「すべからく」はビジネスシーンや論文など、フォーマルな場面で使われる表現です。一般的には「当然なすべきこと」というニュアンスで用いられますが、語源や正しい使い方を把握していますか?
ここでは「すべからく」の意味と語源、「須らく」の読み方、誤用の例や英語表現などを詳しく解説します。
「すべからく」の意味と語源とは?
「すべからく」の意味は「当然」「なすべきこと」
「すべからく」とは、「当然」「なすべきこと」という意味があります。主に当たり前のこととしてやらなければならない事柄、またするべき事項という意味で使われます。
「すべからく」は「おおむね、一般的な考えからすると、しなければならない」というニュアンスが強いですが、あわせて「是非とも」という「推奨の意」を込めて使われることもあります。
「すべからく」の語源は「す」と「べし」
「すべからく」は、動詞「する、行う」という意味の「す」、そして推量助動詞の一つ「べし」から成る「すべし」が、用言の語尾に「く」を付ける「ク語法」によって変化した言葉だとされています。たとえば、他のク語法を用いた言葉には「曰く(いわく)」、「問わく(とわく)」「暫く(しばらく)」などがあります。
また「すべからく」と聞くと、漢文の授業を思い出す人もいるかもしれません。「すべからく」は、もともと漢文を読む際の「訓読表現」の一つ「順」「応」を「すべからく~べし」と読んでいたことが始まりだともいわれています。
「須らく」の読み方は「すべからく」
「須らく」の読み方は「すべからく」です。手紙やビジネスメールなど、一般的な文章ではひらがな表記の「すべからく」が使われることが多いですが、古い小説や古文書などでは漢字表記の「須らく」が使われていることがあります。
「すべからく」の使い方と誤用例・例文
「すべからく」は「べし」と組み合わせて使う
「すべからく」は、文章の最後に「べし」を付けて使うことが多いです。その理由として「すべからく」には「なすべきことである」「そうすべきである」という意味が込められていることが挙げられます。
たとえば「この会話はすべからく録音すべし」「問題はすべからく解決すべし」というように、「是非ともそうする必要がある」というニュアンスで使われます。
「すべからく」はビジネスシーンや報告会で使われる
「すべからく」は漢文の訓読表現でも使われる言い回しでもあるため、一般的な会話では使いにくい表現だと考える人もいるでしょう。しかし、「すべからく」は年配の方が好んで使ったり、ビジネスシーン、また報告会や講演会などフォーマルな場面で多く用いられる言葉です。
たとえば、あらゆるビジネスシーンで「すべからく」を使うことがあります。あえて会話や文章に固いイメージを作り上げることで、フォーマルな印象になります。
「全て」「おしなべて」という意味で使うのは誤用
「すべからく」で多い誤用の例は、「すべからく」を「全て」または「おしなべて」という意味で使うことです。これは「すべからく」を「すべて」という誤ったニュアンスで解釈し、そのまま間違った意味で使ってしまった例だと考えられます。
- 大皿料理だが、一人ですべからく食べつくさなければならない。
- この宝物は、すべからく私のものだ。
- 部下が提出したレポートは、すべからく間違いだらけだ。
このように、「すべからく」を「全て」「まったく」という意味で用いるのは、誤りとなります。あくまで「当然」「すべきこと」という意味で使うようにしましょう。
「すべからく」を使った例文
- 学生ならば、すべからく勉強だけに没頭すべきであろう。
- 風邪を引いたら、すべからく体を温めて養生するべきである。
- すべからく、業務日報はその日のうちに提出するようにして下さい。
- 夢を叶えるためには、すべからく努力を重ねる必要がある。
- 町長には、すべからく彼が立候補するべきだ。
「すべからく」の類語とは?
「無論」は「論じる必要なく」
「無論」とは「論じる必要がないこと」を意味する表現です。「議論する必要性がないこと」をわざわざ議論の題材に挙げ、ディスカッションを繰り広げるニーズが無いことを表すときに使われます。
- 無論、勝ち目があるような相手ではない。
- カスタマーサポートの仕事は、無論、ストレスフリーであるとは言いきれない。
「余儀なく」は「他になすべき方法がない」
「余儀なく」とは「他になすべき方法がない」という意味です。その他に手段がなく、それ以外に方法がないこと、つまり「それしかない」というニュアンスで使われます。
「余儀なく」の「余儀」には、「他のこと」や「他に取るべきこと」という意味があり、「他の選択がなく、それしかない」という意味となります。
- 体調が悪化し、入院を余儀なくされた。
- 就職活動では、一か月に5社以上の面接を余儀なくされた。
「言うまでもなく」は「言う必要なく」
「言うまでもなく」とは「言う必要がなく」という意味です。つまり「もちろん」「当たり前」「当然」という意味で使われる、一般的にも使用頻度の高い言い回しの一つとなります。
「言うまでもなく」は「言うに足りない」「あえて口に出し伝えることに値しない」という意味です。一般的には常識的なこと、誰もが承知の沙汰である内容に対して用いられる表現となります。
- 彼は言うまでもなくスマートで、ファッションセンスにもあふれている。
- 言うまでもないが、明日からGWだから、行楽地はどこも込んでるよ。
「すべからく」の英語フレーズとは?
「すべからく」の英語は「should」「have to」など多数
「すべからく」を英語で表現する時は、「should」や「have to」などを使うのが一般的です。「すべからく」の意味である「すべきである」「する必要がある」を最も基本的なフレーズで示すなら、これらの言い回しが適切でしょう。
その他、「当然」「当たり前」というニュアンスを強めたい場合は「naturally」や「is supposed to」、「もちろん」という意味合いを強調したいシーンでは「of course」を使うこともできます。
「すべからく」を使った英語例文
- 学生時代は、すべからく勉学に励むべきである。
You should study hard while in school. - 問題点は、すべからく解決することが必要である。
We should attack all the problem as soon as we find them. - 動物なら、すべからく人々に愛されるべきであろう。
All the animals are supposed to be loved and cared by human regardlessly.
まとめ
「すべからく」は漢字で「須らく」と表記し、「当然」「なすべきこと」、また「是非とも」という意味を持ちます。「すべからく」は「べし」「べきである」「その必要がある」という言い回しを最後に付けることが多く、会議や報告会などのビジネスシーンなどで好んで使われています。
使い方で注意をすべきなのは、「すべからく」を「全て」という誤った意味で使ってしまうことです。「全ての質問に答える」という意味で「すべからく質問に答える」と言うのは誤りです。この点を留意して、正しく「すべからく」を使っていきましょう。