「一石を投じる」は選挙や講演の際の挨拶で使われたり、一般的には意気込みや決意などを述べるときに用いられる慣用句です。普段は何気なく無意識のうちに放たれますが、正しい意味を把握していますか?
ここでは「一石を投じる」の意味や四字熟語としての言い換え表現、使い方の例文、類語や英語フレーズを解説します。
「一石を投じる」の意味とは?
「一石を投じる」の意味は「周囲の反響を呼び起こす」
「一石を投じる」とは「周囲の反響を呼び起こすこと」を意味する言葉です。ある事柄やテーマに対し、新たなアイデアや問題点などを投げかけて、周囲の関心を呼び起こすことを表します。
「一石を投じる」ことで水面に波紋が生じます。この波紋を「人々の反響」にたとえた言葉が「一石を投じる」です。
「一石を投じる」は四字熟語で「問題提起」
「一石を投じる」は「問題提起(もんだいていき)」という四字熟語に言い換えることができます。「一石を投じる」ということは、つまり「問題点や意見をかかげること」です。そうすることで、周囲の反響を呼び、問題解決や現状改善を目標に新しい動きへとつなげることができます。
「一石を投じる」は現代社会で必要な動き
「一石を投じる」という動きは、欧米文化やダイバーシティ社会に対応しなければならない現代社会においても、必要な動きの一つでもあるでしょう。
日本の社会では、相手の意見や考えに逆らわず、前例や常識と並行した言動が好まれていました。しかし、現代社会では新たなアイデアやビジネスモデルなど、波風を立てることで変化をもたらすという動きも好意的に受け入れるようになりつつあります。なぜなら、「同じ考え」「同じ立場」「同じやり方」ではビジネスの発展も望めなくなってきているからです。
現代の日本でも現行のルールや前例をとっぱらう目的で、起爆剤として一石を投じる動きが出始めています。グローバル化が進んだことを皮切りに、世界が誇る先進国であり続けるためにも、「一石を投じる」ことは必要な行動だと言えるでしょう。
「一石を投じる」の使い方と例文
「一石を投じる」は新しい試みに対して使われる
慣用句でもある「一石を投じる」は、日常的な会話でフランクに使われるような表現ではないかもしれません。むしろ、ビジネスシーンや企業・組織などにおいて革命的な変化を求めたり、新しい試みにチャレンジする場合に好んで使われます。
「何か新しいことを始めよう」「今までおざなりになっていたアイデアを具体化させよう」そのような試みのある企業で「一石を投じる」ことは、平穏な社内文化に風穴を開ける点火物ともなり得ることでしょう。
新たな試みや風変わりなチャレンジを遂行するようなシーンで「一石を投じる」という表現が多く使われるのは、波紋を呼ぶことで大きな変化を求める意思表示でもあるのです。
「一石を投じる」を「問題を起こす」の意味で使わない
「一石を投じる」とは、そもそも問題提起をし波風を立てることを意味します。これは良い意味で、日本の文化要素である「意見に背かず、慣例やルールに従う」といった風潮に逆らうことでもあります。
しかしながら、「一石を投じる」とは悪い意味で問題を起こすことや、トラブルを生み出すことではありません。「一石を投じる」ことの意味である「波風を立てること」は、問題を提起し願わくば良い方向へと改善することを目指すことです。もちろん、波紋を生じさせてトラブルを悪化させる意図は本質的には含まれていません。
「一石を投じる」とは、周囲に反響を呼ぶような問題を提起したり、今までにない新しいアイデアを挙げることで、新しい発展につながることを目的としています。問題を悪化させて、現状をかき回すような「悪戯的な考え」はないことを理解しておきましょう。
「一石を投じる」を使った例文
- 古い体質を一新させるために必要なことは、意を決して一石を投じることである。
- 一石を投じるべく、新人コンテストの優勝作品を商品化することにした。
- 今まで波風を立てたことのなかった部長が、会議で一石を投じる発言をした。
「一石を投じる」の類語とは?
「物議を醸す」は「世間の議論を引き起こすこと」
「物議を醸す(ぶつぎをかもす)」とは、「世間の人が議論を引き起こすこと」を意味します。たとえば、ニュースや新聞などのマスメディアを通して騒動が伝えられると、問題や争点などを議論する報道が流れることがあります。それが影響し、世間一般的に話題の中心になったり、意見や議論が膨らむことを「物議を醸す」と言います。
「物議を醸す」の「物議」とは「世間一般の人が議論をすること」、また「醸す」とは「醤油などを作ること」「醸造すること」の他「雰囲気や状態を生み出すこと」を意味します。つまり、「物議を醸す」で「議論を引き起こす状態を生み出す」となります。
- 彼の発言は、物議を醸しだす結果となった。
- 物議を醸し出して数日後、騒動は止みはじめた。
「波紋を呼ぶ」は「影響が周囲に及ぶこと」
「波紋を呼ぶ」とは、「影響が周囲に及ぶこと」を意味します。つまり、周囲の人々や環境に変化をもたらしたり、動揺を招いたりすることを「波紋を呼ぶ」といいます。
そもそも「波紋」とは、水に何かが落ちたり、投げ込まれたりした際に生まれる波のような模様を指します。つまり、次から次へと周囲に影響を与え、動揺や変化を伝えることを表す言葉が「波紋を呼ぶ」となります。
- 選挙戦では予想外にも新人が当選し、政界に大きな波紋を呼んだ。
- 社内で波紋を呼ばないように、海外への転勤は最後まで口外しないようにしよう。
「一石を投じる」を英語で表現すると?
「一石を投じる」は英語で「raise question」
「一石を投じる」は日本語が持つ特有の固さがありますが、柔らかく意訳すれば「問題を掲げること」でもあります。英語圏でよく使われるフレーズに「raise question」がありますが、これは「問題を提起する」という意味で広く使われています。
その他、「状態や状況をかき回す原因を作る」という意味の「cause a stir」は、言動によって現状に波風を立てる時に使われます。どちらもビジネスシーンで使用頻度の高い英語フレーズとなります。ぜひ、覚えておきましょう。
「一石を投じる」を使った英語例文
- イエスマンだけが集まる会社に未来はない。一石を投じて発展を期待しよう。
The company that only meets with yes-man has no future. Let’s raise questions and hope for the better future. - 彼女の発言は、政界に一石を投じる結果となった。
Her words ended up causing a stir in political circles.
まとめ
「一石を投じる」とは、水に石を投げ入れると波紋が広がることから、「周囲に反響を呼び起こすこと」また「問題提起をすること」という意味があります。一般的なビジネスシーンはもちろん、企業や組織、また政治の世界などで、大きな発展を試みる意図をもって使われます。また、「一石を投じる」という表現を通して、強い意気込みや変化を求める意欲を示すこともできるでしょう。