「ご愛顧」の意味と使い方とは?挨拶文での表現や言い換え・例文も

「ご愛顧」という言葉は、ビジネス文書でよく見受けられます。挨拶文として定型的に使われていますが、他の使い方や言い換え可能な言葉も知っておきたいものです。この記事では「ご愛顧」の意味と使い方をはじめ、挨拶文で使える類語や例文も紹介しているので、ビジネスにおいても役に立つ内容となっています。

「ご愛顧」の意味とは?

読み方は「ごあいこ」意味は「目をかけて引き立てること」

「ご愛顧」は「ごあいこ」と読み、「愛顧」に敬語をつくる接頭辞の「ご」を付けた言葉です。「愛顧」とは「好む」「かわいがる」という意味の「愛」と、「目を掛ける」「かわいがる」という意味の「顧」が結びついてできた熟語。客が商人や芸人に対して目を掛けて引き立てることを指します

「ご愛顧」は「お金を払ってくれる相手」に使う

「ご愛顧」は、顧客や取引先などサービスや商品を購入してくれる相手に使います。どれだけお世話になっていても、単に面倒をみてくれた相手や自分がお金を払っている相手に対しては、「ご愛顧」を使うことはありません。

たとえば会社の上司や先輩のほか、学校や習い事の先生・師匠に「いつもご愛顧いただきまして~」のようにいうことは誤りです。

「ご愛顧」とは目を掛けられた側からの言葉

「愛顧」の敬語である「ご愛顧」ですが、「愛顧」が目を掛ける側の行為を指すことに対し「ご愛顧」は目を掛けられた側からの言葉です。したがって、自分が相手に目を掛けることを指して使うものではなく、「ご愛顧します」のような表現はできません。

もともと「ご愛顧」は役者や芸人などが、自分を贔屓にしてくれるお客様に対して使う言葉でしたが、現在ではビジネスにおける顧客や取引先などに対しても使うようになっています。

「ご愛顧」の使い方と例文

「ご愛顧」は顧客への挨拶文の定番

「ご愛顧」は、顧客や取引先などへの挨拶文で定番として用いられている言葉です。いつも利用してくださるお得意様に対して、「日頃から目を掛けていただき、ありがとうございます」「これからもどうぞよろしくお願いいたします」という意味で、メールや手紙などの文頭や文末に置かれている事例がよく見受けられます。

また、日常の取引だけでなく、特別なイベント・セールのお知らせや閉店の挨拶、販売終了商品の案内など、幅広いシーンでも使うことができる言葉です。なお文頭と文末の両方に「ご愛顧」を使うのではなく、いずれか一方にします。

「ご愛顧賜り」は挨拶の定番

「ご愛顧賜り」や「ご愛顧いただきありがとうございます」は、口頭や文書での挨拶で定番としてしばしば用いられているものです。

冒頭の挨拶としては「平素は格別のご愛顧をいただき、心より感謝申し上げます。」、結びの挨拶では「今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。」というように、冒頭の挨拶・結びの挨拶の両方で使用されています。

「ご愛顧」を使ったメール本文の例文

  • これもひとえに皆様のひとかたならぬご愛顧の賜物と、感謝申し上げます。
  • 今回はお客様のご愛顧への感謝を込め、特別なご案内を差し上げました。

「ご愛顧」と「ご愛好」の違いとは?

「ご愛好」は趣味や嗜好品などに熱中していること

「ご愛顧」とよく似ている言葉として、「ご愛好(ごあいこう)」があります。もとになっている「愛好」には、あるものごとを愛し好むことという意味があり、趣味や嗜好品などに熱中していることを指しています。

「愛好」そのものは「愛顧」とは違い、「私は最近、ジャズを愛好しております」というように自分のことに対して使うことができます。しかし「ご」を付けた「ご愛好」は行為の主体に敬意を表すものであるため、自分のことに対して使うことはできません。

「ご愛好」はプライベートなことに使う

「ご愛好」をビジネスの業務において使うことは、まずありません。ビジネスの場であっても、「引退された会長は、カメラをご愛好なさっているそうだ」「社長の奥様は蘭の栽培をご愛好されていると聞きました」というように、プライベートなことに対して使うことが多い言葉です。

「ご愛顧」と「ご愛用」の違いとは?

