「ご多忙」の意味は?使い方・ビジネス例文と「ご多用」との違い

「ご多忙のところ恐縮ですが」「ご多忙とは存じますが」とは、ビジネスメールでも前置きとしてよく使う表現です。この「ご多忙」について、その意味や使い方を詳しく解説します。加えて、「ご多忙」の類語「ご多用」との使い分けや言い換え表現、英語訳についても紹介しましょう。

「ご多忙」の意味と使い方

「ご多忙」とは「とても忙しい」の丁寧語

「ご多忙」とは「とても忙しい」という意味です。「多忙=とても忙しいこと」を意味する熟語ですが、「ご多忙」はこれに丁寧語の接頭辞「ご」を付けた表現であるため、「とても忙しい」という意味の丁寧語ということになります。

「ご多忙」の読み方は「ごたぼう」

「ご多忙」は「ごたぼう」と読みます。漢字では「御多忙」と書かれることもあります。いずれの表記も誤りではありませんが、一般には「ご多忙」と書かれることが多いでしょう。

「ご多忙のところ」「ご多忙の中」はメールでの頻出ワード

「ご多忙」は「ご多忙のところ」や「ご多忙の中(ごたぼうのなか)」「ご多忙中(ごたぼうちゅう)」といった表現で用いられます。いずれも「とても忙しい最中に」という意味になり、相手を気遣う定型表現としてメールでは頻出のワードです。

「ご多忙」は忙しさに関わらず使う慣用表現

「ご多忙」は意味としては「とても忙しい」ことを指しますが、ビジネスシーンでは相手の忙しさに関わらず、慣用表現として用いられています。相手の忙しさを意識することなく、お決まりのフレーズとして使用されることがほとんどです。

「ご多忙」の例文1:依頼文面での使用例

「ご多忙のところ恐れ入りますが」と前置きする

「ご多忙」は何かを依頼する際に、「ご多忙のところ恐れ入りますが」と前置きとして使用するのが一般的です。単刀直入に「~してください」というと強制的な印象を与えますが、「ご多忙のところ恐れ入りますが…」と前置きしたうえで依頼すると、相手への配慮が伺える柔らかい文章となります。

似た表現では「ご多忙の中恐れ入りますが」や「ご多忙の中恐縮ですが」もあります。

例文

ご多忙のところ恐れ入りますが、今週中にご回答いただけますと幸いです。

「ご多忙とは存じますが」もよく使う

何かを依頼する際の前置きでは「ご多忙とは存じますが」もよく用いられます。この場合の「存じます」とは「思う」の謙譲語で、「非常に忙しいとは思いますが」という意味になります。

例文

ご多忙とは存じますが、○日を締め切りとさせていただきます。よろしくご対応の程お願いたします。

「ご多忙」の例文2:相手を気遣うフレーズ

「ご多忙の中ありがとうございます」と感謝を示す

依頼の際だけでなく、感謝を示す際に「ご多忙の中ありがとうございます」ということがあります。単に「ありがとうございます」としても感謝の気持ちは伝わりますが、「ご多忙の中」とすることで、「忙しい中時間を割いて対応してくれてありがとう」とより丁寧な印象を与えることができるでしょう。

例文

本日はご多忙のところご参加いただきましてありがとうございます。

また、「ご多忙の中ご対応いただき恐縮です」「ご多忙のところご連絡いただき恐れ入ります」などもよく用いられる言い回しです。「ありがとうございます」以外の表現も覚えておくと大変便利です。

「ご多忙の折、どうぞご自愛ください」と締めくくる

「ご多忙の折、どうぞご自愛ください」とは「とても忙しいでしょうから、体を大切にしてください」という意味です。この場合の「折」とは季節や時を意味し、「ご自愛ください」は「体を大切にしてください、自分を大切にしてください」という意味の定型句です。「ご多忙の折」のほか、「ご多忙とは存じますが」などの前置きをすることもあります。

例文

ご多忙とは存じますが、どうぞご自愛ください。

余談ですが、「お身体ご自愛ください」とするのは誤りです。「ご自愛ください」には「体を大切に」という意味が含まれているため、二重表現となります。また、病気療養中など相手の体調が思わしくない場合には避けたい表現です。

「ご多忙かと存じますので」と返信不要を伝える

用件が済みメールのやり取りを終えたい場合や、相手に返信は不要であることを伝えたい場合にも「ご多忙かと存じますので…」というフレーズが便利です。ただし、「返信不要です」としてしまうとやや直接的なので、「ご返信は不要です」あるいは「ご返信には及びません」「ご返信はご無用です」などの言い回しと共に使用するのが良いでしょう。

例文

ご多忙かと存じますので、ご返信は不要でございます。

「ご多忙」の類語「ご多用」とは

「ご多用」も「忙しいこと」を意味する単語

「ご多忙」と似た語感の表現に、「ご多用」が挙げられます。「多用(たよう)」とは「忙しいこと、多く用いること」という意味です。「忙しい」という意味でも特に、「用事が多く忙しい」というニュアンスを持つ点がポイントです。

この「多用」に丁寧語の接頭辞「ご」をつける「ご多用」も、「ご多忙」と同じようなフレーズで敬語表現として用いられます。

ビジネス文書、メールでは「ご多用」を好んで使うことも

「ご多忙」と「ご多用」は似たような使い方ができ、使い分けに細かい決まりはないようです。ただし、「ご多忙」の「忙」は「亡(くなる)」の字を含むことから、縁起が悪いととらえられる事があります。そのため、慶事においては避けることはもちろん、一般的なビジネスシーンでも「ご多用」を好んで用いるケースもあるようです。

「ご多忙」は「お忙しいところ」への言い換えも可能

「ご多忙」のその他の類語、言い換え表現では「お忙しいところ」「お忙しい中」が挙げられます。「ご多忙のところ」「ご多忙の中」と同様に使うことができます。

また、依頼する際の前置きでは「お手数おかけいたしますが」も頻繁に用いられる慣用表現のひとつです。「お手数おかけいたしますが」は「労力や時間を取らせてしまいますが」という意味で、相手に手間を取らせることへの謝罪のニュアンスを含んでいます。「お忙しいところお手数おかけしますが…」の形でも用いられます。

「ご多忙」の英語訳

「ご多忙のところ恐縮ですが」には「bother」を使う

「ご多忙のところ」を英語にする際は「bother(煩わせる)」や「trouble(面倒をかける)」を使った英訳が一般的です。「忙しい」ことを直接意味する単語ではありませんが、「(忙しいのに)邪魔をしてすみません」と英訳することで日本語と似たニュアンスを出すことができます。

例文
  • I’m sorry to bother you, but can I ask you a question.(ご多忙のところ恐縮ですが、ご質問してもよろしいですか)
  • I’m sorry to trouble you, but I would appreciate a reply.(ご多忙の中恐縮ですが、ご連絡お待ちしております)

「interrupt」や「disturb」に言い換えも可能

また、「interrupt(さえぎる、妨害する)」や「disturb(邪魔をする、乱す)」などのワードを使っても「ご多忙のところ恐縮ですが」のニュアンスを出すことができます。

まとめ

「ご多忙」とは「とても忙しい」という意味の「多忙」を丁寧にした表現です。ビジネスシーンではその忙しさに関わらず、依頼をする際の前置きや相手を気遣う際の定型句として慣用的に用いられています。類語「ご多用」と明確な使い分けはないとされる一方で、「亡」の字を含む「多忙」は特に結婚式などの慶事においては避けるのが一般的です。