「貫禄」は「姿や態度などから伝わる重みや風格」を意味する言葉です。「貫禄が増す」「貫禄のある発言」などのように使われますが、若い人に対してはどのようなニュアンスで用いられるのでしょうか?
ここでは「貫禄」の意味と語源、使い方と例文、類語や英語表現などをわかりやすく解説します。
「貫禄」の意味と語源とは?
「貫禄」の意味は「姿や態度から感じる風格や重み」
「貫禄」とは「姿や態度などから受け取られる風格や重み」を表す言葉です。体つきや物事への姿勢、言葉の使い方などから伝わってくる風格や気位などを意味します。
「貫禄」は人の外見のみならず、内面から感じ取れる威厳や重みのある雰囲気を示す言葉です。そのため、人間的な性質や特徴を表す言葉の一つとして用いられます。
「貫禄」の語源は「武士としての価値」
「貫禄」の「貫」とは、鎌倉時代以降に使われるようになった「田畑に用いる単位」の一つで、一定の期間で収穫される食物を「銭」に換算して表に示したものです。また、室町時代から江戸時代にかけては、所領地の石高を表す土地評価単位「知行高」にも使用されていました。「禄」とは、身分の高い人に仕える者に支給される給与を意味します。
このような意味から「貫禄」は、所有する土地の大きさや給与の値などのように「武士としての価値」を示す言葉として使われていました。たとえば「貫禄がある」とは「領土を広く持つ高給与の武士」という意味です。
ここから意味が発展し「体つきや言葉、態度や姿勢などから感じ取れる風格」も意味するようになった背景があります。
「貫禄」と「貫録」は同じ意味
「貫禄」の同音同義語に「貫録」があります。一見すると同じように見えますが「ろく」の漢字が「禄」と「録」で異なります。実際には「禄」は「表外字」、「録」は「代用」と呼ばれています。
つまり、どちらでも間違いではないが、本来は「貫禄」、代用として「貫録」も使うことができるという位置づけです。
「貫禄」の使い方とは?
「貫禄」には「若い人の成長を褒める意図」がある
「貫禄」を若い世代の人に使う場合は、風格や威厳が身に備わったという意味ではなく、むしろ「人間的に成長した」ということを褒める意図で使われることがほとんどです。
つい最近まで学生だと思っていた人が、いつのまにか社会人になり、仕事をしている姿を見ると「成長した」としみじみ感じることがあります。たとえ、身体的に幼く見えても、社会人としてのマナーを心得て、責任と自信をもって生活している姿は「貫禄がある」といえるでしょう。
このように「貫禄」を若い人に使う時は「立派な社会人になった」ということを褒めるニュアンスが込められます。
「貫禄」がある人の特徴は「堂々としている」
「貫禄」がある人は「堂々としている」「自分に自信がある」「責任感が強い」といった印象を持つ人が多いです。社会人としての自覚をしっかりと持ち、自分の言動に責任を持った人が「貫禄」がある人だと言えます。
また、努力をして社会的な地位を射止めた人や、多くの部下を統率する職場のリーダーなども、貫禄がにじみ出ている人たちでしょう。貫禄がある人は、コソコソとせず、何をするにも確固たる自信や志をもって行動します。
「貫禄がある」「貫禄がついてきた」
「貫禄」を使った熟語表現に「貫禄がある」や「貫禄がついてきた」があります。「貫禄がある」は人の外見やにじみ出る雰囲気が堂々としていたり、立派だったりするときに使われます。同様に「貫禄がついてきた」は、過去は貧弱だったがずいぶん成長した、といったニュアンスで使われます。
「貫禄が違う」「〇〇としての貫禄」
その他、「貫禄」を使った熟語に「貫禄が違う」や「〇〇としての貫禄」があります。「貫禄が違う」は、対照的な両者を見て「自信のあり方や、立派な素振りのあるなしに驚く」といったニュアンスがあります。また「〇〇としての貫禄」は、「そのような立場や地位にふさわしい人物になる」という意味です。
「貫禄」を使う時の注意点は?