「ご愛用」は好んで使い続けること

「ご愛顧」と似ているもう一つの言葉として、「ご愛用」があります。「愛用」はある品物を気に入って使い続けることを指す言葉で、長らく使い続けている高価な万年筆から毎日使っているボディーソープなど、特別なものだけでなく日用品に対しても使われるものです。

「愛用」も「この手帳は私の愛用品です」というように自分のことに対して使うことができますが、「ご」を付けた「ご愛用」は行為の主体への敬意を表すため、自分に対して使うと誤りとなります。

「ご愛用」はビジネスの業務でも使える

「ご愛用」は、ビジネスの業務においても使用できる言葉です。たとえば、自社製品を購入している顧客に対して送るセールスレターであれば、「平素は弊社の製品をご愛用いただき、まことにありがとうござます」と冒頭の挨拶として記述できます。

また、販売を終了する商品について、「長らくご愛用いただきました〇〇ですが、本年末をもちまして販売を終了させていただきます」とメールで案内することもできます。

「ご愛顧」の挨拶文での類語・言い換え

「ご贔屓」とは気に入った人などに目を掛けること

「ご贔屓(ごひいき)」とは、気に入った人や店などに目を掛けてかわいがることを指す「贔屓」がもとになっている言葉です。「ご贔屓」は「ご愛顧」とほぼ同じ意味合いを持っているため、言い換えとして使うことも可能です。

「味方する」「力添えする」という意味を持つ「贔」と、力強い様を指す「屓」が合わさった熟語の「贔屓」は、気に入った特定の個人や組織に特別な援助を与えることを意味しています。

なお、「贔屓」に敬語をつくる接頭辞「ご」が付いた「ご贔屓」は、行為の対象者への敬意を表す敬語であるため、自分が贔屓にしていることを指して使うことはできません。

「ご贔屓」を使った例文
  • 毎度ご贔屓を賜り、まことにありがとうございます。

「ご高配」は相手の配慮を敬う言葉

「ご高配(ごこうはい)」とは、相手からの配慮を敬っていう言葉の「高配」に、敬語をつくる接頭辞の「ご」が付いたものです。「賜り(たまわり)~」などの謙譲語をともなうことが一般的で、相手からの配慮に対する感謝を表したいときに使いやすい言葉です。

「ご高配」はメールや手紙などの挨拶文として定型的に用いられるものですが、ビジネスでの関係だけでなく、私的なお付き合いがある目上の方に対しても使うことができる言葉です。

「ご高配」を使った例文
  • 平素より格別のご高配を賜り、心より御礼申し上げます。
  • 今後ともご高配を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

「ご厚情」は相手の深い思いやりを敬う言葉

「ご厚情(ごこうじょう)」は、相手からの深い思いやりを敬う語句の「厚情」に、接頭辞「ご」が付いたものです。「厚情」も言葉自体に敬意が含まれていますが、一般的に「ご」を付けて用いられています。

「ご厚情」はビジネスでの取引に限らず、私的な面でお世話になった目上の方にも使うことができ、祝賀会や結婚式などの式典での挨拶にもよく用いられるものです。

ご厚情を使った例文
  • 今回の受賞は皆様のご厚情の賜物と、心より感謝申し上げます。
  • 平素より一方ならぬご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。

まとめ

「ご愛顧」の意味と使い方について、挨拶文での類語と例文もまじえながら紹介しました。挨拶文は定型化したものが多いため、陳腐に感じられるかもしれません。しかし、語句の微妙な使い方の違いをおさえたうえでなければ、思わぬ失敗を招くこともあるためご注意ください。