「察するに~だろう」と推察したり、「心中お察しします」とお悔やみの言葉に添えたり、「察する」という表現はビジネスシーンでも耳にします。ここでは「察する」の意味と使い方を例文で解説するとともに、敬語での活用例も紹介します。また「察する」の類語や英語訳についてもあわせて解説しましょう。
「察する」の意味とは
「察する」とは「事情を推察すること」
「察する(さっする)」とは、「事情などを推察する、おしはかる」という意味です。相手が公にしていない事情などを、表面にあらわれた様子から感じ取ることを指します。また、感じ取った事情を理解する・了解するという意味合いも含む表現です。
「気持ちを推し量る、同情する」という意味も
「察する」には物事の事情だけでなく「相手の気持ちをおしはかる、同情する」という意味もあります。「相手の気持ちを思いやる」という意味で「察する」と使うことも可能です。
このほか「察する」には「深く調べる」という意味もありますが、この意味で使用されることはあまり多くありません。「事情や気持ちをおしはかって理解する、思いやる」という意味を覚えておきましょう。
「察する」の使い方と例文
「心情を察する」「事情を察する」と使う
「察する」は「心情を察する」「事情を察する」のように相手の気持ちや状況を考慮する際に用いることが多いです。たとえば「心情を察する」というと「気持ちをおしはかり、汲み取る」というニュアンスに、「事情を察する」と使うと「背後にある事情を読み取る、感じ取る」といった意味合いになります。
「心情を察する」の意味では、「気持ちを察する」「心中を察する」「胸中を察する」などの言い回しでも用いられます。
「察するに~だろう」「察するところ~だろう」
「察する」は単に「~を察する」だけでなく、「察するに~だろう」「察するに~だろう」の表現で使うことも多いです。「だろう」もまた推量の意味を持つ表現で、事情や心情を推し量って何か考えを巡らせるニュアンスになります。
- 事情を察するに今回の受注は難しいだろう
- 察するところ何か隠しているのであろう
- 察するところ彼女に非はないだろう
「察するに余りある」とは予想以上であること
「余りある」の意味は「十分である、十分に余裕がある」のほか、「どんなに~しても十分ではない」があります。そこから、「察するに余りある」は「気持ちや思いが強く、どんなに汲み取ろうとしてもどれほどか想像しきれない」という意味になります。
端的に言うと、「自分が推測できる範囲では及ばない程、深い心情だろう」と、程度の甚だしさを述べる際に使用する表現です。たとえば、「彼女の悲しみは察するに余りある」とはその悲しみが非常に深く、並大抵のものではないことを表しています。
「察することができない」は状況がうかがえない様
「察することができない」とは、状況がうかがい知れない様、心情が推測できない様を表します。
たとえば「情報が少なすぎて察することすらできない」というと「情報量が少ないために状況がうかがい知れない様」を言い表しています。
「察する力」はビジネススキルのひとつ
「察する力」は対人スキルやビジネススキルのひとつとして用いられる表現です。たとえば、コミュニケーションの相手がどう感じているかを「察する」ことは、相手に合った行動をとる第一歩となります。
「察する力」が高い人というのは、コミュニケーションや少ない情報からニーズを汲み取ることが得意です。一方で、自分では「察している」つもりでも実際は誤った解釈をしている場合があります。「察する力」はそうした誤りにも早く気づき、修正する力も含まれると言えるでしょう。
「察する」の敬語表現とは
「お察しください」とは理解を求める丁寧語
「察する」を敬語で使う例のひとつが「お察しください」です。「お察しください」は、詳しくは言わなくともこちらの事情を理解してください、と伝える際の表現です。
ご都合もおありかとは存じますが、こちらの事情もお察しください
この場合、相手が「察する」ことを接頭辞「お」をつけて表し、行動を促す丁寧語「~してください」を加えた表現ということができるでしょう。
「お察しします」とは相手の事情に対する配慮
一方で相手の事情に配慮する際には「お察しします」と使います。この場合の接頭辞「お」は謙譲の意味にとることができます。
たとえば同業者同士の苦労話で「お察しします。**の試験勉強には私も苦労しました」などと使うこともあれば、「大変なご苦労ですね、心中お察しします」と同情を示す言い回しでも用いることも可能です。
「お察し申し上げます」と謙譲語を使った表現も
「お察しします」は「お察し申し上げます」と謙譲表現を伴って使われることもあります。より丁寧な印象になります。
この「お察し申し上げます」は、「お察しします」とあわせて相手に不幸や悲しい出来事があった際に使用されることも多いです。
この度は、心中お察し申し上げます
「察する」の類語とは
「察する」の類語は「推測する」
「推測する」とは「ある情報や事柄に基づき、おしはかって考えること」を意味します。特に、現在の課題点や今ある状況について考える際に使うことが多く、「彼の心情を推測する」と使うと「なぜそう思ったのか原因を考える」というニュアンスです。
一方で「彼の心情を察する」とした場合、同じ「推し量って考える」というニュアンスでも「気持ちに同情し、そっとしておく」という意味にもとれる点がポイントです。「察する」を使った方が、気持ちに寄り添うような意味が含まれます。
「推し量る」「見越す」も類語として使える
「察する」と似た意味の表現では「推し量る」も挙げられます。「推し量る」もまた「推測する」という意味の表現で、漢字では「推し測る」と書くこともあります。
「見越す」とは「将来に起こることを予測する」という意味です。「大雨を見越して備える」のように、予測をたてて何らかの対策をとる場合に使うことが多いです。
「感じ取る」とは「雰囲気から察すること」
「感じ取る」とは「雰囲気や表情などから察する、ある感じを受け取る」という意味です。たとえば「彼は不穏な空気を察した」は「不穏な空気を感じ取った」と言い換えることができるでしょう。
「察する」の英語訳とは
「察する」の英語訳は「guess」「imagine」
「察する」の英語訳では「guess(推測する、予測する)」や「imagine(想像する)」を使用します。たとえば「You have guessed right.」は「君の察した通りだ」と和訳することができます。
また「You can imagine her grief.」は「彼女の深い悲しみが想像できる=彼女の悲しみは察するにあまりある」と和訳できるでしょう。
「心中お察しします」の英語訳は「sympathize」
お悔やみの言葉として述べる「心中お察しします」は「sympathize」を使うことが多いです。「sympathize」には「同情する、共感する」などの意味があります。名詞「sympathy(同情、思いやり、同感)」を使った英語表現も可能です。
- I deeply sympathize with you.
- My sympathies are with you.
まとめ
「察する」とは、相手が公にしていない事情を推察する、思いやるという意味です。「事情を察する」や「事情を察するに~だろう」の言い回しや心情に対して「察するに余りある=気持ちの度合いが強く到底想像も及ばない」という表現でも用いられます。
敬語では「お察しください」や「お察しします」の表現でよく使い、お悔やみの言葉に「心中お察しします」と添えることも多いです。
彼の胸中を察すると無理強いはできない