におくられた「弘法大師」というおくり名も有名です。
「いろは歌」の漢字表記・現代語訳とは?
「いろは歌」は仏教の教えを意味する説が有力
「いろは歌」は、仏教の教えを述べる詩「諸行無常偈(しょぎょうむじょうげ)」を意訳したものだと考えられています。そのため、大まかな意味は諸行無常偈と同じです。
諸行無常偈の全文は「諸行無常 是生滅法 生滅滅已 寂滅為楽」です。意味は「万物はつねに変化し、生まれては滅びる。それが静まることが悟りである」だとされています。
「いろは歌」の漢字交じりの表記
万葉仮名やひらがなのままでは意味が考えにくいため、「いろは歌」は漢字や濁点を交じえた文章に直されています。元が万葉仮名のため確定はできないのですが、一般的には以下のように表記します。
「いろは歌」の現代語訳
「いろは歌」は漢字や濁音の有無が確定していないことや、比喩表現の解釈が分かれることから、現代語訳が定まっていません。一例として紹介しますが、これ以外にも多くの説があります。
花が咲いても散ってしまうように、
この世に常に変わらない人は誰もいない。
迷いの多い人生という山を今日ものり越えて、
一時の栄華のような儚い夢に酔わずに生きていこう。
当時は花が咲くことを「色が匂う」と表現していました。また「有為(うい)の奥山」の「有為」は仏教用語です。世界で起きる全ての物事や現象を意味します。悟りを得ることの難しさの比喩だと考えられています。
「いろは歌」の使い方とは?
「いろは歌」は文字を覚える際に使われていた
「いろは歌」はかつて、文字を覚えるために使用されていました。文字が重複していないことから、お手本に最適だと考えられたようです。江戸時代頃には使われていたと考えられています。
他にも、現在の五十音順と同じ様に、辞書の配列に用いられていました。箇条書きの記号や、音名にも使用されます。
「いろは」は”物事の初歩・基本”を表現
「いろは歌」の”いろは”は、物事の初歩や基本、最初に習得することを表現する言葉になっています。文字の学習に「いろは歌」を使っていたことが由来だとされています。
古風で時代がかった表現だと感じる人も多いため、相手の年代によっては「初歩・基本」と言い換えた方が無難かもしれません。
この年で将棋のいろはをマスターするなんて、孫は天才児かもしれない。
「いろは歌」の雑学とは?
「いろは歌」は処刑された人の怖い歌という説がある
「いろは歌」には、暗号が隠された怖い歌だという説があります。歌詞を7文字ごとに区切り、最後の文字を読むと「とかなくてしす」になります。漢字を使って表記すると「咎(とが)無くて死す」です。
「咎」は罪という意味もあるため、この文章の意味は「罪がないのに殺される」だと推測できます。冤罪で処刑された無念さが込められているという考えです。偶然だとされていますが、これを理由に「文字の勉強に使う歌にふさわしくない」と言う人もいました。
いろはにほへと
ちりぬるをわか
よたれそつねな
らむうゐのおく
やまけふこえて
あさきゆめみし
ㅤㅤゑひもせす
「いろは歌」の覚え方
「いろは歌」を覚え方のコツは2つあります。ひとつめは「歌詞と意味をあわせて覚える」です。意味や情景から連想することで、歌詞を思い出しやすくなることが期待できます。
7音、5音を繰り返す七五調でリズムが良いため、口に出して唱えることも良いとされています。「意味とあわせて覚える」と両立できる方法のため、同時に試すのも良いかもしれません。
まとめ
「いろは歌」は、かつては文字の勉強や辞書の配列に使われる身近なものでした。しかし、作者不明で、暗号説があるというミステリアスな面もあります。今後の研究で新たな事実が発見されるかもしれません。
色は匂へど散りぬるを
我が世誰ぞ常ならむ
有為の奥山今日越えて
浅き夢見じ酔ひもせず