「月並み」は「平凡」という意味なのですが、似たような意味の言葉に「人並み」という言葉もあります。この記事では、「月並み」の意味と語源にあわせて、「人並み」との違いや他の類語・対義語も紹介します。また「月並み」の使い方も解説しますので、参考にしてみてください。
「月並み」の意味と語源とは?
「月並み」の意味は「ありふれていて平凡なこと」
「月並み(つきなみ)」とは、「ありふれていて平凡なこと」という意味です。新鮮味がないという意味もあり、物事が特に突出することがなく、どこにでもありそうなもののことを指して使います。
「月並み」には「毎月同じように行われること」の意味も
「月並み」には「毎月同じように行われること」という意味もあります。むしろこの意味が本来の意味であり、「毎月同じように行われること」という意味から上記の「ありふれていて平凡なこと」という意味が生まれました。
この意味の「月並み」を言い換えるなら「月ごと」や「毎月」、または「月次(げつじ)」とも言い表せるでしょう。また、この意味での「月並み」は「み」を省略して「月並」と書き「つきならび」と読むこともあります。
「月並み」は「月並」と表記することも
「月並み」には、送り仮名の「み」を省略した「月並」という書き方もあります。「月並み」と「月並」ともに同じ意味で正しい表記です。
語源は正岡子規の「月並俳句」という皮肉
「月並み」という言葉の「ありふれて平凡なこと」という意味の語源は、明治時代の俳人で歌人であった正岡子規が、旧派の伝統的な排風を「月並俳句」と批判したことからだと言われています。
かつて俳諧における旧派は月に1度、「月並会」などと呼ばれる句会を開いていました。この「月並」の意味は、「毎月」や「月ごと」という意味です。
ところが、正岡子規は旧派の俳句が陳腐であるとけなして、「月並会」をもじって彼らの俳句を「月並み調」や「月並俳句」と呼んだのです。それが由来となり「月並み」に「平凡な」という意味が生まれました。
「月並み」の使い方と例文
「月並み」はあまりいい意味では使わない
「月並み」は他と比べて平凡という意味から、ネガティブな印象を与える言葉です。「特別なところがない」「たいしたことではない」と言った意味で使われることもあれば、最終的には「つまらない」という意味で使われることもあります。
そのため、ごく普通だという意味で「月並み」を使うと、相手が不快に思うことがありますから、そのような場合には「月並み」の類語である「人並み」を使った方が角が立たないでしょう。
「月並みですが」と言ってお土産を渡す
相手を訪問するときや旅先から帰ってきたときに、お土産を渡す前の常套句として「月並みですが」が使われます。「平凡なものですが」という意味の謙遜表現で、自分をおとしめて相手に敬意を表しています。
(お土産を渡しながら)月並みですが、お召し上がりください
「月並みですが、末永くお幸せに」は結婚式で使われる
「月並みですが、末永くお幸せに」という言い回しは、結婚式での新郎新婦へのあいさつやスピーチでよく使われます。
「取り立てて特別なお祝いの言葉ではありませんが、いつまでも幸せにいてほしい」という意味の表現です。「末永くお幸せに」というありきたりな表現しか思いつかなくて申し訳ないという言い回しにすることで、相手に幸せになってほしいという願望を伝えています。
「月並みな意見」のように「ナ形容詞」で使う
「月並み」は名詞を修飾するときに「な」をつける「ナ形容詞」の形でよく使われます。例えば、「月並みな意見」や「月並みな表現」のように「月並み」に続く名詞に、ごくありふれていて平凡だという意味をつけ足しています。
「月並み」と「人並み」の違いと使い分け
「人並み」とは「世間の人と同程度」
「人並み」とは「世間の人と同じくらい」または「同程度」という意味です。「世間並(せけんなみ)」という意味で使われます。
「月並み」との違いはネガティブな意味があるか
「月並み」と「人並み」の違いは、ネガティブな意味合いが含まれるかどうかに違いがあります。「月並み」と「人並み」のどちらにも、周囲とあまり変わらないという意味合いで「一般的」という共通の意味があります。
ただし「月並み」には、「一般的であるから平凡、または新鮮味がない」といったネガティブな意味合いが含まれています。一方「人並み」は、周囲と変わらないという意味でとどまりネガティブな意味合いは含まれていません。
どちらも「一般的」という意味ですが、「月並み」にはネガティブな意味が含まれていて、「人並み」にはネガティブな意味が含まれていないという違いがあります。
「月並み」と「人並み」の使い分け方
例えば、「月並み」を使い「ピアニストとしての実力は月並み」と言えば、その人は「ピアニストとしてそれほど優れていない」という意味になります。
「ピアニストとしての実力は人並み」とした場合は、「ピアニストとして特に優れているわけではないが、悪いわけでもない」といった意味になります。
ある物事を否定的にとらえているときには「月並み」を使い、特に否定的な意味を含まないときには「人並み」を使うようにしましょう。
「月並み」の類語や対義語とは?
「月並み」の類語は「凡庸」「決まり切った」
「月並み」の類語には「凡庸(ぼんよう)」や「決まり切った」などがあります。
「凡庸」とは「平凡でありきたりなこと」という意味です。「月並み」と違う点は、他と比較しない状態で「優れているところがない、際立ったところがない」という場合に使われます。
「決まり切った」とは「いつもと同じ状態」という意味の言葉で、「決まり切った言い方」のように使います。「月並み」のように他と変わらないという意味で使っているのですが、平凡といった意味は含まれません。単に変わらないという意味合いで「決まり切った」が使われます。
- 優秀な人こそ、凡庸であることに憧れるらしい
- 決まり切ったトレーニングには飽きてきた。新しいエキササイズを取り入れよう
「月並み」の対義語は「風変り」
「月並み」の対義語には「風変り(ふうがわり)」という言葉があります。
「風変り」は物事の様子や行動、特徴が他とは違って普通でないという意味です。他と比べて違うという意味合いで使われることもありますが、違うために変わっているという意味合いも含まれています。
アーティスト志望の彼の友人は、風変りな人が多い
「月並み」の英語表現とは?
「月並みな」は英語で「mediocre」
「月並みな」を英語で言い表すなら「mediocre」でしょう。「mediocre」とは「平凡な」という意味のほかに「あまり良くない」というネガティブな意味合いもある形容詞です。
「月並み」の英語例文
- He is a mediocre businessman.
「彼は月並なビジネスマンだ」 - Only ordinary compliments come out.
「月並みな褒め言葉しか出てこない」
まとめ
「月並み」とは「ありふれて平凡なこと」という意味の言葉です。「月並みですが」のように謙譲的に使われるときは相手に敬意を示す表現になりますが、相手の能力や特徴に対して「月並み」と表現するとネガティブな意味合いになります。シチュエーションに気をつけて使いましょう。
彼のバスケットボールの実力は月並みなので、プロにはなれないんじゃないかな