「端緒」の意味と語源とは?「発端」との違いや類義語の例文も紹介

「端緒」は「物事の手がかりきっかけ」という意味を持ちます。似た言葉に「発端」がありますが、意味や使い方の上でどのように異なるのでしょうか?

ここでは「端緒」の意味と語源のほか使い方の例文、類語と対義語、また英語フレーズをわかりやすく紹介します。ぜひ、読み方についても注目してみて下さい。

「端緒」の意味と語源とは?

「端緒」の意味は「物事のきっかけや手がかり」

「端緒」は「物事のきっかけや手がかり」を意味する言葉です。物事が始まるとき、また解決するときに糸口になるもの、また拠りどころになるものを「端緒」といいます。

「端緒」とは、簡単に言えば「物事のとっかかりとなる部分」のことです。つまり、どのような理由や契機を持って物事が実行されたか、その要因やトリガーになる部分を「端緒」と呼んでいます。

「端緒」の語源は「端」と「緒」の意味

「端緒」は、「端」と「緒」のそれぞれが持つ意味が語源となる言葉です。

まず「端」は、「端」には物事の末の部分やふちという意味のほかに「物事が起こるはじめ」または「いとぐち」という意味があります。そして「緒」には、糸やひもなど物を結ぶものという意味のほかに、「物事が始まったり、解決したりする時のきっかけ」や「物事のはじめ」という意味があります。

つまり「端」と「緒」のどちらとも、「物事のはじまり」や「きっかけ」といった意味があることが理解できます。同じ意味を持つ二つの言葉が重なり、強調する意図で出来た言葉が「端緒」です。

「端緒」の読み方は「たんしょ」

「端緒」の読み方は「たんしょ」です。しかし、現代では「たんちょ」という慣用読みもあり、一般的に定着してきました。辞書に載っている本来の読み方は「たんしょ」で、本来は間違っている読み方であるものの、一般に広まって使われている誤読が「たんちょ」となります。

「端緒」の使い方と例文

「端緒」は事件解明や原因追究の場面で使う

「端緒」には「解決するときの糸口」という意味があるため、事件を解明する時や、ミスや過ちの原因を追究する時に使われることが多いです。

たとえば、事件解明に向けて進展が見込める証拠や拠りどころになるものを指す時に「端緒」という言葉を使います。たとえば「物的証拠が事件解決の端緒となった」というような形で使われます。

また、ビジネスシーンにおいてミスや過ちがあった際、原因を追及する段階で「端緒」という言葉を使うこともあるでしょう。たとえば「誤出荷の端緒は連絡もれだった」というように使われます。

「端緒」を「短所」と聞き間違えないように

「端緒」の読み方が「たんしょ」であることから、会話の中で「端緒」を使う際、同音異句語の「短所」と混同して解釈されてしまうことがあります。「短所」は日常的に話し言葉として使われるため馴染みのある表現ですが、「端緒」を口語で活用することは少ないでしょう。

もともと「端緒」は話し言葉というより、むしろ「書き言葉」して使われる表現です。そのため、話し言葉として「端緒」を使う時は「きっかけ」や「いとぐち」などのように、相手にとって理解しやすい表現を用いると良いでしょう。

もちろん「端緒」を会話の中で使うべきではないということではありません。しかし、口語では「端緒」と「短所」を誤って解釈してしまうことがあるという点に留意するようにしましょう。

「端緒」を使った例文

  • 募金を多く集めることが、貧困を救う端緒となる。
  • 事件解決の端緒は、裁判で重要参考人が証言をすることだ。
  • なぜ生産ミスが出たのか?調べている間に原因の端緒が見えてきた。

「端緒」と「発端」の違いとは?

