「おしどり夫婦」とは「仲のよい夫婦」という意味ですが、当のおしどりのつがいは「おしどり夫婦」ではないことをご存知ですか。この記事では、「おしどり夫婦」の意味とその由来の他に、「おしどり夫婦」の特徴や英語表現を解説します。また「おしどり」とはどんな鳥で、おしどりのつがいの行動についても紹介します。
「おしどり夫婦」の意味とは?
「おしどり夫婦」の意味は「仲がよい夫婦」
「おしどり夫婦」とは「いつも一緒にいる仲のよい夫婦」という意味です。夫と妻の気持ちがお互いによく通じ合っていて、わかり合っている上に、はたから見ても仲のよい様子がよくわかるような夫婦のことを指して「おしどり夫婦」と言います。
「おしどり夫婦」を使った例文
- いつも一緒に出かけているあのご夫婦は、まさにおしどり夫婦ですね。
- 課長は奥さんのことをよく話すから、おしどり夫婦に違いない。
- 結婚したらおしどり夫婦と呼ばれるような仲のよい夫婦になりたいな。
「おしどり夫婦」の由来とは?
「おしどり」のオスとメスがいつも一緒にいる習性
「おしどり夫婦」の由来は、おしどりはつがいになるといつも一緒にいるという習性です。おしどりのつがいがいつも仲よく見える様子から、一緒にいる仲のよい夫婦を「おしどり夫婦」と表現するようになりました。
中国の故事「鴛鴦の契り」が由来とも
また「おしどり夫婦」は中国の故事「鴛鴦(えんおう)の契り」が由来になっているとも言われています。
中国の戦国時代、宋の君主、康王(こうおう)には韓憑(かんひょう)という名の家臣がいました。康王は韓憑の美しい妻を奪うと、韓憑は妻を奪われた悲しみから自害しました。それを知ったその妻も後を追って死んでしまいました。
妻は韓憑と一緒に埋めてほしいと遺言を残しますが、康王は妻の意志に反して、2人の墓を離れて作りました。すると、その墓から梓の木が生えてきて、10日ほどすると枝が連なり、その下にはおしどりのつがいが住みつき、一日中悲しげに泣き続けたと言われています。
このエピソードから「鴛鴦の契り」という故事が生まれ、「おしどり夫婦」という言葉も生まれたと言われています。
「おしどり」とは漢字で「鴛鴦」
「おしどり」は「鴛鴦の契り」にあるように、漢字では「鴛鴦」と書き表します。「鴛」がおしどりのオス、「鴦」がおしどりのメスという意味です。
「鴛」と「鴦」のどちらの漢字も常用漢字でもなければ人名漢字でもなく、使用頻度の低い漢字です。
「おしどり」とはどんな鳥なのか?
「おしどり」とはカモ科の羽の美しい鳥
「おしどり」とは全長が約50㎝のカモ科の鳥で、日本全国に分布して、水辺を好み生息しています。
オスの冬毛は緑色やオレンジ色など色鮮やかで美しく、トサカのような毛冠が頭頂部から背中の方に伸びていて、赤いくちばしをしています。オスに比べるとメスは地味な印象で、全体的に茶色から灰色にかけた羽毛をしていて、目の周りが白くなっています。
「おしどり」は漂鳥で渡り鳥ほどには移動はしませんが、暖かい地方へと移動しながら生活しています。
「おしどりは“おしどり夫婦”」実は間違い
「おしどり」は「おしどり夫婦」の由来になったような鳥ですから、つがいは生涯連れ添うほど仲がよいのだと想像してしまいます。しかし、実際の生態を観察するとおしどりは「おしどり夫婦」と呼べるほど仲がよいとは言えないようです。
メスが卵を産むまではおしどりのつがいは仲がよいのですが、メスが卵を産んでしまうとオスは次のメスを探すためにどこかに飛んで行ってしまいます。おしどりのつがいは、生涯を通して連れ添うという意味の「おしどり夫婦」ではないようです。
「おしどり夫婦」の特徴とは?
