「自我」の意味とは?「自我を持つ」の使い方や「自己」との違いも

「自我」とは主に「自分」を意味します。分野によって意味合いが変わる言葉で、有名なのは心理学用語です。人の精神は「自我」と「エス(イド)」「超自我」の3構造になっていると考えられています。1つ1つの意味を簡単に解説しましょう。他にも「自我が芽生える」などのよく使う表現の意味を説明します。

「自我」の意味とは

「自我」の意味とは「自分」

「自我(じが)」の基本的な意味は「自分」です。ただし「自分」と違って、一人称には使用しません。「自分の意志や心」の意味合いで使われています。

心理学や社会学などでも使われる言葉で、各分野によって意味が異なります。

哲学用語では「他のものから区別される自分」

哲学用語としては「意志・行為などの主体として、他のものから意識して区別される自分」という意味です。「他のもの」には他人や外界が含まれます。哲学者によって詳細は変わるため、確認してから学び始めるとよいでしょう。

社会学用語では「他人を鏡にして知るもの」

社会学用語の「自我」は「他人を鏡にして知る自分」だと考えられています。「鏡」は比喩表現です。他人からの自分の評価や、他人と共存する中で知ることを「他人を鏡にして見る」と例えています。

心理学・精神分析分野の「自我」とは

「自我」は精神構造の内を統制するもの

心理学・精神分析の分野では「自我」は「人の3つの精神構造の1つ」だと考えられています。精神分析学者ジークムント・フロイトは「自我は他の2つの精神構造(エスと超自我)を統制し、現実や社会へ適応させるもの」だと提唱しました。

エスと超自我は対立することが多いため、心の中で折り合いをつけ、どちらかに偏り過ぎないよう統制するのが「自我」の役目です。

「エス(イド)」とは本能的な欲求

「エス」とは本能的な欲求のことです。「イド」とも呼ばれます。無意識のうちに願うことや、「ずっと寝ていたい」などの快楽的・反道徳的な欲求を表します。ちなみに「超イド」という用語を使う理論もありますが、フロイトの説では使われていません。

「超自我」とは良心・道徳心

「超自我」は、エスとは反対に良心・道徳心と言える作用です。規則を守ることや、「仕事に行かなければいけない」と、エスを監視・命令する役割を持っています。

「自我」の使い方とは

「自我が弱い・強い」とは主体性の有無を表す

「自我が弱い」「自我が強い」などの表現は、主体性の有無を表現する際に使います。主体性とは、自分の意志や判断で行動しようとする態度・性格です。

「自我が弱い」は主体性がなくしっかりした自分がない人を意味します。「自我がない」とも言います。ネガティブな意味合いの表現のため、悪口・けなし言葉として使われることが多い表現です。

「自我が強い」はその反対で、主体性がある人のことです。本来はポジティブな表現ですが「わがままな人」の意味でも使用されます。誉め言葉だとわかりやすく伝えたい場合は「主体性がある」「自分をしっかり持っている」などと言い換えるとよいでしょう。

「自我が芽生える」とは自分を認識できるようになること

「自我が芽生える」は乳児・幼児の成長過程でよく使用されています。自分を認識して、自己主張をはじめる様子を表現します。個人差が大きいため、具体的にいつから自我が芽生えるのかは断言できません。

AI(人工知能)などの無機物に使う場合は「人間と同じように心を持つこと」という意味になります。

「自我を持つ」はAI(人工知能)によく使用される

「自我を持つ」はAIに用いられることが多い表現です。「自我が芽生える」と同じく、人間と同じような心を持つことを意味します。

スマートフォンのアシスタントAIなど、会話が成立しているように感じるAIが増えてきています。ただし、それらはプログラミングが巧妙なだけで「自我を持つAI」の実現はまだ難しいようです。

「自我」を使った例文

  • 「Aさんは自我が強くてご立派ね」と言われたが、口調からして嫌味を言われたのだろう。
  • 子どもがイヤイヤ期になり大変だが、自我が芽生えた証拠だと思えば乗り越えられそうだ。
  • プログラマーを目指したのは、自我を持つ優しいロボットのアニメが好きだからだ。

「自我」と類語「自己」の違い

「自我」は主観的「自己」は客観的

「自我」の類語は「自己」です。どちらも「自分」を意味していて、一人称に使わない点も共通しています。違いは「自我は自分を主観的に見たもの」、「自己は自分を客観的に見たもの」という点です。

「自己」を使った例文

  • 面接に備えて自己PRの練習をした。
  • Aさんから時計回りに、順番に自己紹介していってください。

「自我」の英語・カタカナ語表現

「自我」の英語表現は「ego」

「自我」の英語表現は「ego」です。読み方の目安は「イゴ」「イーゴウ」になります。もともと「ego」はラテン語の一人称でした。

カタカナ語「エゴ」はネガティブな印象も

「エゴ」は「ego」を元にしたカタカナ語で、「自我」よりもわがままなニュアンスを表す言葉です。厳密には「自我」と同じ意味を持ちますが、ネガティブな意味合いで使われることが多いでしょう。

エゴは「エゴイズム(利己主義)」「エゴイスト(利己主義の人)」の略語としても用いられています。エゴが本来の意味よりもネガティブな印象が強いのは、略語の影響を受けているのかもしれません。

まとめ

「自我」とは「自分」を意味します。分野によって細かな意味は変わりますが、心や精神の深いところを表現することが多い言葉です。よく使う表現の「自我が強い」とは誉め言葉だけではなく、けなす意味合いとしても用いられます。使用する場合は相手に誤解されないよう注意しましょう。