「ご贔屓」の意味と返し方とは?使い方や類語「ご愛顧」との違いも

「これからもご贔屓に!」と馴染みの店を出るときに言われたことはありませんか。「贔屓」とは「気に入っている人や物を引き立てること」という意味ですが、この「ご贔屓」はどのように生まれた言葉なのでしょうか。

今回は、「ご贔屓」の意味や語源の他に、使い方と「ご愛顧」などの類語や英語表現も解説します。

「ご贔屓」の意味と語源とは?

意味は「気に入った人や物を引き立てること」

「ご贔屓(ひいき)」とは「贔屓」という言葉の尊敬語で、「贔屓」は「気に入った人や物を引き立てること、またはかわいがること」という意味です。「応援すること」という意味もあります。

「ご贔屓」の「ご」は尊敬の意味を表す接頭辞ですので、「ご贔屓」とは「気に入っている相手や物に尊敬の意を表した表現」として使われています。

「贔屓」の漢字の意味

「贔屓」の「贔」という漢字は、「貝」が3つ連なった漢字で、たくさんある財貨(貝)を抱えている状態を表しています。この漢字の成り立ちから「大きな荷物を背負う」という意味に転化して、さらに「気に入ったものを引き立てる」や「見方をする」へと意味が変化していきました。

一方、「屓」という漢字は、「力を出すさま」という意味です。「贔屓」とは、それぞれの漢字の意味から「気に入ったものに力を出す」という意味が生まれ、そこから「気に入った物や人を引き立てること」という現在使われている意味へと転化しました。

「御贔屓」と書き表すこともできる

「ご贔屓」は「御贔屓」とすべて漢字で書き表すこともできます。

ただし、「御贔屓」とすると堅苦しい印象を与えるため、「ご贔屓」というひらがなを混ぜた表記がよく使われています。

「ご贔屓」の語源は中国に伝わる「竜生九子」

「ご贔屓」の「贔屓」という言葉の語源は「ひき」と呼ばれる中国の伝説上に伝わる竜の子どもだと言われていています。

その伝説とは「竜生九子(りゅうせいきゅうし)」と呼ばれる竜にまつわるものです。

竜が9匹の子どもを産んだのですが、どの子どもも竜ではなく別の姿をしていました。そのうちの一匹は亀のような姿をしていて、その名は「ひき」、漢字では「贔屓」と書きました。「贔屓」は重いものを運ぶのが好きでした。

この、たくさんものを運ぶことが好きな「贔屓」の性格から、「贔屓」という言葉は「誰かを助けるために頑張ること」や「自分の好きなものを引き立てる」という意味になったと言われています。

「ご贔屓」の使い方と例文

「ご贔屓」は顧客を見送るときに使われる

「ご贔屓」はお店などで顧客を見送るときによく聞かれます。「今後ともご贔屓のほどよろしくお願いいたします」のように、顧客にこれからも自分の店を利用してもらいたいという気持ちを込めて使われますまた企業でしたら、常連の取引先にこれからもビジネス上のお付き合いを続けてほしいという気持ちを込めて使われることもあるでしょう。

使い方次第で、親しみを込めた気軽な別れのあいさつとしても使えますし、また今後のお付き合いを願う丁寧なあいさつとしても使えます。

例文

【親しい取引先に対して】
・これからもご贔屓に
・これからもどうぞご贔屓に

【かしこまったあいさつとして】
引き続きご贔屓くださいますように心からお願い申し上げます

「ご贔屓」で顧客に感謝を伝える

「ご贔屓」はビジネスシーンで感謝の気持ちを伝えるときにも使われます。顧客の帰り際などによく聞かれる使い方で、自分の会社や店などを利用してくれていることへの感謝と、これからもビジネスの関係を続けていきたいという意味を込めたものです。