「貫禄」が「悪口」として伝わることも
「貫禄」は体形がふくよかであることや、見かけが年齢より老けて見えることに対して使われることがあります。
たとえば、久しぶりの同窓会で、以前はスリムだった人がすっかり太ってしまったり、白髪やしわなどが増えて、実際の年齢より老いて見える場合などもあるでしょう。このような状況を表す時にも「貫禄が出てきた」と言ったりします。
しかし、人によっては意味を肯定的に受け止めず、「嫌味」や「皮肉」といったニュアンスで解釈してしまうことがあります。そのため、「貫禄」を使う時は相手との関係性や状況などを把握してから使うようにしましょう。
「貫禄」を女性に使う時は「ふくよかになった」の意味
「貫禄」は外見的にふくよかになった、つまり「太った」という意味でも使われます。そのため、女性に対して使う時は細心の注意を払うようにしましょう。女性の中には、体形を気にする人も多くいることを忘れないようにして下さい。
仲の良い女性や友達などに、ちょっとした冗談で「貫禄が出てきた」とからかうこともあるでしょう。しかし、職場やビジネスシーンでは避けておいた方が良い言葉だと言えます。
「貫禄」はビジネスシーンで嫌味になることも
ビジネスシーンでは昇進をした人に「貫禄が出てきた」「貫禄がついてきた」などという場合があります。職場での地位が上がったことで、必然的に風格や深みのある物腰が備わってくるからです。
しかし、職場の中では昇進をする人もいれば、そうでない人もいます。ビジネスシーンにおいては人間関係が複雑な場合も多く、「貫禄」を「揶揄」や「からかい」として使われる場合があります。必ずしも心から褒める意図で「貫禄」を使っているとは限らないことを留意しておきましょう。
「貫禄」を使った例文
- しばらく会っていなかった姪っ子も、最近では貫禄がでてきたようだ。
- 上司は貫禄ある話し方で、部下にビジネスの極意を語った。
- 取引先の社長は、他の社長陣と貫禄が違う。
「貫禄」の類語とは?
「貫禄」の類語1「風格」
「風格」とは人の容姿や態度、言葉遣いや物事に対する姿勢などに現れる品格を意味します。「風格のある男性」のように、主に人の雰囲気や性質に対して使われますが、「風格のある詩」のように、文章や絵画などのような学芸的なものに対しても用いられることがあります。
「貫禄」には体系的にふくよかなことも意味しますが、「風格」にはそのような意味合いはほとんど含まれていません。この点では「貫禄」と意味や使い方が異なります。
「貫禄」の類語2「威厳」
「威厳」は「近寄りにくいほどおごそかで、堂々としていること」を意味します。「威厳」の「威」は「勢いがあること」、「厳」は「重々しく怖々しい様子」を表します。
「威厳」も「貫禄」と同じように、長年を経て培われてきた自信や自負心などが、身に備わることを意味します。しかし、より「畏れ多い」というニュアンスが強いのは「威厳」の方です。
「貫禄」の対義語とは?
「貫禄」の対義語1「浅はか」
「浅はか」は「思慮が足りず、あっさりとしたさま」を意味する言葉です。考えや決断などに深みがなく、大切な事柄が抜けているようなことを指すときに使われます。「浅はかな考え」や「浅はかな行動」などのように、責任感のない思惑や素行に対して用いられます。
「貫禄」の対義語2「軽率」
「軽率」は「物事を深く考えず、軽はずみな行動をとること」を意味します。軽々しい態度をとったり、思慮に欠ける行動をすることに対して「軽率」という言葉を使います。主に、人の言動を非難する時に用いられますが、一方で、謝罪のシーンでもよく登場します。
「貫禄」を英語で表すと?
「貫禄」の英語は「dignity」「presence」
「貫禄」を英語で表す時は「dignity」や「presence」などを使うのが適切でしょう。どちらも「身体や態度などから感じ取られる威厳や重々しさ」という意味があり、上品なニュアンスのある単語となります。
「貫禄がある」は英語の口語表現で「king-ish」
貫禄があることを口語で表現する時に、「まるで王様のように」と比喩的な意味合いで表現することがあります。この時に「king-ish」の他、「queen-ish(クイーンのように)」「champion-ish(チャンピオンのように)」などを使ったりします。
あくまで口語独特の言い回しになりますが、体形のみならず物腰や姿勢、言葉遣いなどに対して貫禄が出てきた場合、相手を冗談交じりにからかう意図で使われます。
He is getting king-ish recently, isn’t he?
彼、最近、貫禄が出てきたんじゃない?
まとめ
「貫禄」とは「容姿や態度などから受け取る、人としての重みや風格」という意味です。人間的な深さや重みを表す言葉であるため、「貫禄がにじみ出る」「母親の貫禄」などのように、さまざまな表現で使うことができます。
若い人には、堂々とした態度や社会人として自信を蓄えた言動を褒める意図で使われますが、皮肉や嫌味として伝わってしまうことがあります。使う相手に気をつけて、円滑なコミュニケーションに努めましょう。
I have gained presence.
貫禄が増してきた。