「横紙破りの行動」「横紙破りの人」というように、社会人になると「横紙破り」という慣用句をよく耳にすることがあります。「横紙破り」は、無理やりに物事を押し通すことという意味で使われますが、語源を知ると興味深いものがあります。
ここでは「横紙破り」の意味や使い方の他、類語や英語フレーズについて紹介します。
「横紙破り」の意味と語源とは?
「横紙破り」の意味は「無理に押し通すこと」
「横紙破り」とは「物事を無理に押し通すこと」を意味します。たとえ、それが道理に合わなくても、常識から外れていて明らかに間違っていても、無理やりに物事を推し進めることを「横紙破り」といいます。
「横紙破り」は、筋道の通らないことを平気でやらかしたり、守らなければならないルールや鉄則などを無視して行動することを表します。つまり、周囲にとって「難しい人」「お手上げな人」という風に映ることもあります。
また「横紙破り」は、主に人の性格や行動パターンなどに対して用いられるため、「横紙破りの人」という言い回しを多く使います。
「横紙破り」を「横紙」「横紙裂き」と言うことも
「横紙破り」は、言葉を省略して「横紙」と二文字で言い表したり、「横紙裂き」と言い表すこともあります。「横紙破り」と並んで「横紙」も「横上裂き」も同じ意味となり、同じ意図をもって使われます。たとえば「横紙な人」「横紙裂きの行動」などと言うこともあります。
「横紙破り」の語源は和紙が持つ特性
「横紙破り」は和紙が持つ特性が語源となっています。和紙を含む一般的な紙は、製造する際に、一定の方向に従って、原材料である繊維を流し込みます。この時にできる並行な目を「漉き目(すきめ)」と言い、通常、この漉き目が「横ではなく縦」に入るようにします。
「漉き目」は紙の製造過程で重要な工程の一つです。そのため「漉き目」がちぐはぐであったり、一定の方向に流れていない場合は、シワがつきやすくなったり、紙の出来上がりが粗末になってしまうことがあります。
障子や高級和紙と呼ばれる製品は「漉き目が縦」ですが、これを横にしたものが「横紙」です。つまり、通常の目ではなく、その逆「横に破る」ことを意味したものが「横紙破り」となります。
和紙の性質に逆らって横に裂くのは難しい
「横紙破り」の語源である「和紙」は、縦に裂くとほぼまっすぐに、綺麗に破ることができます。これは「漉き目」が縦に入っているからであり、逆に横に無理に裂こうとすると、曲がったり斜めに破れたりします。これは、紙の性質に反しているからです。
このように、語源である和紙の性質を知ると「横紙破り」の意味も容易に理解できるでしょう。
「横紙破り」の使い方と例文
「横紙破り」は肯定的な意図では使われない
「横紙破り」は「常識破りなことを押し通すこと」「筋違いなことを無理矢理に実行する」といった意味があるため、文章で用いる場合は、ほとんどのケースで肯定的な意図で使われることはありません。
どちらかと言えば「横紙破り」は相手の言動や態度などに対し、やや批判的な意図をもって使わることが多いです。もちろん「横紙破り」とは、決して誉め言葉ではありません。道理に叶わない物事や常識から外れたことを当たり前のようにしたり、それを強引に押し通すことを意味するからです。
「横紙破り」を使って遠まわしに批判する
「横紙破り」という表現を用いて、相手の強引な様子を「遠回し」に批判することもできるでしょう。つまり「あの人は強引だ」とストレートな表現を使わず、「あの人は横紙破りの人だ」とたとえることで、少し語調を和らげることができます。
もちろん「横紙破り」は「物事への強引さ」や「配慮のなさ」を表す慣用句であることには変わりないため、やや批判的なニュアンスを伴うという点は理解しておきましょう。
「横紙破り」は人の意見に耳を貸さない人に使われる
「横紙破り」という慣用句を使うのに最も適しているのは「人の意見に耳を貸さない人」です。つまり、周囲の人や周りの家族、友達などが何を言ってもどう説得しても「聞かない人」また「見向きもしない人」ということになります。
「横紙破り」は、性格的に頑固な人や周囲の現状を理解しない人、またチームワークに欠けたりワンマンに物事を進めるような人に対して使われます。
「横紙破り」を適切に使った例文
- 社長にはワンマンが多いと聞くが、うちの社長は横紙破りの人ではない。
- 横紙破りな行動が目立つようになったのは、結婚後、一家の主となってからだ。
- 有言実行なのは尊敬できるが、常識を外れた決断には首をかしげる。
「横紙破り」の類語とは?
「横車を押す」とは「無理に物事を行うこと」
「横車を押す(よこぐるまをおす)」とは、「無理に物事を行う」や「常識外れなことを行う」という意味を持ちます。そういったことから「横紙破り」と、ほぼ同じ意味を持つとも言えます。
車は縦に押さなければ進むことはありません。もちろん、強引に横に押そうとしても車輪が上手に回転しないため、動くことすらないでしょう。このような背景からも理解できるように、強引に物事を進めようとすることを「横車を押す」といいいます。
「ごり押し」とは「物事を強引に押し進めること」
「ごり押し」は比較的新しい言葉の一つで、意味は「物事を強引に押すこと」となります。つまり、人の意見や世評などに耳を傾けず、相手に配慮のない行動を指します。言葉が示すように「ゴリゴリと押す」という意味で、かなり強引な様子がうかがわれるでしょう。
また「ごり押し」は、俗語的な要素が強い言葉です。そのため、フォーマルな場面やビジネスメールなどで使うのはあまり適切ではありません。言葉を使う状況や相手を考えてから、使うようにしましょう。
「横紙破り」の英語フレーズとは?
「横紙破り」の英語1「force」
「横紙破り」は「無理強いして物事を行う」という意味です。英語圏では、そのような場面で「force(強引に何かをさせる」」という単語をよく使います。「force」は非常に強い言葉で、選択の余地なく、嫌でもそうさせるというニュアンスがあります。
「横紙破り」の英語2「do not listen」
「横紙破り」とは、つまり周囲の意見や考えを聞かず、物事を押し通すことです。そういった意味からも「do not listen(話を聞かない)」というフレーズを使うこともできます。
彼は横紙破りで、人に筋の通らないことを強制的にさせる。
He never listen to anyone but compel them to do things that hardly make any sense.
まとめ
「横紙破り(よこがみやぶり)」とは「道理に叶わないことを強引に押し通すこと、またはそのような人」という意味です。「横紙破り」は「和紙」を語源に持つ慣用句で、和紙の渡り目の特性「横に破りにくい」というところから生まれた慣用句となります。
社会人になると、職場で「横紙破りな人だ」「あの行動は横紙破りだ」というような会話を耳にすることもあるでしょう。完全に否定的な言い回しではありませんが、肯定的に使われることも少ないと言えます。
私のボスは横紙破りで、何があろうとも部下に強引に残業をさせる。
My boss always force his subs to overwork no matter what.