「お含みおきください」の意味は?目上の人への使い方や言い換えも

「お含みおきください」は、取引先や目上の方への丁寧な敬語としてよく用いられています。しかし、場合によっては相手に混乱や不快感を与えてしまうこともある言葉です。この記事では「お含みおきください」の意味と使い方のほか、「ご承知おきください」との違いや言い換え可能な類語も紹介しています。

「お含みおきください」の意味とは?

「心に留めておいてほしい」という意味

「お含みおきください」とは「心に留める」という意味の「含みおき」を敬語で表した言葉です。

「含む」には「中に収め入れる」という意味のほか、「理解する」「覚えておく」という意味合いもあります。よくわかるように丁寧に言い聞かせることを指す「噛んで含めるように」という言い回しからも、この意味合いがうかがえるでしょう。

つまり「お含みおきください」は、「胸に収めておいてください」あるいは「事情を理解しておいてください」ということを表しているのです。

「お含みおきください」は事前に知らせるときに使う

「お含みおきください」の「おき」は、「しておく」が由来となっているものです。つまり「お含みおきください」は、「前もってお知らせしておきますので、ご理解のほどよろしくお願いします」ということを表しています。

相手にこちらの事情をあらかじめ知らせ、それに対しての了解や配慮を求めるという意味合いです。

「お含みおきください」には念押しする意味も

「お含みおきください」は相手に対して念押しする言葉であるため、押しつけがましさを感じる人も。また、「胸に収めておくように」というニュアンスがあることから不快感を与えるケースもあり、これらの点は押さえておきたいポイントです。

なお「お含みおきください」のベースとなっている「含みおく」という言葉には、自分の気持ちや考えを心に秘めておくという意味もあります。

「お含みおきください」は命令形でもある

「お含みおきください」を使う際に注意が必要な理由は、ほかにもあります。敬語を作る接頭辞の「お」と、尊敬語である「ください」をともなった「お含みおきください」という言葉は、敬語として正しいものです。

しかし、「ください」は「くれる」の命令形「くれ」の尊敬語で、「くれる」の尊敬語「くださる」の命令形となります。このことからも、敬語として正しいとはいえ「お含みおきください」を目上の方に使う際には注意が必要といえます。

「お含みおきください」の使い方

「お含みおきください」はメールや文書で使う

「お含みおきください」は、主に書き言葉として使われています。ビジネスメールや手紙などで何かを伝えた後、念を押す意味で用いられている事例は、よく見受けられるものです。

しかし、あいまいな文章で「お含みおきください」を使うと、「実は込み入った事情があるのではないか」「これは秘密裏の話ではないか」と、相手に無用な混乱を与えてしまうことがあります。

単に念押しの意味で使うのであれば、相手に疑問や疑惑を抱かせない明快な文面にしておくことが大切です。

口頭での「お含みおきください」には隠微さが

口頭で「お含みおきください」と言った場合、「口止め」や「忖度」の意味合いを感じさせる傾向があり、公正なビジネスにそぐわない印象を与えてしまう恐れがあります。

特にあいまいな発言に続けて「お含みおきください」と言い添えると、さらに誤解を与えることになるかもしれません。特別な意図がないのであれば、会話のなかで「お含みおきください」を使うことは避けたほうが無難です。

取引先には「お含みおきください」の表現を変える

「お含みおきください」は敬語とはいえ命令形であるため、取引先や目上の方に対しては表現を少し変えて使うとよいでしょう。

たとえば、「お含みおきのほどお願いしたく存じます」や「お含みおきいただければ幸いです」というように、謙譲語の「存じます」「いただければ」や、婉曲さを表す「ほど」を用いて言い換えることをおすすめします。

「お含みおきください」を使った例文

  • 当施設のご利用に際しましては、入会時にお渡しした利用規約の内容をお含みおきください。
  • 開催の前日以降にキャンセルされた場合、返金には応じられないことをお含みおきください。
  • 諸事情により、出演者が変更となる可能性がございますことをお含みおきください。

「お含みおきください」と「ご承知おきください」の違い

「ご承知おきください」は正しい敬語表現

「ご承知おきください」とは、理解することという意味の「承知」に敬語をつくる接頭辞「ご」、あらかじめしておくという意味の「おき」、要求を表す敬語の「ください」が加わってできた敬語表現です。

「承知」という言葉は「承知いたしました」というように、へりくだって相手に敬意を示す謙譲表現としてよく用いられています。しかし、「承知」そのものは謙譲語に該当しないため相手に対して使っても誤りではありません。

「ご承知おきください」とは理解を求める言葉

「ご承知おきください」は、「事前に知っておいてください」という意味の敬語として、ビジネスシーンなどでよく用いられるものです。また「承知」には「知る」という意味での「理解」を求めるだけでなく、こちらの事情を知らせて了解を求めるという意味合いもあります。

そのため「ご承知おきください」を相手にお願いするときに使うと、厚かましい印象を持たれてしまうケースもあり、使い方には注意が必要です。

「ご承知おきください」は一方的な印象も

「お含みおきください」と「ご承知おきください」の意味合いは、ほぼ同じです。しかし「承知」という言葉に謙譲語のイメージが強いことと、「お含みおき」が持つ婉曲さから「ご承知おきください」のほうが一方的で不躾な印象を相手に与えることがあります。

ビジネスシーンや目上の方に多用することは控え、ビジネス上使う必要がある場合は「お含みおきください」のほうがより適切な言い回しといえるでしょう。

「お含みおきください」の言い換え表現・類語

「ご了承ください」の意味は「聞き入れてください」

「了承」そのものは、尊敬や謙譲を表すものではありませんが、目上の方からの承諾を得るときによく用いられています。しかし、「ご了承ください」は一方的な印象を相手に与えることがあるため、「ご了承いただけますか」という言い回しのほうがおすすめです。

なお「了承」は「承知」と似ていますが、「ご了承おきください」という表現はありません。

「ご容赦ください」の意味は「大目にみてください」

「ご容赦ください」は、大目にみる・許すという意味の「容赦」に、敬語を作る「ご~ください」が付いた言葉です。相手の要望に添えない場合や、予めお断りしたいことがある場合など、お詫びの気持ちを表すことができます。

したがって、相手に不便を強いるような状況では「お含みおきください」より「ご容赦ください」を使ったほうがよいでしょう。

まとめ

「お含みおきください」の意味と使い方だけでなく、「ご承知おきください」との違いや言い換え可能な類語も紹介しました。

「お含みおきください」は丁寧な言葉で、メールの文末に定型的に置かれることも多いようです。しかし、語句のベースとなる「含みおく」が持つ「胸に収める」という意味合いが、ときに誤解を招くこともあります。文書の内容にあいまいな点がないよう、注意が必要でしょう。