「取り急ぎ」とは「慌ただしく物事を処理する行為」という意味ですが、メールなどの文末で「取り急ぎご報告まで」や「取り急ぎお礼まで」などの表現として使われることが多い言葉です。
この記事では、「取り急ぎ」とはそもそもどういう意味なのか、そして「取り急ぎ~まで」の意味や正しい使い方についても、例文を用いながら解説します。
「取り急ぎ」の意味とは?
「取り急ぎ」とは「慌ただしく物事を処理すること」
「取り急ぎ(とりいそぎ)」とは、「さしせまった状況の中で、慌ただしく物事を処理すること」という意味です。
また、さしせまった事について急いで取りかかることを「取り急ぐ、取り急いで」と表現しますが、この行動を一言で言い表すのが「取り急ぎ」です。「取り急ぎの手当を行う」「取り急ぎ重要な要件のみ伝える」などと使います。
「間に合わせの処置」「大急ぎで」という意味も
「取り急ぎ」は、「間に合わせの処置」あるいは「取るものも取りあえず」というニュアンスで使われます。
たとえば、怪我をした人に対して「取り急ぎの手当てを行う」という場合は、のちほどきちんとした手当を行うことを前提としながら、間に合わせの処置を急いで行う、という意味合いです。
一方で、「取り急ぎ入院する」という場合は間に合わせの処置として入院するのではなく、「取るものも取りあえず入院する」というニュアンスがあります。「取るものも取りあえず」とは、用意もそこそこに大急ぎでという意味です。
「取り急ぎ」の基本的な使い方とは?
「取り急ぎ~して、のちほど正式に対処します」の意味
ビジネスメールの文末の挨拶として、「取り急ぎご報告まで」「取り急ぎご連絡まで」と書く場合があります。これは、「最終的に仕上げた報告や連絡をする前に、まずは現時点でお知らせできる重要な内容を取り急いで報告します」という意味を伝えるものです。
加えて、「これはあくまでも先んじての取り急いだ連絡であるため、正式な報告はのちほど改めて提出します」という意味を暗に含んで伝えています。
つまり、「取り急ぎ~まで」との結びのあいさつをした場合は、そののちにきちんとした形のメールを入れることが一連のマナーであるのです。
「取り急ぎ~まで」と文末に使うのは失礼ではない
文末に「取り急ぎ~まで」と書いて終わるメールは、相手に失礼なのではと考える人もいるようです。しかし、「取り急ぎ~まで」という表現は、書簡の締めの言葉として伝統的に使われてきたもので、失礼な表現ではありません。
しかし、「まで」で唐突に終わる締めの言葉に違和感を覚える人がいるのではないでしょうか。この表現がなぜ「まで」で終わる短い表現なのかには、ちゃんとした理由があります。
相手にとって有益だと思われることについて、まずは取る物も取り敢えず、急いで要点のみをお知らせするという気持ちを示すものであり、あえて短い表現にすることで、「あなたのために急いでお知らせしていますよ」ということをアピールしているのです。
敬語をあえて省略して急いでいることを表す
「取り急ぎ~まで」という結びのあいさつは、目上の人や上司に対しても使うことができます。あえて敬語や挨拶の言葉を省くことで、「急いで大切なことをお伝えしています」とアピールしている体裁だからです。
加えて、自分の一方的な要件を伝えているのではなく、相手の利益となる内容について急いで伝えるものであるため、敬語を省くと同時に挨拶も省略して簡素な表現としています。
「取り急ぎ」のビジネスでの使い方と例文
「取り急ぎご連絡まで」の使い方と例文
「取り急ぎご連絡まで」は、急いで連絡したいことがある場合によく使われます。ポイントは、詳細が決定する前の連絡で使うということです。
「取り急ぎご報告まで」の使い方と例文
「取り急ぎご報告まで」は、急いで報告すべきことがある場合に締めの言葉として使います。例文のように、短い文章でまとめることがポイントです。
