「泣きっ面に蜂」の意味や由来とは?似たことわざと対義語の例文も

悪いことが重なって起きることを「泣きっ面に蜂」と表現します。似た意味のことわざには「踏んだり蹴ったり」や「弱り目に祟り目」なども。

この記事は「泣きっ面に蜂」の意味や由来をはじめ、使い方と例文についての解説です。類語・対義語と英語・中国語表現についても紹介します。

「泣きっ面に蜂」の意味とは

「泣きっ面に蜂」の意味は「悪いことが重なる」

「泣きっ面に蜂(なきっつらにはち)」とは、不運や災難などの悪いことが重なること。嫌なことや悪いことがあって泣いているところをさらに蜂に刺されるということから、転じて悪いことがおさまらないうちに次の悪いことが起きるという意味のことわざです。

「泣きっ面に蜂」の由来は「江戸いろはかるた」

「泣きっ面に蜂」は「江戸いろはかるた」に使われたことが由来です。「江戸いろはかるた」とは、江戸中期に江戸で作られた「いろはかるた」のこと。「いろはにほへと」から始まる47文字のひらがなと「京」の字を加えた48文字を使ったことわざが札(ふだ)になったカードゲームです。

もともとは京都で作られた「いろはかるた」が大阪や江戸に広がったとされ、それぞれに違うことわざが使われているのが特徴のひとつ。「江戸いろはかるた」は最初の「い」が「犬も歩けば棒にあたる」で始まるため、「犬棒かるた」とも呼ばれています。

「泣きっ面に蜂」の使い方と例文

悪いことが重なった状況説明で使う

「泣きっ面に蜂」は、悪いことに悪いことが重なった状況を説明するときに使うのに適しています

たとえば、急な雨が降ってきてぬれたうえに、ポケットにいれておいたスマートフォンが壊れてしまったときなど。「雨にぬれた上にスマホが壊れるなんて泣きっ面に蜂だよ」と表現することで、嫌なことや困ったことが起きているところへさらに違う災難がふりかかったというニュアンスを端的に説明できます。

不幸が重ならないようにと注意喚起に使う

「泣きっ面に蜂」は、悪いことがおきたときにさらに悪いことが重ならないようにと注意喚起するときにも使えます。災難や困ったことが起きたときには慌てて行動することも多いため、さらに悪いことを引き起こさないように気をつけましょう、というニュアンスです。

たとえば、寝坊して慌ててでかけようといている家族に「泣きっ面に蜂ということにならないよう、落ち着いてでかけてね」などと声をかけます。寝坊している上に慌てて走ることで忘れ物や事故など悪いことが起きないよう、注意喚起の意味で使う表現です。

「泣きっ面に蜂」を使った例文

  • 遅刻だからと急いでいたら財布を落としてしまって、泣きっ面に蜂だよ。
  • 仕事のミスで上司に叱られるし彼女には振られたし、泣きっ面に蜂な一日だった。
  • 泣きっ面に蜂なんてことにならないように、遅刻だからと慌てないで周囲を確認してね。

「泣きっ面に蜂」の類語と似たことわざとは

類語1「二重苦」は苦しいことが2つ重なること

「重苦(じゅうく)」は耐えられないような重い苦しさのことで、不幸や災難が2つ重なることを「二重苦(にじゅうく)」と言います。「泣きっ面に蜂」とほぼ同じ意味で、言い換えとしても使える言葉です。

例文
  • 給料は減るし保育料は上がるしで、泣きっ面に蜂だ。
  • 給料は減るし保育料は上がるしで、二重苦だ。

類語2「ダブルパンチ」は2つの悪いこと

「ダブルパンチ」とは、ボクシングにおいてパンチを連続して打つこと。転じて、2つの悪いことや災難をさします。悪いことが2つ重なることは「ダブルパンチをくらう」と表現し、「泣きっ面に蜂」とほぼ同じ意味です。

