「善処」の意味と読み方とは?敬語の使い方や類語と対義語も紹介

「善処」は、ビジネスシーンや顧客対応の場面などでよく使われる言葉です。主に「善処します」という言い回しをすることが多いですが、敬語表現を用いる時はどのようにすればよいでしょうか。

ここでは「善処」の意味と読み方の他、言い換えのできる類語や対義語また英語表現についても紹介します。

「善処」の意味と読み方とは?

「善処」の意味は「物事を上手に処理すること」

「善処」の意味は「物事を上手に処理すること」となります。つまり、状況や相手の事情を考慮してに適正な対処をすることを表す言葉です。前向きに物事を対処する姿勢を示し、置かれた状況や状態に合わせて適切な処理を行うことを「善処」といいます。

もともと「善処」とは「善いを処する」ことです。「善い」とは世間の規範や道理などを把握し、道徳的に正しい行いをすることを意味します。また「処する」とは、ある状況に身を置いて、それに応じて物事を行うことを意味します。つまり、正しいことをするために、様子を見極めながら対応するというのが「善処」の意味するところです。

「できる限り努める」というニュアンスが強い

「善処」は物事上手に処理したり、状況に応じて適切に対応することです。しかし、ここには「物事を対処するように努力する」という意気込み自体は強いものの、「できる限り努める」という曖昧なニュアンスが含まれています。

つまり「約束はできないが頑張る」「不安だが全力を尽くす」といった意味合いでも使われることがあります。

たとえば、仕事でクレームを処理する時や、取引先から厳しい要望を受けた時「善処する」という表現を用いるとすれば、それは「できるだけ努力して対応していく」という意味となります。基本的に「善処」は相手に対して「好意的に対応する」ことを表しますが、あくまで「そのように努力をする」というニュアンスが強いことを理解しておきましょう。

「善処」の使い方と敬語表現は?

「善処する」はビジネスでよく使う表現

「善処する」は「ビジネスシーンでは欠かせない言葉の一つです。顧客とのやりとりや取引先とのビジネスメールなどで「適切な対応を取らせていただきます」「上手に対応いたします」という意図で、謙虚でかつ前向きな気持ちを伴って使うことができます。

相手の意向や状況を把握し、物事や問題を正しく対処することは、ビジネスでは暗黙の了解といっても過言ではありません。たとえば、依頼された内容に対する返事や契約の価格交渉など、「善処する」を使うシーンはたくさんあります。

「善処します」は前向きな姿勢を表す

「善処します」はビジネスでよく使う言葉の一つで、相手からの問いかけや希望などに対して「前向きに対応します」「誠意を尽くします」という好意的なニュアンスで使われます。トラブル解決や課題改善のシーンで用いることが多いです。

顧客や取引先とのやりとりで、取り組みへの前向きな姿勢を表すことも可能でしょう。

「善処する」の敬語表現は「善処いたします」

「善処する」をビジネスシーンで使う場合、丁寧語で「善処します」または敬語表現で「善処いたします(致します)」と表現するとよいでしょう。

相手に返事をする場合
  • 善処を尽くします
  • 善処する所存でございます
  • 善処するように努めます
相手に善処を求める場合
  • 善処して頂きたいと思っております
  • 善処を希望しております
  • 善処していただければ幸いです

「善処してください」と依頼する場合も

「善処」は上手に物事を処理してもらえないか、上手く対応してもらえないかなどを相手に相談する時にも使われます。

たとえば、トラブルやミスがあった時、相手に対して謙虚に「善処してもらえませんか?」と頼むこともあります。この時、話し手には「ご迷惑をおかけしますが、何とか対応してもらえると助かります」といった気持ちが込められています。

また、気難しい取引先の役員や社長を迎えて接待をする場合、店側に「大切なお客さまなので、善処をお願いします」と、上手にもてなして欲しいという旨を伝えることもできます。

「善処する」という返事の注意点

相手が「善処します」と返事をした時、「間違いなく対応してくれる」「ただちに処理してくれる」と解釈してしまうのはやや危険でしょう。

状況にもよりますが「善処します」という言い回しには、「できる限り努力しますが、確約はできません」「頑張りますが、ご期待に添うかわかりません」といった曖昧なニュアンスが含まれているからです。

「必ず対応してくれるかどうか」「いつ対処してくれるのか」などを確認したい場合は、丁寧に具体的な答えを求めるようにしましょう。

「善処」の類語とは?

