「さぞかし(嘸かし)」の意味や言い換えは?使い方の例文と短文も

「それはさぞかし大変だったことでしょう」と相手に共感したり労わったりすることがありますが、「さぞかし」は使い方やシーンによっては嫌味や皮肉にとられる表現です。

「さぞかし」の詳しい意味とその使い方を例文で解説しましょう。また「さぞかし」の類語・言い換え表現や英語訳など関連用語もあわせてみていきます。

「さぞかし」の意味とは

「さぞかし」の意味は「きっと」

「さぞかし」とは、「きっと~だろう」「どんなにか~だろう」という意味です。「さぞかし」の後に推量の語を伴うのが通例で、自分が体験していない相手の経験等に対して、その心情を想像したり共感を示したりする際に使用します。

「さぞかし」は「さぞ」の強調表現

「さぞかし」は副詞「さぞ」を強めた語です。

「さぞ」は「さぞ~だろう」の言い回しで、自分が経験したことのない事柄を想像したり、共感したりする様を表します。「さぞかし」も意味はほぼ「さぞ」と同じですが、より強い共感の意を示す表現ということができます。

「さぞかし」を漢字で書くと「嘸かし」

「さぞかし」は漢字では「嘸かし」と書きます。「嘸」の字には「はっきりしないさま、さぞ」という意味があります。ただし、「嘸かし」と漢字で書くことはまれで、ひらがなで「さぞかし」と書くのが一般的です。

古文の「さぞ」には複数の意味がある

「さぞかし」という語にはやや古風な印象を持つ人もいるでしょう。実は古語としての「さぞ」も現代の「さぞ」と同様に、自分が経験していない事柄を想像したり、他人の経験に共感を示したりする意味用いられていたようです。加えて、古語の「さぞ」には「そのように」「そうなのだ」という意味もあります。

「さぞかし」の使い方と例文

「さぞかし~だろう」の形で使う

「さぞかし」は相手の心情を想像していう語なので、推量の意味を持つ「だろう」とともに、「さぞかし~だろう」の言い回しで用いられることが多いです。「さぞかし~のことでしょう」としたり、過去の経験に対して想像を巡らせる場合には「さぞかし~だったことだろう」と使ったりします。

「さぞかし」は「相手の経験」を推量して使う

「さぞかし」は自分が経験したことではなく、相手が経験したことを推量して言う場合に使うのがポイントです。

自分が実際には経験していない事柄について、相手の様子や言動などから想像をめぐらせて述べる表現で、「相手が経験したこと=過去から現在のこと」に対して主に使用します。まだ起きていない未来の事柄には使うことはあまりありません。

「さぞかし」の前後を敬語表現にして使う

「さぞかし」を目上の人に対して使う際には、「さぞかし~になられたことでしょう」「さぞかし~であったことでしょう」と後に続く語句を敬語表現にします。

敬語表現の例文

『家族もさぞかし嬉しかったことでしょう』

  • ご家族もさぞかしお喜びになられたことでしょう
  • ご家族もさぞかし喜ばれたことでしょう

「ご家族もさぞかし喜ばれたことと存じます」と、「思います」の謙譲語「存じます」を使った表現も可能です。

「さぞかし」は意思に反し皮肉にとられることも

「さぞかし」は相手の心情に共感を示したり、労わったりする際の表現ですが、皮肉ととられることも少なくありません。

たとえば休み明けに集中力のない部下に「さぞかし休みは楽しかったんだろうね」と使った場合、単に「休みを満喫したんだね」と好意的に評価してるというよりは、「遊びすぎたから仕事に身が入っていないんだ」と叱責しているようなニュアンスにとれるでしょう。

「さぞかし大変だったんだろうね」もまた、相手の苦労に理解を示す表現にも、相手の苦労話にうんざりするニュアンスにもとることができます。

「さぞかし」を使った表現と短文

「さぞかし大変だっただろう」「さぞかし心配したことだろう」

「さぞかし心配したことだろう」とは「きっと(とても)心配したことだろう」という意味です。心配な気持ちを想像した際、あるいは心配する気持ちに共感を示す際に使用します。