例文
  • 昨年は失業した上に彼女にも振られ、泣きっ面に蜂でした。
  • 昨年は失業と失恋のダブルパンチをくらって大変でした。

似たことわざ1「踏んだり蹴ったり」

「踏んだり蹴ったり(ふんだりけったり)」とは、ひどい目に続けてあうこと。倒れた状態で踏まれたり蹴られたりするように、災難に災難が重なることをさします。たとえば寝坊して慌てて出かけたら財布を忘れたときなど、「踏んだり蹴ったりだよ」などと表現します。

不運や災難などの悪いことが重なることをさす「泣きっ面に蜂」とほぼ同じ意味と言えます。

例文
  • いやなことばかりが続いて踏んだり蹴ったりだ。
  • 電車が遅れて遅刻したり財布を落としたりと、踏んだり蹴ったりな一日だった。

似たことわざ2「一難去ってまた一難」

「一難去ってまた一難(いちなんさってまたいちなん)」とは、災難が過ぎたと思ったら次の災難がやってくると意味のことわざ。災難が続いてやってきたときに「一難去ってまた一難だよ」と使います。

「泣きっ面に蜂」の不運や災難が重なるというニュアンスに対して、「一難去ってまた一難」はひとつの災難が去ったのにまた次の災難がきたというニュアンスです。

例文
  • 長男の風邪が治ったら今度は次男が風邪をひいた、一難去ってまた一難だ。
  • 花粉症がようやく落ち着いたのに今度は黄砂が降るらしい。一難去ってまた一難だわ。

「泣きっ面に蜂」の対義語とは

「泣きっ面に蜂」の対義語は「盆と正月が一緒に来たよう」

「盆と正月が一緒に来たよう(ぼんとしょうがつがいっしょにきたよう)」とは、楽しいことやうれしいことが重なること。盆と正月は家族や親族が集まって非常ににぎやかで忙しいことから、めでたく楽しいことが一度に重なることをさします。また、非常に忙しいという意味でも使われる言葉です。

不運が重なるという意味の「泣きっ面に蜂」に対し、楽しいことが重なるという意味での「盆と正月が一緒に来たよう」は反対の意味と言えます。

「不幸中の幸い」も「泣きっ面に蜂」の対義語

「不幸中の幸い(ふこうちゅうのさいわい)」とは、不幸なことが起きているときに小さな良いことがおきること。たとえば、事故を起こしたけれど、誰もケガはしなかったとき「不幸中の幸いだ」などと表現します。

「泣きっ面に蜂」は悪いことが重なるという意味ですが、「不幸中の幸い」は悪いことが起きたが小さな良いこともあるというニュアンスです。

「泣きっ面に蜂」の英語・中国語表現とは

「泣きっ面に蜂」の英語訳は「It never rains but it pours.」

「泣きっ面に蜂」を英語で表現するには「It never rains but it pours.」というフレーズが適しています。直訳すると「降れば必ず土砂降り」となり、悪いことはいくつも重なるというニュアンスの言葉です。

「泣きっ面に蜂」は中国語で「雪上加霜」

「泣きっ面に蜂」の中国語表現は「雪上加霜(シュエシャンジアーシュアン)」が当てはまります。直訳では「雪上に霜が降りる」となり、雪が降って寒いところに霜が降りるほどさらに寒いということ。

悪いことにさらに悪いことが重なるというニュアンスのため「泣きっ面に蜂」の中国語表現として使える言葉です。

まとめ

「泣きっ面に蜂」とは災難や不幸などの悪いことが重なって起きること。由来は「江戸いろはかるた」で、災難が重なって起きたようすを説明するときに使える言葉です。さらに悪いことが続かないよう注意喚起の言葉としても使えます。

悪いことが起きた時に慌てて行動することでさらに悪いことが起きてしまうこともあります。「泣きっ面に蜂」とならないよう、気をつけましょう。