「おしどり夫婦」の特徴1:会話を楽しんでいる
「おしどり夫婦」は2人の会話を楽しんでいることがよくわかります。その証拠に、「おはよう」や「おやすみ」などのあいさつは欠かさず、常に言葉をかけあって気を配っています。言葉を通して上手にコミュニケーションが取れるので、自然と会話も弾みます。
「おしどり夫婦」の特徴2:普段から笑顔が多い
「おしどり夫婦」は、笑顔でいることが多いという特徴もあります。ケンカをしたり、お互いに気に食わないことがあったりしても、それを長引かせずに切り替えるのが上手です。そのため、多くの時間を笑顔で過せます。
「おしどり夫婦」の特徴3:相手を信頼している
おしどり夫婦が会話を楽しめて笑顔が多い理由は、お互いを信頼しているからです。相手がいてこその自分という意識が自然とできていて、相手を尊重する気持ちも忘れません。お互いを認めて支え合っている関係で窮屈な感覚がなく、むしろ自由でいられます。
「おしどり夫婦」の特徴4:ひとりの時間も大切にする
人はいつでも一緒にいると疲れてしまうことがあります。そんな時はひとりになりたいと思うものですが、おしどり夫婦は相手の「ひとりになりたい」という気持ちを尊重しています。
また、いつでも一緒というわけではなく、パートナーが友人と食事に出かけることも許して、相手を束縛しようとはしません。なぜなら、お互いに干渉しすぎないことがうまくいくコツだとわかっているのです。
こうした関係ができるのはお互いに信頼関係が結ばれているからこそです。お互いがほどよい距離感を保つことで、長く仲のよいカップルでいられます。
「おしどり夫婦」のように円満でいる秘訣とは?
「おしどり夫婦」の秘訣1:相手を尊重する
「おしどり夫婦」がおしどり夫婦でいるためには、お互いが尊重することを忘れないことです。ケンカをしたときに自分が不満に思っていることを正直に伝えることも大切ですが、言い終わった後には謝るべきところは謝り長引かせないようにしましょう。そしてお互いの信頼を回復することに努めます。
「おしどり夫婦」の秘訣2:時には忍耐力も大切
たとえおしどり夫婦のように上手くいっていたとしても、相手のことをどうしても許せなくなるようなことはあります。そういうときには相手に素直な気持ちを伝えてよいのですが、それでも折り合いがつかないときはお互い冷静に向き合えるまで時間をかけましょう。
ただ言いたいことを言うだけでなく、相手のことを考えて対応する忍耐力もおしどり夫婦でいるためには必要でしょう。
「おしどり夫婦」の類語・類義語とは
「円満夫婦」とは「調和のとれた夫婦」のこと
「円満夫婦」とは、パートナー同士の調和が取れて満たされている夫婦のことです。「円満」とは釣り合いが取れていて穏やかな様子という意味で、そうした関係にある夫婦のことを「円満夫婦」または「円満な夫婦」と言い表します。
「おしどり夫婦」のように仲がよい「円満夫婦」ですが、特に2人のバランスがよいため満足しているような夫婦のことを指します。
「おしどり夫婦」の英語表現
「おしどり夫婦」は英語で「a happily married couple」
「おしどり夫婦」の英訳は「a happily married couple」です。直訳すると「幸せに結婚しているカップル」ですので、「おしどり夫婦」という和訳がピッタリです。
「仲のよいカップル」なら英語で「lovebirds」
「仲のよいカップル」という意味なら「lovebirds」という表現もあります。「lovebirds」とは「愛している鳥」という意味ではなくて、「ボタンインコ」という鳥の名前です。カラフルな羽毛が美しく、人にもなつくのでペットとして人気があります。
ペアになると仲睦まじい姿が見られることから、仲のよいカップルという意味で「lovebirds」が使われます。結婚しているのかいないのかは関係ないため、「lovebirds」は「おしどり夫婦」という意味にも「未婚の仲のよいカップル」という意味にもなります。
まとめ
「おしどり夫婦」とは仲のよい夫婦という意味で、おしどりが仲睦まじくしている姿が由来になっただけでなく、「鴛鴦の契り」という中国の故事にも由来しています。おしどりのつがいがおしどり夫婦とは言えないのが残念ですね。
“Because my parents are a happily married couple, I have never thought of their divorce.”
「両親はおしどり夫婦なので、両親が離婚するなんて考えたことがないわ」