例文
  • ご贔屓いただきありがとうございます
  • 平素より格別なご贔屓賜わりして誠に感謝申し上げます

「ご贔屓さん」とは「引き立てる人」という意味

「ご贔屓さん」とは、「自分のことを引き立ててくれる人」という意味です。

「ご贔屓」に「さん」を付けて呼びかけ表現にすることで、相手に対して敬意と親愛の両方を表した表現になっています。

「ご贔屓様」は演劇やビジネスシーンで使われる

ご贔屓様「ご贔屓さん」をより丁寧にした言い方です。演劇界では宝塚歌劇団、そのほかビジネスシーンでも使われることがあります。

「ご贔屓様」の意味は「ご贔屓さん」と同じく、「自分を引き立てている方」や「自分の支援をしてくれている方」です。

「ご贔屓筋」は歌舞伎業界での使い方

歌舞伎の世界では「ご贔屓様」は使わず、「ご贔屓筋」という言い方をします。

「ご贔屓筋」も「ご贔屓様」と同じ意味で、主に気に入った歌舞伎俳優への支援などをしています。

「ご贔屓に」への返し方は「こちらこそよろしくお願いします」

ビジネスシーンで相手から「どうぞご贔屓に」や「ご贔屓ください」のように「ご贔屓」を使ったあいさつをされたら、自分も今後ビジネスを継続させたいと思っているという意味の返事をするとよいでしょう。

たとえば「こちらこそよろしくお願いします」のように返事をすれば、今後も贔屓にしてほしいという意味を伝えられ、相手にとって心地よい返事になるでしょう。

「ご贔屓」の類語(類義語)と言い換え表現

「ご愛顧」とは「目をかけて引き立てること」

「ご愛顧」とは「目をかけて引き立てること」という意味で、引き立ててもらっている側が使う言葉です。

「ご贔屓」よりも「ご愛顧」のほうが優しい印象が与えられるので、ビジネスシーン全般でよく使われています。また、ビジネスメールでもよく使われる言葉です。

例文
今後ともよりいっそうのご愛顧を賜りますようよろしくお願いします。

「お引き立て」とは「引き立てること」

「お引き立て」も「引き立てること」という意味で、引き立ててもらっている側が使います。

「ご贔屓」のように引き立ててもらっている相手に対して感謝の気持ちを伝えるときや、ビジネスメールでも使われています。

例文
日頃よりお引ききたてくださり感謝いたします。

「ご贔屓」を使うときの注意点

「ご贔屓」は自分に対して使わない

「ご贔屓」は贔屓にされている店や演者が、顧客や支援者に対して敬意を込めて使う表現です。

自分が贔屓にしていることを表現したい場合は「あの店は私のご贔屓です」ではなく、「私が贔屓にしている店です」のように「ご」を省いて使います

目上の人への「ご贔屓」は失礼になることも

「ご贔屓」の「ご」は尊敬を表すため、贔屓にしてくれる相手が目上の人である場合は問題なく使えます

ただし、目下から目上の人に対して「贔屓する」ことは失礼にあたります。自分が贔屓する側になる場合は、たとえ「ご贔屓」と丁寧な表現でも目上の人に使うのは控えたほうがよいでしょう。

「ご贔屓」の英語表現

「ご贔屓」は英語で「support」

「ご贔屓」を英語に訳すなら英単語「support」を使います。

「support」は「援助」「支援」という意味のある言葉です。「ご贔屓」は「応援すること」という意味があるだけでなく、「ご贔屓」の「気に入った物や人を引き立てる」という意味と「support」の意味が近いことから、「support」が「ご贔屓」の英語表現として使われます。

「ご贔屓」の英語表現は「royalty」も使える

「royalty」は「忠義」「誠実」という意味の名詞で、「ご贔屓」の意味で使う場合には、顧客が自分の会社や店を大切に使っているという意味合いで使われています。

例えば、「ご贔屓ありがとうございます」という文なら、“We appreciate your support.”や“We appreciate your royalty.”のようになります。

まとめ

「ご贔屓」とは「気に入っている人や物を引き立てること」という意味で、ビジネスシーンでよく使われています。「ご贔屓ください」のように、お店の人が帰られるお客様にあいさつの言葉として使えば、「これからもご利用ください」という意味になり、感謝の気持ちを伝えることができます。