「一段落」を使った敬語表現とは?意味や類語・正しい読み方も紹介

「一段落」は、ビジネスだけでなく日常の仕事や作業の途中によく使われる言葉です。しかし、敬語として使えるのかということのほか、正しい読み方についての疑問も生じます。この記事は「一段落」の意味や語源をはじめ、敬語や読み方、類語などについても紹介しているもので、語句に対する疑問が解消できる内容です。

「一段落」の意味と語源とは?

「一段落」の意味は「ものごとの一区切り」

「一段落」には、ものごとの一区切りという意味があります。日常生活において仕事に一区切りついたタイミングなどに、「一段落ついたら休憩しよう」といった声掛けがよく聞かれています。

これは「完全に仕事が終わったわけではないが、区切りのよいところで一度休憩しませんか」という提案の意味合いです。

「一段落」の語源は「段落」

「一段落」は、長い文章をいくつかに分けてまとめたものの区切りを指す「段落」が語源です。従来の手書き文書や書籍、印刷された文書などでは、段落の始まりを一字空けて表し、段落の終わりで改行します。

このひとまとまりのことを「一段落」というのですが、この意味が転じて「物事の一区切り」のことも指すようになりました。なお、日本語は本来縦書きで表されていたため、段落の始まりの空き部分が一字落ちたように見えることから、「段落」と呼ばれるようになったのです。

メール文書では段落の字下げはしない

ビジネスで日常的に作成している電子メールにおいては、段落ごとの字下げは行わないことが一般的で、代わりに一行間隔を開けることでによって段落を分けます。

電子メールでは、閲覧するデバイスによって意図しないレイアウトの変化が生じることは珍しくありません。そのため、改行と字下げによる段落分けではなく、改行後に一行空けるという習慣が定着したようです。

「一段落」の正しい読み方とは?

「一段落」の読みは「いちだんらく」が正解

「一段落」の正しい読み方は、「いちだんらく」です。音読みする熟語は「漢語」、訓読みする熟語は「和語」と呼び、「漢語」に漢字や熟語が接続した場合にはその文字も音読みすることが一般的です。

「一段落」の場合、「一」は音読みで「イチ・イツ」、訓読みで「ひと」と読むことから、漢語である「段落」につく「一」は「イチ」と音読みすることが正解となります。

「ひとだんらく」は許容されつつある読み方

「一段落」を「ひとだんらく」と読むことは誤りで、テレビやラジオのニュースにおいて「一段落」を「ひとだんらく」と読むことは通常ありません。

しかし誤読であるにもかかわらず「ひとだんらく」は、日常生活だけでなくビジネスの場においても比較的よく耳にする読み方で、似た言葉の「一区切り(ひとくぎり)」との混同によるものと考えれるものです。

本来誤用や誤読である言葉であっても、広く用いられるようになることで少しずつ許容されていく事例はよくあり、「ひとだんらく」もそのひとつになりつつあります。

「一段落」の使い方とは?

「一段落つく」とは一区切りつくという意味

「一段落」には、後に「つく」「する」を続ける用法がよくみられるものです。まだ完全に終わっていないものごとに一旦区切りがついた状態になることを表したもので、「話に一段落ついたようだ」「仕事が一段落するまで頑張ろう」などというように使います。

ほかにも「つける」「させる」を続ける用法がよくみられ、「このあたりで一段落つけたい」「一段落させて帰宅しよう」などのように、能動的に区切りをつけたいときに用います。

「一段落つく」を漢字で「一段落着く」とは書かない

「一段落つく」の「つく」は、通常平仮名で表記されます。「つく」を漢字で「着く」と記述している事例を見掛けることがありますが、これは誤りです。

「着く」は「駅に着く」や「席に着く」のように、目的のところに到着するという意味の漢字で、「一段落つく」にあてることはできません。

「一段落」は体言として使われることは少ない

「一段落」は名詞ですが、主に「つく・する」「つける・させる」などをつけて、複合動詞として用いられています。

ものごとの一区切りという意味で「一段落」が体言として使われることケースは少なく、「これで一段落ができる」「一段落がつきそうだ」という表現より、格助詞の「が」を省いた「一段落できる」「一段落つきそうだ」という用法のほうが一般的です。

「一段落」を使った例文

  • 一段落つくまで作業を中断したくないので、先に休んでください。
  • 難問の山でしたが、皆の頑張りでなんとか一段落したことをお知らせします。
  • 開業準備が一段落できそうなので、ゆっくり連休を過ごせできそうだ。

「一段落」の敬語での使い方とは?

「一段落」に敬語の意味合いはない

「一段落」という言葉自体は単なる熟語で、敬語の意味合いはありません。敬語として使ってはいけないというルールはありませんが、目上の方に呼ばれたような場合にはすぐに応じたほうがよく、「一段落」うんぬんと答えること自体が失礼にあたるとも考えられます。

「一段落つく」「一段落させる」は謙譲語に言い換える

一般的によく使われている「一段落つく」「一段落させる」などは、「つく」「させる」の部分を別の表現に言い換えることで敬語として使えるようになります。

たとえば「一段落いたしましたら、すぐに伺います」のように謙譲語を用いれば、敬語として問題ないでしょう。

敬語は文法だけで測れない

尊敬語を用いた「一段落なさいませんか」という言い回しは、敬語として誤りではありません。また「一段落つかれましたか」も、動詞の未然形に「れる」を続けた尊敬を表す敬語であり、文法的には正しいものです。

しかし、目上の人へ仕事などの進捗状態などを尋ねること自体が失礼にあたります。敬語は文法的に正しければよいというものではなく、相手を立てる控えめな姿勢を表したものであることが重要です。

「一段落」の類語・言い換え表現とは

「一区切り」は「一段落」と同義の言葉

「一区切り」とは、ものごとや文章・話などが一段落することや、その一段落のことを指した言葉です。

「一段落」と同じ意味のことを表しているため、「一段落ついた」を「一区切りついた」というように、そのまま言い換えに使えます。

「切り」とは「区切り」のこと

「切り(きり)」には「区切り」「切れ目」という意味があります。「切りの良いところで終了する」「このあたりで切りをつけよう」というように、一旦中断したのちに再開して完了させるという意味合いです。

なお、「切りをつける」と似た言葉の「けりをつける」は、問題を解決して終止符を打つことを表します。

「一段落」の英語表現とは

「一段落」は英語で「one paragraph」

英語で「一段落」は、「one paragraph」と訳されます。ひとつの「paragraph」はひとつの「topic(話題)」について述べられたもので、日本語の段落と同じ意味です。

ただし「one paragraph」は文章の段落のみを指すもので、日本語のような「区切りの良いところ」のような意味合いはありません。

「一区切り」の英訳は「reach a stage where one can take a rest」

英語で「区切りの良いところ」という意味の「一段落」を表したものは「reach a stage where one can take a rest」で、日本語にそのまま訳すと「休める段階に達する」となります。

英語としても冗長であるため、「get done with~(~を済ます)」や「settles down(腰を落ち着ける)」が用いられています。

「中断・合間」という意味の「break」

「break」は、時間や期間などの「中断」や「合間」という意味の英語です。「break time」は一般的に「休憩時間」と訳されており、日本のカタカナ語でも「ブレイク」は「休憩」という意味で使われています。しかし、もともとの「break」自体に一息入れるという意味はありません。

まとめ

本来「一段落」に休憩という意味合いはありませんが、休憩を提案するときに「一段落」が用いられることや、区切りに一息入れることから「休憩」のニュアンスで使われるようになっています。「一段落」の誤った読み方とされていた「ひとだんらく」も定着しつつあります。