緊急アンケートを実施しましたので、〇日までに報告書を提出する予定です。
取り急ぎ進捗のご報告まで。
「取り急ぎメールにて失礼いたします」のような表現も
あえて敬語を省くことで、相手の立場に立っていることを強調するのが「取り急ぎ~まで」という表現ですが、目上の人に対しては使いにくいと感じる場合もあります。
その場合は、文末を丁寧な表現にして使うとよいでしょう。たとえば、「取り急ぎメールにて失礼いたします」や「取り急ぎご報告(ご連絡)申し上げます」のような表現があります。
「取り急ぎ」のお礼メールでの使い方と例文
「取り急ぎお礼まで」はあとで正式にお礼をする前提
「取り急ぎご報告まで」とともにしばしば使われる表現に「取り急ぎお礼まで」があります。こちらも伝統的に書簡の締めの言葉として使われてきたものが、メールなどでも使われるようになった表現です。
ただし、手紙でやりとりしていた時代は、重要なことは実際に会って話をする、という習慣がありました。そのため、「取り急ぎお礼まで」という簡単な連絡をはがきや簡便な書簡で行った後、改めて実際に相手の家を訪ねるという一連の行動が暗黙のマナーであったのです。
つまり、「のちほど正式にお礼に伺いますが、まずは急いでお礼の気持ちを伝えたい」という意味で使うのが結びの言葉「取り急ぎお礼まで」です。
「まずは取り急ぎお礼申し上げます」の敬語表現も
「取り急ぎお礼まで」を敬語で表現する場合は「まずは取り急ぎお礼申し上げます」となります。
しかし、のちほど改めて正式なお礼に伺うことを前提として使うのが「取り急ぎお礼まで」という結びの言葉であるため、「まずは取り急ぎお礼申し上げます」とした場合にも正式なお礼を前提としていることにかわりはありません。
取り急ぎのお礼をしたあとは、あくまでも正式なお礼をすることが一連のマナーであることを覚えておきましょう。
「取り急ぎお礼まで」を目上に使うときの注意点
「取り急ぎお礼まで」の結びの言葉は、のちほど正式にお礼に伺うという前提の上で使われてきたものでしたが、現代ではその前提がないままに取り急ぎのお礼のみで済ませてしまっています。そのため、目上の人などに用いるのに違和感を持つ人もいるのではないでしょうか。
目上の人などに、急いでお礼の気持ちをメールで伝えたい場合は、「略儀ながら、メールにてお礼を申し上げます」という表現がよいでしょう。
さらに丁寧にする場合は、「本来ならば直接お伺いすべきところ、誠に略儀ながらメールにてお礼を申し上げます」と、直接伺うことができないことを詫びる文言を入れる形もあります。
「取り急ぎ」の類語や言い換え方とは?
「取り急ぎ」の類語は「とりあえず」
「さしせまった状況の中で、慌ただしく物事を処理すること」という意味での「取り急ぎ」の類語には「とりあえず」があります。
慌ただしく物事を処置する「取り急ぎの処置を行います」との表現は、「とりあえずの処置を行います」と言い換えることができます。
ビジネスメールでは「まずは」に言い換える
先に紹介した「とりあえず」の表現は、「間に合わせの処置」という意味があるため、状況によっては手抜きの処置という印象を持たれてしまう可能性があります。
そのため、「大事な要件のみ急いでお知らせします」という意味でビジネスメールなどで使う「取り急ぎ」の言い換えにおいては、「まずは」の方が適切です。
まとめ
「取り急ぎ」とは、「慌ただしく物事を処理すること」という意味です。特に手紙の結びの言葉として伝統的に使われてきたのが「取り急ぎ~まで」という使い方で、あえて敬語や挨拶の言葉を省いて短く表現し、取るものもとりあえず早く連絡したという気持ちを表しています。「慌ただしく物事を処理すること」という意味とはニュアンスが異なります。
次の定例会議は中止となりました。
開催日時については決まり次第ご連絡いたします。
取り急ぎご連絡まで。