「役員報酬」と「給与」の違いとは?決め方・相場と開示の義務

「役員報酬」とは「会社の役員に支払われる給与」のことですが、従業員に支払われる「給与」とは税務上の扱いで違いがあります。

この記事では、「役員報酬」の意味や英語表現、「給与」との違いを解説します。また「役員報酬」の決め方や相場、海事の義務の有無などについても紹介します。

「役員報酬」の意味とは?

「役員報酬」とは「役員に支払われる給与」のこと

「役員報酬」とは、役員に定期的に支払われる給与のことです。「役員」とは、会社の経営陣のことで、例えば、取締役や監査役、執行役、会計参与などの役職の人材を指します。それらの役職を合わせて重役などと呼ばれることもあるでしょう。

役員には賞与や退職給与金など一時的に支払われる報酬もありますが、役員報酬にはそれらの報酬は含まれません。役員に定期的に支給される基本給を「役員報酬」と言います。

「役員報酬」は英語でcompensation for directors

「役員報酬」の英語表現はさまざまありますが、「報酬」「賃金」「給与」を意味する「compensation」と、「役員」を表す「director」を組み合わせた「compensation for directors」「director’s compensation」という表現がよく使われます。

また「役員」を「board member」や「executive」という表現に置き換えて、「board members’ compensation」「executive compensation」という表現もあります。

「役員報酬」と「給与」との違いとは?

「給与」とは「雇用関係にある者に支払われる労働の対価」

「給与」とは「雇用関係にある者に支払われる労働の対価」のことです。「給与」は雇用主から雇用している従業員に対して、労働に対する報酬として定期的に支払われます。

「給与」と似た言葉に「給料」がありますが、「給料」は基本給のことです。「給与」は給料に加えて、残業代などの各種手当も加えられた報酬を「給与」と言います。一般的に、会社勤務の従業員は、毎月会社から「給与」が支払われています。

「役員報酬」と「給与」では税務上の取り扱いが違う

「役員報酬」と「給与」では税務上の取り扱いが違います。「給与」は会社の経理上、損金という項目に参入できますが、役員報酬は損金として参入するために条件があります。

「損金」とは会社の受ける損失のことで、会社の経費からの支出分として認められるお金のことです。

給与は不当に高額でない限り、損金として算入できます。しかし「役員報酬」は損金として算入するために一定の条件を満たさなくてはなりません。なぜなら役員報酬は役員自身がその報酬額を決められるので、法人税を減らす目的で、役員報酬を不当に引き上げて損金として参入してしまうことが考えられるからです。

「役員報酬」を損金として算入するための3つ条件

「役員報酬」を損金として算入するために、次の3つの条件を満たす必要があります。

「役員報酬」を損金として算入する条件
  • 定期同額給与:定期的に支給される給与
  • 定期同額給与:所定の時期に事前に税務署に届け出た給与
  • 利益連動給与:会社の利益と連動して支給される役員報酬。
    ただし、有価証券報告書に記載されたその事業年度の利益についての指標に基づいて客観的に算出された役員報酬額であること。また、同族会社でないこと。

「役員報酬」の決め方とは?相場とメリットとの関係

「役員報酬」は株主総会と取締役会で決められる

「役員報酬」の一般的な決め方は、まず株主総会で年間の収益から算出された役員報酬が妥当であるかどうかを決議します。次に、取締役会で役員報酬の詳細が決定されます。

役員報酬の相場から役員報酬を決める

役員報酬の相場を知っておくことは、役員報酬を決めるときに大切です。事業規模に対して極端に役員報酬が多いと、故意に会社の利益を減らして所得税を減税しようとしていると疑われてしまうからです。

国税庁の平成30年分民間給与実態統計調査結果によると、資本金が2,000万円以下の企業の役員報酬額は605万円です。その後、資本金が増えるのと比例して、役員報酬額も上がっていく傾向があります。また同業者の役員報酬なども、役員報酬を決めるときの参考になるでしょう。

役員報酬はメリットやデメリットを検討して決める

役員報酬を増やすと、役員の利益は増えて会社の利益が減ります。すると法人税などの税金が減るというメリットがあります。しかし、個人の収入が増えれば、住民税や所得税の負担が増えるというデメリットがあります。

役員報酬を決めるときは、役員の収入が増えて会社の法人税が減るというメリットと、その分役員の所得税が増えるというデメリットとを照らし合わせることも大切です。

役員報酬の変更は原則として不可

役員報酬は一度決定されると原則的には1年間は変更できません。しかし事情により、役員報酬を変更することもできます。

報酬の増減に関わらず、事業年度の開始から3ヶ月以内に、株主総会で決議されれば役員報酬の変更はできます。その際には、役員報酬の変更が決定されたことを記した株主総会の議事録や同意書を必ず保管しておきましょう。

議事録などが残っていないと正しい損金算入が行えず、役員報酬の変更により増額分にも所得課税が課せられて、二重課税になってしまいます。

「役員報酬」の開示義務と税金

上場企業の役員報酬が1億円以上で開示

上場企業は役員報酬の開示が義務付けられています。

上場企業は、役員報酬の決め方と総額を有価証券報告書に開示する義務があります。しかし2020年において、すべての上場企業の役員報酬は開示されていません。

「役員報酬」も源泉徴収される

「役員報酬」も給与所得として扱われるので、所得税や住民税がかかり源泉徴収されます。源泉徴収制度とは、会社が従業員の代わりに所得税などの税金を支払う制度のことで、役員報酬もその対象です。

また、役員報酬は年末調整により所得税などの税金は精算されるので、役員報酬の確定申告は必要ありません。

まとめ

「役員報酬」は「役員に支払われる給与」のことですが、経理上、「損金」に参入するためには条件があります。このように役員報酬が厳しく取り扱われる理由は、役員報酬は役員自身が決められることと、法人税対策として会社の利益を減らすために役員報酬を利用しないようにするためです。正しい方法で役員報酬を管理し、その金額も決めるようにしましょう。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。