「かたじけない」の意味と語源とは?使い方・返事や類語も紹介

「かたじけない」は時代劇でよく見受けられる言い回しですが、複数の意味があるため返事もそれぞれ使い分ける必要があります。この記事は「かたじけない」の意味と語源のほか、使い分けや返事のしかた、類語などについて紹介します。

「かたじけない」の意味と語源とは?

「かたじけない」は古語の口語形

「かたじけない」は古語の文語「かたじけなし」の口語形で、平安時代の『竹取物語』や『宇津保(うつほ)物語』などにもみられるほど古くからある言葉です。

しかし現代のビジネスや日常生活で使われることは少なくなっており、むしろ映画やテレビドラマの時代劇で武士が、「かたじけないでござる」と口にしているのを聞く機会のほうが多いようです。

「かたじけない」の意味は「恐れ多い」ということ

「かたじけない」の語源には「難し気無し」「勝たじ気甚し」「貌醜なし」など、複数の説があります。

「かたじけない」の本来の意味は「恐れ多い」ということで、「相手の身分や言動などに比べて恥ずかしいほど引けを取っている」と感じ、「分不相応で恐れ多い」とへりくだって使われる言葉です。

『竹取物語』では、姫への求婚のため自宅を訪れた貴公子たちに向かって翁が、「かたじけなく、きたなげなる所に」とへりくだる場面が描かれています。

「かたじけない」は心からの感謝を表す言葉

「かたじけない」の「恐れ多い」という意味は、自分が置かれた状況が身に過ぎて引け目を感じることから「有り難い」「勿体無い」という、感謝の意味でも使われるように展開していきました。短い言葉ですが、本当にありがたくて申し訳ないほどだという気持ちを込めて使われます。

『源氏物語・桐壺』では、桐壺帝のお気持ちに対し、「かたじけなき御心ばへのたぐひなきを頼みにて」と桐壺が語る場面が描かれています。

「かたじけない」はお詫びの言葉

「かたじけない」は、お詫びの言葉としても使われていました。「恐れ多い」「もったいない」など身に余る思いから、「これほどのことをしていただいて申し訳ない」というお詫びの意味合いを表すようになったのです。

現在でも「ありがとうございます」の意味で「すみません」が使われていますが、お詫びの意味の「かたじけない」も同じ用法といえるものです。

「かたじけない」には「面目ない」という意味も

「かたじけない」には、「面目(めんぼく)ない」「恥ずかしい」という意味もあります。「面目」とは「体裁」「世間体」のことで、否定を表す「ない」をともなって「恥ずかしくて合わせる顔がない」ことを表したものです。

『源氏物語・明石』には、須磨に蟄居してからの面目ない心情を描いた、「かたじけなく屈しにける心の程思ひ知らる」の一文がみられます。

「かたじけない」を漢字で書くと「忝い」「辱い」となりますが、使われている両方の文字の意味は「ありがたい」「名誉を傷つける」です。

しかし「かたじけない」は主に「恐れ多い」「もったいない」という意味合いで用いられており、「恥ずかしい」ことを指す用法はあまりみられません。

「かたじけない」の使い方と例文

ビジネスで使うなら「かたじけなく存じます」

「かたじけない」は古い言葉であるだけでなく、意味合いが複数あることからビジネスで使われるケースは多くありません。

「かたじけない」そのものはへりくだった言葉ですが、目上の方に対しては「かたじけなく存じます」や「かたじけないことでございます(かたじけのうございます)」という表現で用います。

また、「かたじけなくもご配慮をいただき~」というように、前置きとしてつかうことで謙遜の意味合いを加えることができます。

「かたじけない」を使った例文

  • 〇〇様には常々ご厚意を賜り、誠にかたじけなく存じます。
  • 皆様からご支援をいただきながら結果を出せず、かたじけのうございます。
  • 私のために盛大な送別会を開いていただき、本当にかたじけない限りです。

「かたじけない」への返事は?

恐縮や謝罪に対しては思いやりの言葉を返したい

恐縮や謝罪の意味で相手が「かたじけない」を使っている場合には、引け目を感じ身が縮むほどの思いを持っています。その気持ちをくみ、「そんなに気にしなくても大丈夫です」という思いやりを込めた言葉を返したいものです。

具体的な返事としては、「どうぞお気になさらないでください」「滅相もないことです」などがあげられます。

感謝に対しては否定しない受け答えを

お礼の言葉に対する返事としては、「どういたしまして」や「礼にはおよびません」などが考えられますが、いずれも相手の謝意を否定する意味合いがあります。

感謝の意味で「かたじけない」と言われた場合は、相手の気持ちを受け入れる受け答えがおすすめです。具体的には「恐れ入ります」のほか、「お力になれて幸いです」や「お役に立てて何よりです」などがよいでしょう。

軽い意味合いの「かたじけない」には「お互いさま」など

本来は硬い言葉である「かたじけない」ですが、仲間内の会話では冗談めかして使うこともあります。

そのような場合には、こちらも軽く「お互いさま」や「気にしないで」と答えたり、冗談めかして「苦しゅうない」と返したりしても問題ありません。

「かたじけない」の類語

「恩に着る」は感謝の言葉

「恩に着る」は、受けた恩をありがたく思う気持ちを表す言葉です。「着る」は、「受ける」のほかに「身に負う」という意味があり、受けた恩を忘れないという強い謝意を含んでいます。

なお、「恩に切る」や「恩に着ります」という言い回しが時おりみられますが、これは誤りです。また「恩に着る」は、「恩に着せる」や「恩着せがましい」とは異なり、ネガティブなニュアンスはありません。

「汗顔の至り」は「恥ずかしい限りだ」という意味

「汗顔の至り(かんがんのいたり)」は、恥ずかしさのあまり顔に汗をかいてしまうことを指した言葉ですが、日常会話ではなく改まった場面で用いられます。

「汗顔」は顔に汗をかくほど恥ずかしいことで、「至り」はものごとが極まることをいうものです。公的な場面や目上の人に対しての謝罪によく使われますが、褒められたときに謙遜して使うこともできます。

「申し訳ない」は謝罪の言葉

「申し訳ない」は、弁解や言い訳の余地がないほどの相手に対するすまない気持ちを表す謝罪の言葉です。

ビジネスシーンでは「申し訳ありません」「申し訳ございません」という言い回しでしばしば聞かれますが、これは誤った用法で「申し訳なく存じます」「申し訳ないことでございます」が正解です。

このような誤用は「とんでもない」や「滅相もない」にもみられるものですが、徐々に許容されるようになっています。

「おほけなし」は「恐れ多い」という意味

「おほけなし」は「恐れ多い」という意味を持つ古語ですが、現在見聞きすることはほとんどありません。『椿説弓張月』には、「おほけなくも琉球国の世子と仰がれ」という記述がみられますが、これは「恐れ多くも琉球国のお世継ぎとして尊敬され」という意味です。

なお、「おほけなし」には「身の程知らず」「分不相応」という意味もあり、「かたじけない」よりややネガティブなニュアンスがあります。

まとめ

「かたじけない」の意味と語源のほか、意味ごとの返事や類語についても紹介しました。「かたじけない」は、現代ではあまり使われなくなった言葉です。ビジネスシーンでは別の言葉に言い換えた