「赦す」の読み方は「ゆるす」で、罪を責めないことを意味します。常用漢字ではないため一般的には「許す」と表記しますが、聖書の引用では「赦す」で統一する考えもあるようです。「赦す」と「許す」の違い、類語「恕す」や語源も紹介します。
「赦す」の意味と読み方
「赦す」の意味は「罪・過ちを責めない」
「赦す(ゆるす)」の意味は「罪や過ちを責めない」です。あまり使用されませんが「義務を免除する」という意味もあります。
辞書では「許す」として説明されることが多いようです。「許す」が持つ複数の意味のうち、上記2つに「『赦す』とも書く」と書き添えられています。
「赦す」の語源は「緩ます」
「赦す」の語源は「緩ます」です。固く縛ったものを緩くすることから「緊張をとく」「態度を緩和する」などの意味になり、そこから派生して「赦す」が成立したと考えられています。
ちなみに「赦す」は、「許す」と共通の語源を持っています。
「赦す」の英語表現は「forgive」
「赦す」の英語表現は「forgive」です。罪を赦すことや、容赦することを意味します。
「fogive」の成り立ちは「for(完全に)」と「give(与える)」を合わせたものだとされています。「全てを与える」ことが、怒りや憎しみを静めて「赦す」ことになったそうです。
「赦す」と「許す」の違い
「許す」の主な意味は「認める」
「許す」の主な意味は「認める」「許可する」です。相手の要求を「不都合ではない」と許可することを意味します。相手のやりたいように任せたり、時間などの自由を認めたりすることも「許す」で表現可能です。他にも「気を許す」のように、警戒を緩めて打ち解けることを意味します。
「許す」は「赦す」と同じ意味も持っており、「『赦す』は意味が限定的」とも言えるでしょう。
「赦す」と「許す」の違いは罪の有無
「赦す」の意味の違いは「罪の有無」に注目すると分かりやすいでしょう。「赦す」がよく使われる場面は「罪や過ちを責めない場面」です。犯罪やそれに近い大きな過ちを「ゆるす」場合に「赦す」と表記できることになります。
「認める・許可する」「警戒をとく」などの意味を持つのは「許す」だけです。「罪が無関係なので『赦す』は使わない」と考えると、スムーズに覚えられるかもしれません。
「赦す」は常用漢字ではない
一般的に「赦す」という表記は使わず「許す」と表記されることが多いです。「赦す」は常用漢字(公で使う漢字の目安)に含まれておらず、特に新聞や教科書では常用漢字のみを使います。
ただし、他人の文章を訂正するような場面では、意味の使い分けや文学的表現のために「赦す」を使っている可能性があります。無断で「許す」に修正すると作者の意図が変わってしまうため、注意しましょう。
キリスト教や聖書に関しては「赦す」を使う
キリスト教の話題や聖書の引用では「赦す」で統一したほうがよいとする意見もあります。キリスト教では人間の罪の概念が重要なため「赦す」の表記を使わなければ、意味が正しく伝わらないことが多いためです。
例えば「神の裁きにゆだねて、相手の罪を赦す」という内容で、「赦す」を「許す」とした場合を考えてみましょう。「赦す」の場合は「相手の罪を責めない」というニュアンスになりますが、「許す」とした場合「相手の罪を認める、許可する」という意味に受け取られる可能性があります。
「赦す」「許す」の使い分けの例文
- 「赦す」「許す」どちらでも良い例文
あんな残酷な事件を起こした犯人を赦していいのだろうか
(犯人の罪・過ちをゆるす文脈のため) - 「赦す」を使ったほうが良い例文
キリスト教は「赦しの宗教」と説明されることもあるらしい
(キリスト教の「赦し」の話題のため) - 「赦す」に言い換えられない例文
私の両親は心配性で、子どもだけで隣の県へ遊びにいくことを許してくれない
(「許す」を「認める・許可する」の意味で使っているため)
「赦す」の類語
「赦す」と同じ読み方の類語「恕す」「宥す」
「赦す」には「許す」以外にも、同じ読み方の類語があります。「恕す」や「宥す」です。「恕す」は相手を寛大に扱って責めないこと、相手を思いやって大目にみることを意味します。
「宥す」とは、大目に見て罪を見逃したり、失敗を大らかに受け止めて責めないことを意味します。ネガティブな感情を和らげる「宥める(なだめる)」と同じ漢字だと意識すると、意味を覚えやすいかもしれません。
「赦す」の類語になる熟語は「赦免」
「赦す」の類語になる熟語は「赦免(しゃめん)」です。罪・過ちを赦すことを意味します。「赦免」と名詞として使ったり「赦免する」「赦免される」の形で使ったりします。
まとめ
「赦す」とは「罪や過ちを責めない」という意味です。常用漢字の「許す」の方が使用できる場面が多いため、「赦す」という表記を使う頻度は高くありません。しかし、文学的な表現や宗教の話題ではよく見られますので、意味の違いを把握しておきましょう。