ビジネス文書やメール文面を作成したときに、「もう少し婉曲に表現するように」と上司から指摘が入り、戸惑うことがあるかもしれません。しかし多くの人が、普段の生活で無意識に婉曲表現を使ってコミュニケーションを取っているのをご存じでしょうか?ここでは、婉曲表現の意味と使い方について、例文を用いて解説します。
婉曲の意味や読み方、目的とは?
「婉曲」の意味は「遠回しに表現すること」
「婉曲」の意味は「遠回しにそれとなく表現するさま」「露骨にならないように言うさま」です。
読み方は「えんきょく」
「婉曲」の読み方は「えんきょく」です。「わんきょく」と読み間違えないように注意しましょう。
婉曲表現は伝える技術
婉曲表現は「婉曲話法」や「婉曲法」とも言われ、言葉のコミュニケーションにおいて無用な衝突を避けるため、私たち日本人が古来より用いてきた表現技術です。
例えば相手に対してお断りをしたい時、「お断りいたします」とストレートに表現するのではなく、「見送らせていただきます」などと遠回しな表現を用いることで相手の自尊心を傷つけたり、不愉快な思いをさせたりしないよう、配慮を行います。
ビジネスの場面においても取引先に好印象を与え、円滑なコミュニケーションを図る上でも必須と言える表現方法なので、具体な例を挙げて解説します。
婉曲表現の使い方と例文とは?
マナーとしての婉曲表現
相手が不快に思う言葉は丁寧で穏やかに言い換え、失礼の無いよう配慮します。一番解りやすい例として「死」を表すときには、他人の死の尊敬語である「逝去」を用いて「ご逝去を悼みます」などと表現します。
また、目上の人に対して何かをお願いしたい時に直接的な表現をすると命令口調の印象を与えてしまうので、例えば「~について連絡してください」ではなく、「~について連絡をお願いします」、「~について連絡をいただけますでしょうか」など相手に依頼する形に置き換えます。
円滑なコミュニケーションのための婉曲表現
直接的な表現を避けるための婉曲表現として、「クッション言葉」があります。言い換えに加えてさらに丁寧さを表現したい時に付け加えて使用し、円滑なコミュニケーションを目指します。具体的には次のような表現です。
「恐れ入りますが」
恐れ入りますが、ご返送をお願いいたします。
「あいにくですが」
あいにくですが、取り揃えがございません。
「ご面倒をお掛けしますが」
ご面倒をお掛けしますが、ご記入をお願いします。
「お手数ですが」
お手数ですが、ご確認をお願いいたします。
ワンクッション置くことで、その次に来る言葉の響きを和らげることができるのです。
ビジネスメールに求められる婉曲表現
ビジネスにおけるコミュニケーションの場面として、電話での会話や直接会っての対話が大切なのはもちろんですが、メールでのやり取りが主であることも多いかと思います。取引先の担当者と一度も会ったことが無いという場合もあるでしょう。
つまり、メールの文面ひとつで印象を左右することになるため、直接の会話以上に表現方法に気を付けることが必要です。ビジネス上のメールのやり取りといっても、相手は人なので、こちらの印象を良くすることで交渉も円滑に進みます。婉曲表現をうまく使用して柔らかい印象を与え、無用なストレスを相手に与えないように気を配ることが大切です。
婉曲表現の対義語とは?
婉曲の対義語は【露骨】
婉曲の対義語は「露骨」です。「感情・意図などを隠さずに表しだすさま」という意味です。円滑なコミュニケーションを図るためには、露骨な表現や露骨な描写には注意が必要です。否定的な内容を表現しなければならない場合には特に、露骨な表現が含まれていないか、言葉の選択に気を付けましょう。
婉曲表現のここに注意!
TPOに応じて使い分ける
日常のコミュニケーションやビジネスシーンにおいて、潤滑油となる婉曲表現ですが、TPO(Time(時間) Place(場所)Occasion(場合)に応じて使い方を調整することも大切です。例えば交渉の場面でイエス・ノーをはっきりさせなければならない時に婉曲な表現をしていては、却って相手に不信感を与えてしまいます。便利なクッション言葉+依頼表現も、上司に対しては「お手数ですが~お願いいたします」が適切でも、同僚に対してであればクッション言葉の「お手数ですが」は過剰かもしれません。
多用しすぎない
丁寧な表現に気を遣い過ぎたため、婉曲表現を多用しすぎて何を言っているのかわからなくなったり、いたずらに冗長な文面になって相手に不快感を与えてしまったりするのは本末転倒ですので気をつけたいものです。メールなどは書いた後に最初から読み返して、きちんと意味が通っているか確認してから送信するとよいでしょう。
英語にも婉曲表現はあるの?
日本語と同じように、英語でも婉曲表現はたくさんあります。英語は直接的な表現が好まれ、遠回しに言うのは良くない、というイメージがありますが、相手に不快感を与えないための婉曲表現は好まれるものです。
特に宗教・人種・性別・障害等について、差別を連想させる言葉については婉曲表現を用いることが文化的なマナーであると認識されているため、英語でビジネスメールを作成する場合には、気になる言葉があれば検索し、問題が無いか確認するように心掛けてください。
まとめ
婉曲な表現とは、物事を直接的に表現せず、遠回しな言い方をすることでした。上手に利用することで、人間関係を良好に保ち、ビジネスを円滑に進めることができます。またTPOに応じた使い分けができるとビジネススキルも格段にアップするので、是非とも正しい婉曲表現をマスターしましょう。