「対応」とは「状況に合わせて行うこと」

「対応」とは「状況に合わせて物事を行うこと」を意味します。周囲の様子や相手の事情などを考慮し、見計らって事をすることを表します。つまり「対応」は相手の話をただ聞いたり、頷くだけではなく、状況に合わせて相手のために行動をすることです。

「取り計らい」とは「物事が上手に進むようにすること」

「取り計らい」とは「物事が滞りなく進むように手段をとること」という意味があります。仕事や活動などがスムーズに進行するように手だてすることを表し、「取り計らう」ともいいます。

「取り計らい」の「計らい」は「考えや状況に合わせて適切に処理をする」という意味です。純粋に物事を片づけていくということではなく、さらに深く「相手の考えや状況を考慮して処理していく」ことを指します。

「融通」とは「上手く運ぶようにする」

「融通(ゆうづう)」とは「物事が上手く運ぶこと」を表します。問題なく事が進むよう調整したり、スムーズに用立てをすることです。「融通を利かせる」「融通が利く」というように使われ、状況に応じで便宜を図り、何とか上手く物事を取り計らうことを指します。

「融通」には、やや無理をきいてもらうというニュアンスがあるため、相手にお願いする際は強引な印象を与える場合もあります。

「善処」の対義語とは?

「おざなり」とは「いい加減な言動」

「おざなり(お座成り)」とは「いい加減な言動」を意味します。間に合わせでその場を逃れようとすることを表します。そのため「おざなりにする」と、粗末でおろそかな結果を招いてしまうことがあります。

「仕事をおざなりにする」「おざなりな行動」などと言ったりしますが、どちらも「適当で無責任な」というニュアンスで使われます。そういった背景からも「善処」とは反対の意味を持つ言葉だと言えます。

「なおざり」とは「無意識におろそかにする」

「なおざり」とは「無意識に物事をおろそかにする」という意味があります。「おざなり」と非常に似たニュアンスがありますが、「なおざり」は「無意識のうちに」、「おざなり」は「意識的に」に、物事をいい加減にしてしまうことを意味します。

たとえば「家事をなおざりにした」は「わざとではなく、うっかり家事をおろそかにした」という意味で、「家事をおざなりにした」となると「意識的に家事をおろそかにした」となります。このように「なおざり」も「善処」と反対の意味があります。

「お茶を濁す」とは「その場しのぎでいい加減」

「お茶を濁す」とは「物事をその場しのぎで、いい加減にすること」を意味します。つまり、その場をごまかして適当に取り繕うといった意味で使われます。自分の立場的に良くなかったり、都合の悪い状況でいい加減なことを言ったりして、その場をあしらうことを「お茶を濁す」といいます。

「お茶を濁す」も「善処」と反対のニュアンスを持つことわざとして活用できます。

「善処」を英語で言うと?

「善処」は英語で「cope with」

「善処」を表す英語フレーズは「cope with」です。「cope with」は「上手く対応する」「上手にやる」といった意味があり、主に問題や困難などに対して「何とか対処する」といったニュアンスで使われます。

また、似たような意味を持つ「deal with(対応する)」という熟語表現もあります。こちらは状況や事情はともかく、良かれ悪しかれ話を聞くといったニュアンスも含まれます。より好意的に状況を考えて努力をするといった意味では「cope with」の方が適切です。

「善処」を使った英語例文

  • Can you please cope with this problem?
    この問題を善処してもらえませんか?
  • I hope you could cope with this customer’s claim.
    この顧客クレームを善処してもらえると助かるのだが。

まとめ

「善処」とは「物事を上手に取り計らうこと」や「状況に応じて対処すること」を意味します。ビジネスシーンでは「善処します」や「善処させていただきます」というように使われますが、ここには「できるだけ努力する」や「不安はあるが頑張る」といったニュアンスが含まれます。

「善処」は「確約」や「約束」といった確定的な意味合いは薄く、状況によっては「様子を見極めて正しいことを行うつもりでいる」程度の曖昧な意味合いとなることもあります。解釈や使い方に気を付けて会話や文書で用いるようにしましょう。