「固執」の意味とは?使い方と類語「執着」との違いや対義語も解説

臨機応変さが求められることも多いビジネスでは、「固執した考えは捨てるべきだ」と叱責されることもあります。この「固執」は「こしつ」とも「こしゅう」とも読みますが、どちらが正しいのでしょう。「固執」の意味と使い方について、例文で詳しく解説します。また、「執着」との違いやその他の類語・対義語も紹介します。

「固執」の意味と読み方とは

「固執」の意味は「自分の意見を通し妥協しないこと」

「固執」と「自分の意見を主張して、あくまでも譲らないこと」という意味です。「妥協しないこと、意見や態度を頑なに変えないこと」を指します。自分の考えや立場にこだわることを意味する熟語です。

「固」という漢字には「かたい、しっかり」などの意味が、「執」には「あつかう、こだわる、とらわれる」などの意味があります。そこから「自分の考えにこだわり、譲らない」という意味が推察できるでしょう。

一般的な読み方は「こしつ」元々は「こしゅう」

「固執」はしばしばその読み方も話題に上ります。「固執」は、元々は「こしゅう」と読まれていました。しかし、時代の変化とともに現代では「こしつ」という読みが一般的です。

「こしゅう」と読むのも間違いではありませんが、慣用読みとして定着している「こしつ」に合わせた方が無難です。

「固執」の使い方と例文

「固執する」「固執しない」と使うことが多い

「固執」は「固執する」「固執しない」の表現で用いられます。「自分の考えに固執する」と使うと、自分の考えを絶対に曲げない様、自分の考えにこだわり聞く耳を持たないことを意味します。

例文
  • 自分の考えに固執していると大事なものを見失うぞ。
  • あれだけの手腕がありながら、自分の考えに固執せず人の意見に耳を傾けるとは立派だ。

「固執」はポジティブな意味合いでも使える

「固執」は「自分の意見を曲げない」という態度を否定的に述べる際に使うことが多いですが、「固執」という熟語そのものにネガティブなニュアンスはありません

そのため、たとえば「もっと自信を持ち、自分の意見に固執してもよい」「開発では固執して諦めない姿勢が大切だ」などの言い回しも可能です。

「固執する人」は頑固で融通がきかない人

「固執する人」とは端的にいうと、頑固な人、融通がきかない人のことです。自分の意見、考えにこだわりすぎていて、周りの意見に耳を貸さない人を指します。

また、自分の考えに「固執」するその背景にはプライドの高さが隠れていることもしばしばです。プライドの高さが邪魔をして、周囲の意見を受け入れることができないという人も多いでしょう。

「固執する」の使用例からも分かるように、「固執する人」も悪口、ネガティブな表現として用いられるのが一般的です。ただし、自分の意見にこだわるその姿勢は確固たる信念としてその人を支えることもあります。

「固執性」は心理学・カウンセリング用語

「固執性」とは単に「固執した性格」や「固執する人」を指すのではなく、特に心理学やカウンセリングにおいて用いられる表現です。

些細なことにこだわり、何かを始めると止められるまでやり続ける様、あるいは止められてもなおやり続ける様を指します。状況に合わせた変更ができず、手順や習慣以外のことがらや新しい問題には対応できないのが特徴とされています。

「固執」の類語(類義語)

「固執」と似た意味の表現は「執着」

「固執」と似た意味を持つのは「執着(しゅうちゃく)」です。「執着」とは「心が惹かれるものから離れられないこと」を意味します。

「執念」と「固執」どちらも「離れられない、こだわり」という意味では共通していますが、「固執」は自分の持つ考えや立場などに対して使う点がポイントです。一方の「執着」は自分が心惹かれる「自分以外の何か」に対して使う表現で、たとえば「お金に執着する」のように使われる点が異なります。

「執念」も「固執」の類語

「執念(しゅうねん)」とは「物事にとらわれた心、執着してはなれない心」を意味します。深く思い詰めたような心情を指すのが特徴で、「執念を持って取り組む」「執念でやり遂げる」などと使用することができます。

「固執する」は「こだわる」に言い換える

「固執する」という表現は「こだわる」に言い換えることができるでしょう。「こだわる」とは「強く思い入れる、執着する」という意味で、「自分の考えに固執する」は「自分の考えにこだわる」と言い換えることができます。

なお、「こだわる」は「とことん追求する」という良い意味合いで使われることも多く、「素材にこだわる」「こだわりぬかれた逸品」などの使用も可能です。

「固執」の対義語とは

「固執」の対義語は「譲歩」「妥協」

「固執」の対義語には「譲歩」や「妥協」が挙げられます。「譲歩(じょうほ)」とは、「自分の意見を押し通さず、折り合いをつけること」という意味です。「妥協」は「意見が対立している場合に互いに譲り合い、解決すること」を意味します。

いずれも「自分の意見を通さずに、譲る」というニュアンスにおいて、「固執」とは対義的ということができます。なお、「譲歩」が自分が譲り歩み寄るという意味であるのに対し、「妥協」は互いに譲り合い、歩み寄るという意味を持つ点で微妙にニュアンスは異なります。

「無頓着」も対義語として使える

「固執」と反対の意味を持つ単語では「無頓着」も挙げられます。「無頓着」とは「気にかけないこと、こだわらないこと」を意味する表現です。「こだわる」という意味合いを持つ「固執」とは対義的です。

「固執」の英語訳

「固執」の英語は「stick to」「cling to」

「固執する」は英語では「stick to」や「cling to」を使用します。「stick」も「cling」も「くっつく」という意味を持ち、「こだわる、固執する」というニュアンスで使うことができます。

たとえば「He sticks to his own idea.」は「彼は自分の考えに固執している」という意味、「He always clings to his own opinion.」は「彼はいつも自分の意見に固執する」という意味になります。

「persistent」を使った英語訳も

「固執」の和訳では「persistent」を使うこともあります。「persistent」には「しつこい、頑固な」などの意味があり、「Do not be so persistent.」で「そう固執しないで」という和訳が可能です。動詞「persist(しつこく主張する、こだわる)」を使って英訳することもできます。

例文

He always persists in his belief.
彼はいつも自分の信念を曲げない(固執している)

まとめ

「固執」とは「自分の意見を押し通し譲らないこと、妥協しないこと」を意味します。「こしゅう」と読むことも可能ですが、一般的な読み方は「こしつ」です。

「固執」という熟語そのものにはネガティブなニュアンスがあるわけではありませんが、「固執する人」のように頑なな態度を意味するネガティブな文脈で使用されることが多いのも特徴です。