「脱稿」の使い方とは?意味や類語「校了」との違いと例文も紹介

「脱稿」とは「原稿が書き終わる」という意味です。出版用語ですが、SNSで「脱稿した!」「脱稿おめでとうございます!」と使っているのは、プロの作家や編集者とは限りません。「脱稿」の意味や使い方を説明しましょう。「校了」「入稿」などの類語・関連語や対義語も紹介します。

「脱稿」の意味

「脱稿」の意味は「原稿が書き終わること」

「脱稿(だっこう)」の意味とは「原稿が書き終わること」です。辞書によっては、文章の下書きを指す草稿(そうこう)の完成、という意味を掲載していますが現在ではあまり使用されていません。

「脱稿」は小説や漫画、論文などを対象に使用できます。デジタルデータの原稿も「脱稿」で表現可能です。

「締め切りに間に合わない」という意味はない

「脱稿」は「原稿が書き終わらず、締め切りに間に合わない」の意味として誤解されやすい言葉です。「脱」の字から、「脱落」などのネガティブな意味を連想することが関係するのかもしれません。実際には「脱稿」にネガティブな意味ないため、誤用しないよう注意しましょう。

「脱稿」の使い方と例文

「脱稿」はプロ・アマ問わず使う出版用語

「脱稿」はプロ・アマ問わず、本を出版する場合に使用される出版用語です。大手の編集社と契約するプロ作家でも、趣味で同人誌を作るアマチュア作家でも、原稿が書き終われば「脱稿した」と表現できます。

同人誌(どうじんし)とは、趣味が同じ人たちが資金を出し合って作成する冊子のことです。現在では1人で作成する人も増えています。アニメやマンガのファン活動の一環として若者が作成することも多いため、SNS上でも「脱稿」が頻繁に使われています。

「脱稿した」と「完成した」は同じとは限らない

原稿を書き終えたことを表す「脱稿した」は、「原稿が完成した」と同じ意味とは限りません。脱稿した原稿を編集者がチェックし、修正作業が発生することが多いためです。そのため、プロの作家や編集者は「脱稿」を「とりあえず書き終わった」程度の意味合いで使用することがあります。

アマチュア作家の場合、チェックをする人がいないことが多いでしょう。そのため、自分で推敲し脱稿するとそのまま印刷されます。この場合の「脱稿」は「原稿の完成」と同じ意味です。

「脱稿」の英語表現は「finish writing」

「脱稿」の英語表現は「finish writing」です。ここでは「finish」は「仕事などを終える、仕上げる」、「writing」は「執筆」の意味で使っています。

「脱稿」を使った例文

  • 脱稿する前に、もう一度推敲し直そう
  • 「論文はいつ脱稿できますか?」と毎日急かされるのがストレスだ
  • 「脱稿できました!久しぶりに徹夜でゲームしよう」
    「脱稿おめでとうございます!無理せずしっかり休んでくださいね」

「脱稿」の類語・関連語

「脱稿」の類語は「筆をおく」

「脱稿」の類語は「筆をおく」です。文章などが書き終わることを意味します。

ここでは「おく」を「やめる、中止する」の意味で使用しています。そのため、漢字表記にする場合は「筆を措く(擱く)」です。「筆を置く」だと、ただ筆を机に置くことを表現することになり、意味が変わってしまいます。

「校了」は出版用語の類語

出版用語に絞った場合の類語は「校了(こうりょう)」です。確認や修正が終わって原稿が完成したことを意味します。脱稿した後に、担当者や編集者のチェックが済んで印刷できる状態になった際に使用します。

ただし、職場によって意味合いに差があるようです。「編集者が修正するが、作者の作業はない」や「自分の確認が終わったので別の人にチェックを頼む」などです。その職場でどのように使われているのか、事前に確認しておきましょう。

「脱稿」の関連語は「校正」「入稿」

「脱稿」に関連する言葉に「校正(こうせい)」と「入稿(にゅうこう)」があります。どちらも出版用語です。

「校正」は編集者などが原稿を確認し、修正箇所を見つける作業です。修正箇所があった場合は作者に原稿を戻します。この1回目の校正を「初校」と呼びます。作者が修正した原稿を再び校正する場合は「再校」です。

「入稿」は2つの意味で使用されます。1つ目は「原稿を印刷所へ提出すること」です。他人に校正を頼まない場合は、脱稿してすぐに入稿されることもあります。2つ目の意味は「編集者などが、作者から原稿を入手すること」です。どちらの意味かは文脈から判断する必要があります。

「脱稿」の対義語

「脱稿」の対義語は「起稿」

「脱稿」の対義語は「起稿(きこう)」です。「原稿を書き始めること」という意味があります。「起稿する」などの形で使用します。「起筆(きひつ)」も同じ意味で使用可能です。

「絶筆」も対義語として使える

「絶筆(ぜっぴつ)」も「脱稿」の対義語として使われることがあります。「絶筆」とは、なんらかの事情で原稿を書き終えられず「書くことをやめること」「執筆を中断すること」を表現する言葉です。

他にも「絶筆」には「生前に最後に書いた文章」という意味もあります。作者が亡くなったことで作品が中断した場合は、両方の意味に当てはまることもあり得ます。

まとめ

「脱稿」は「原稿が書き終わること」を意味する言葉です。趣味で小説、漫画などを作成している人も使用でき、「SNSで『脱稿しました』と言っているからプロの作家だ」と勘違いしないように注意しましょう。類語には「校了」や「入稿」、対義語には「起稿」があります。