「漸次」の意味と使い方とは?「暫時」との違いや覚え方と類語も

「漸次(ぜんじ)」とは「時間経過で緩やかに変化する様子」を意味しています。日常会話ではあまり使われないため、使い方が分からない人もいるかもしれません。また「暫時(ざんじ)」と意味や読み方を混同してしまう人も多いようです。意味の違いや、覚え方を紹介します。類語や対義語もあわせて確認しましょう。

「漸次」の意味と読み方とは

「漸次」の意味とは「緩やかに変化していく様子」

「漸次」は、時間経過で緩やかに変化していく様子を表します。人為的に変化・発展させるものにも、自然に移り変わっていくものにも使用可能です。

「漸次」の読み方は「ぜんじ」

「漸次」の読み方は「ぜんじ」です。「ざんじ」は誤読ですので注意しましょう。「漸」を構成する「斬」を「ざん」と読むことから、「ざんじ」と読んでしまうケースが見受けられます。

また、後ほど紹介する「暫時(ざんじ)」と混合している可能性もあるため注意しましょう。

「漸次」の英語表現は「gradually」

「漸次」の英語表現は「gradually」です。長期的にゆっくり変化することを意味します。

他に「little by little(少しずつ)」「step by step(段階的に)」という表現でも漸次のニュアンスが伝えられるでしょう。

「漸次」の使い方と例文

「漸次〇〇する」は緩やかに〇〇すること

「漸次〇〇する」とは「緩やかに〇〇する」ことを意味する表現です。例えば「漸次対応いたします」とは、一度にすべて対応するのではなく少しずつ対応することを表現します。

他にも「漸次増加傾向だ」「漸次減少している」のように使用します。

「漸次的」とは「漸次のような性質・様子」

使用頻度は多くありませんが「漸次的」という表現もあります。ここでの「的」は「そのような性質」や「それらしい様子」という意味を「漸次」に与えています。

使用例は「漸進的発展」や「漸進的改革」です。急激に進めず、順を追って少しずつ目的や理想を実現する際に使用されています。

「漸次書き」は熟語ではなく「漸次+書き」

学校の指導要領に書かれることから「漸次書き」を一つの熟語だと思う人もいるようです。実際には熟語ではなく「漸次」に「書き」を続けた表現で、意味は「少しずつ書き」「だんだんと書き」になります。

「漸次書き」が使用されているのは、学習の目標についての説明箇所です。文字に関する事項に「漢字を読み、漸次書き……」と記載されます。意味を補って簡単に言い換えると「(最初は)漢字を読み、(次に)少しずつ書き……」になると考えられます。

「漸次」を使った例文

  • 気温が下がったことで、商品Aの売り上げは漸次増加している
  • 漸次的な侵攻の結果、戦争はB国の勝利で幕を閉じた
  • 時代遅れの法律は、漸次修正されるべきだと思う

「漸次」と「暫時」の違いとは

「暫時」とは「少しの間」

「漸次」とよく混同される「暫時(ざんじ)」ですが、意味は異なります。「暫時」の意味は「少しの間」です。「暫時休憩する」のように「暫時〇〇する」の形で使用します。「暫時の間」も誤用とはされず「しばらくの間」を意味する正しい表現です。

「『すぐ』ほど短くないが、長いとも言えない時間」を意味しますが、具体的には定まっていません。そのため、話す人によって「暫時」でイメージする長さは変わってきます。

「漸次」と「暫時」覚え方のポイント

「漸次」と「暫時」の意味の違いを覚えるには「漢字」がポイントです。どちらも「斬」という字を含む一文字目に注目しましょう。

「斬」は「切る」と同じ意味で、特に「刀」で何かを切る際に用いる漢字です。「斬」に「さんずい」が付いているため、「刀で斬った切れ目から、水が少しずつ染み込んでいく様子」をイメージします。

「暫」は「斬」に「日」を組み合わせた漢字です。「1日のうちいくらか切り取る」という意味合いで「少しの間」をイメージしてみてください。

「漸次」の類語と対義語とは

「漸次」の類語は「次第に」「だんだん」

「漸次」の類語は「次第に」「だんだん」です。どちらも、少しずつ進行したり緩やかに変化することを意味します。

「漸次」は日常的に使う表現ではないため、相手に意味が伝わらない可能性があります。馴染みがある類語を使った方がやり取りがスムーズになる場面も多いでしょう。

言い換え例
気温が下がったことで、商品Aの売り上げは漸次増加している
気温が下がったことで、商品Aの売り上げはだんだん増えてきている

「漸次」の対義語は「即時」「急激」

「漸次」の対義語は「即時」「急激」です。「即座」は「今すぐ」「短時間」を意味します。「急激」は変化が急なことを表現します。

他に、一度にまとめて行うことを意味する「一挙」も漸次の対義語です。

まとめ

「漸次」は読み方や意味が「暫時」と混同しやすい言葉です。漢字の「さんずい」に注目し、水がじわじわ染み込む様子をイメージすると覚えやすいかもしれません。

会話で「漸次」を使うと意味が伝わりにくいこともあり得ます。「次第に」「だんだんと」のような言葉に言い換えるとよいでしょう。