相手の不安定な心情に寄り添う表現では「さぞかし大変だっただろう」や「それはさぞかし不安だったでしょう」などの例も挙げられます。

例文
  • 初めての一人暮らしなら、ご両親もさぞかし心配したことだろう
  • 奥さんの介護をしながら仕事を続けるのは、さぞかし大変だっただろう

「さぞかし嬉しいことでしょう」「さぞかし美しいことでしょう」

「さぞかし心配~」「さぞかし大変~」の他にも「さぞかし嬉しい事でしょう」や「さぞかし美しいことでしょう」のような使い方も可能です。

ネガティブな心情だけでなく、「さぞかし喜んだことでしょう」「さぞかし驚いたことでしょう」とポジティブな気持ちに寄り添うこともあります。

例文
  • 初孫が生まれたそうだから、さぞかし嬉しいことでしょう
  • 彼女の娘さんなら、さぞかし美しいことでしょう

「さぞかし~にちがいない」もよく使う表現

「さぞかし~にちがいない(違いない)とは「きっと~のはずだ」というニュアンスで、自分の推測を自分で確認し納得するような意味合いがあります。たとえば、「入社1年で結果を出すとは、さぞかし大変だったに違いない」というと「きっととても大変だったはずだ」というようなニュアンスです。

他にも「さぞかし時間がないに違いない」「さぞかし呆れたに違いない」と、相手の言動から状況を推察していう際に使うことができる言い回しです。

「さぞかし」の類語と言い換え表現

「さぞかし」は「どんなにか」に言い換えられる

「さぞかし~だっただろう(でしょう)」は「どんなにか~だっただろう」に言い換えることができます。「どんなにか~」もまた、他人の経験や心情に共感を示す際の表現です。

「どんなにか大変だったことでしょう」「どんなにか救われることだろう」などと使用します。

「さだめし」「さぞや」も類語として使える

「さぞかし」と同じ意味を持つ語では「さだめし」「さぞや」も挙げられます。「さだめし」や「さぞや」も使い方は同じで、「だろう」など推量の語を伴って使用します。

「おそらく」は「そうなる可能性が高い」ことを指す

推量を示す語では「おそらく~だろう」という言い回しもよく耳にします。「おそらく」は「そうなる可能性が高いと思い、推量すること」という意味です。「おそらく」はこれから起こる未来の事柄に対して、何らかの根拠を持って使用されるため、推量通りになることが多いのが特徴です。

一方「さぞかし」は相手の表情や言動などから推量するため、「さぞかし大変だったことでしょう」と言っても実際に本人が大変だったかどうかは定かではありません。また、「さぞかし」は主に過去~現在の出来事に対して用いる点も「おそらく」との相違点です。使い方は似ていますが、状況によって使い分けが必要です。

「さぞかし」の英語訳

「さぞかし」の英語訳には「must」を使う

「さぞかし~だろう」を英語で言い表す際には「must」を使った表現が可能です。「must」は「~しなければならない」の意味でよく知られますが、「~に違いない」という意味もあります。たとえば「You must be tired.」は「疲れているに違いない」という意味になり、「さぞかしお疲れのことでしょう」との和訳も可能です。

「さぞかし」の英語訳には別の表現も

「I can easily imagine how tired you are.」もまた「疲れていることが容易に想像できる」と推察するニュアンスになります。そのため、「さぞかしお疲れのことでしょう」との和訳を当てることができます。

まとめ

「さぞかし」は自分は体験していない相手の経験に対して共感を示したり、労わったりする際の表現です。「さぞかし~だろう」「さぞかし~のことでしょう」と推量の語を伴う形で用いられ、「きっと~だろう」「どんなにか~でしょう」という意味になります。

「おそらく~だろう」も似た意味の表現ですが、「おそらく」が根拠を基に先の事柄を推量するのに対し、「さぞかし」は相手の言動などから推量するため不確かであること、また主に相手の過去の経験、出来事に使う点で異なります。