ネット上で「解せない」「解せぬ」などの表現を見かけることがありますが、この「解せない」は古語ではなく現代でも用いられる表現です。「解せない」の意味とその読み方をはじめ、ビジネスでも使える例文で詳しく解説します。また、類語・対義語や英語訳についても紹介しましょう。
「解せない」の意味とは
「解せない」とは「納得がいかない」という意味
「解せない」とは「納得がいかない、理解ができない」という意味です。「どうしても納得がいかない、どうしても理解ができない」というようにやや強いニュアンスでも用いられます。
読み方は「かいせない」ではなく「げせない」
「解せない」は「げせない」と読みます。「かいせない」という読み方は間違いです。「解せない」とは、「解せる(げせる=納得できる、理解できるの意味)」に打消しの「ない」をつけた表現です。そのため、読み方も「げせる」にならって「げせない」となります。
「解せない」がやや攻撃的なニュアンスで用いられる理由は読み方も関係していて、「げせない」という音の響きから「”どうしても”納得がいかない」という強い印象を受ける人が多いようです。
「解せない」は方言や古い言葉ではない
「解せない」は方言や古語のイメージを持っている人もいます。日常ではあまり使わない表現ですが、現代でも「解せない」という単語は用いられます。
ただし、「解せぬ(げせぬ)」に関しては話し言葉ではなく、ネットスラングとして使われることが特徴です。自分の身の回りに起こった「どうしても理解できない事柄や納得がいかない出来事」をSNSで投稿する際に「解せぬ」という表現が選ばれているようです。
「解さない(かいさない)」は「解する」の否定形
一方で、「解」の字を「かい」と読む「解する」という動詞もあります。「解する(かいする)」とは「わかる、深い意味を理解する」という意味です。この「解する」に打消しの「ない」をつけた場合は「解さない=かいさない」と読みます。
微妙な読みの違いですが、区別して覚えておきましょう。
「解せない」のビジネスでの使い方と例文
「解せない」は納得がいかないときに使う
「解せない」はその意味でも解説したように、納得がいかないさまを言い表したい場合に使用します。たとえば「先輩のミスで私まで叱責されるのは解せない」というと「私まで叱責されるのは納得がいかない」という意味です。
同様に「~とはなんとも解せない話だ」は「~とは納得がいかない話だ」という意味になります。相手の理不尽な態度に納得がいかない、という場合にも使用されます。
- この不況下に増税とはなんとも解せない話だ。
- 直属の上司である私に話が上がってこないのは解せない。まずは私に相談すべきだ。
「解せません」と使うことも
「解せない」は会話では「解せません」の形で用いられることもあります。「○○さんひとりが責任をとるのは解せません」などが良い例で、相手に対して「納得がいかない」と主張する際の表現です。
ただし、「解せない」という表現そのものが「どうしても納得ができない、理解できない」とやや強いニュアンスを持つため、ビジネスシーンでそう多く用いられる表現ではありません。どうしても抗議したい場合のみにとどめた方が無難でしょう。
- 今回の人事異動に関して、営業部の人員が削減されたのは解せません。理由を説明してください。
- プロジェクトの進展は悪くなかったはずですが、急に中止とは解せません。メンバーも困惑しています。
「解せない人」とは「納得できない人」
「解せない人」とは「納得ができない人、納得できていない人」を指します。たとえば「政府のやり方が解せない人は少なくはないはずだ」などと使うことができます。
「解せない」の類語とは
「腑に落ちない」も納得できないことを表す類語
「解せない」と似た意味の表現には「腑に落ちない(ふにおちない)」が挙げられます。「腑に落ちない」とは「納得できないこと」という慣用表現で、何らかの違和感から疑問に思うことを指して用いられる表現です。「事の経緯を確認したが、どうも腑に落ちない」などの表現で使うことができます。
「解せない」と「腑に落ちない」はいずれも「納得できない」というニュアンスがありますが、「解せない」のほうがより難解な問題に使うことが多いでしょう。「腑に落ちない」は比較的簡単に解決しそうな事柄に使うことが多いのが特徴です。
「後味が悪い」とは良くない印象が残るさま
「後味が悪い」とは、「物事が済んだ後に良くない感じがするさま、良くない印象が残るさま」を指します。「解せない」のように「納得できない」というニュアンスではありませんが、「納得できない=良くない印象を持っている」という意味では似た意味の表現です。
たとえば「後味が悪い映画だった」「後味の悪い試合にならないよう全力を尽くす」などの例が挙げられます。また、飲み込んだ後に口の中に苦みが残っている状態など、文字通り「後味」に言及する際にも「後味が悪い」と使うこともあります。
「解せない」の対義語と反対語とは
「解せない」の対義語は「解せる」
「解せない」は打消しの「ない」をつけた表現であるため、対義表現では「ない」をとった「解せる」が挙げられます。「解せる」とは「納得できる、理解できる」という意味です。たとえば、「解せる解せないの話ではない(納得できるできないという話ではない)」というように、対比の意味で並べて使う例もあります。
ただし「解せる」の形で表現することは少なく、「解せない」のように打消しの語を伴って使うのが一般的です。
「納得する」「了解する」も対義語として使える
「解せない」とは対義的な表現では「納得する」「理解する」「了解する」なども挙げられます。相手の行動を理解し受け入れること、物事の内容や事情を理解することを指して「納得する」や「了解する」と表現します。
いずれの表現も「納得できない」「理解できない」のように、打消しの語とともに使うと「解せない」の類語としても使うことができます。
「解せない」の英語訳とは
英語では「incomprehensible」を使う
「解せない」の英語訳では「be incomprehensible」の表現が使用できます。「be incomprehensible」で「理解できない」という意味です。たとえば「That was incomprehensible for me.」は「私には理解不能です=わたしには解せません」と和訳することができます。
また、「解せない」の英語表現では「strange(奇妙な、変な)」や「understand(理解する)」を使った英語訳も可能です。「understand」は「can’t understand」とすることで「理解できない=解せない」という意味になります。
「解せない」の英語例文
- That was a totally strange decision.
(全く解せない決定だ) - I can’t understand why she said such a thing.
(彼女がなぜあんなことをいったのか解せない)
まとめ
「解せない」とは「げせない」と読み「納得できない、理解できない」という意味の表現です。音の響きからやや硬い印象もありますが、本来強い否定の意味を持つ表現ではありません。単に「納得できない」というよりも、「”どうしても”納得できない」という強いニュアンスで「解せない」と使うことが多いです。