「発端」とは「物事のはじまり」という意味

「発端(ほったん)」は「物事のはじまりや起こり」を意味し、物事が起こったり実行される、そのはじまりや始めの部分を表します。「発端」の「発」は「生じること、起こること」また「端」は「物事の始め」という意味があります。

「発端」に「きっかけ」の意味合いはない

「端緒」と「発端」はほぼ同じようなニュアンスで使われますが、本来の意味を見るとそれぞれニュアンスが多少異なります。

「端緒」は「物事の手がかりやきっかけ」という意味です。一方「発端」は「物事のはじまり」が軸となる意味であるため、「端緒」が持つ「きっかけ」といったニュアンスがやや欠けています。つまり、「発端」は物事の「最初の部分だけ」を指すのに対し、「端緒」の場合は「物事がはじまるトリガーとなる部分」を強調しています。

「発端」を使った例文

  • 彼女が彼を裏切ったことが事件の発端であった。
  • ことの発端は、部長が部下を怒鳴りつけたことである。
  • 物語の発端は苦悩に満ちたものだったが、最後はハッピーエンドだった。

「端緒」の言い換えと類語とは?

「契機」とは「物事がはじまるきっかけや手がかり」

「契機」には「物事や事態がはじまるきっかけや手がかり」という意味があります。「契機」は物事の始めにある部分で、それがきっかけとなって物事がはじまったり、変化したりします。

「端緒」は良い物事に対しても、悪い物事に対しても使われますが、「契機」は良い結果を招く場合やポジティブな文脈において好んで使われます。たとえば「転職の契機となった」と「転職の端緒となった」ではニュアンスが異なります。

「引き金」とは「事態が起こる直接的な原因」

「引き金」は物事や事態が起こる直接的な原因を意味します。つまり、何かが始まるきっかけとなる事柄を指すのが「引き金」となります。

ピストルの引き金から連想できるように、物事を引き起こすトリガーや、物事や事態の起因となる部分が「引き金」の意味するところです。「端緒」にも「物事の手がかりやきっかけ」という意味があるため、言い換え可能な類語として活用できます。

「嚆矢」とは「物事のはじまり」

「嚆矢(こうし)」は「物事のはじまり」という意味があります。何かのさきがけとなるものをたとえた言葉で、言い換えれば「起源」と非常に似たニュアンスで使われます。日常的に使われることはあまりありませんが、たとえば「カステラは日本の洋菓子の嚆矢である」というように、文化的・歴史的な分野で多く使われます。

「端緒」にも「物事がはじまるきっかけ」という意味がありますが、文化や歴史における起源といったニュアンスは薄いです。「嚆矢」も類語となりますが、言い換える時は文脈を確認しましょう。

「端緒」の対義語とは?

対義語は「最後」「結末」「エンディング」

「端緒」の正式な対義語はありませんが、「端緒」が持つ「物事がはじまるきっかけ」という意味と反対になる言葉は「最後」「結末」「エンディング」などが挙げられます。これらは一連のものごとの終わりを表したり、最終的な結果というニュアンスを持つ言葉です。

「大団円」は非常に見事に解決すること

「端緒」の対義語にあたる言葉に「大団円(だいだんえん)」があります。「大団円」は主に劇や映画などのストーリ性を持つ場面で、最後に非常に見事な解決劇を見せることを意味します。すべてがめでたく解決し、何も欠けることなく円満な結末を迎えることを指します。

「端緒」が「物事がはじまるきっかけ」ですから、最終的に話が収まるという意味の「大団円」は反対の意味を持つ言葉だと言えます。

「端緒」の英語フレーズは?

英語では「beggining」「occasion」「trigger」

「端緒」を英語にすると、はじまりの意味を持つ「beggining」や、きっかけを意味する「occasion」「chance」などになります。また「物事のきっかけとなる」ことを意味する動詞「trigger(トリガー)」も使えるでしょう。

「端緒」を使った英語例文

  • 端緒を開けなければ、物事は始まらない。
    Things never start unless you mark the beginning of it.
  • 宝くじに当たったことが、家を購入する端緒となった。
    It triggered me to buy a house when I won the lottery.

まとめ

「端緒」は本来「たんしょ」と読みますが、現代では「たんちょ」という読み方も定着しています。意味は「物事のてが手がかりやきっかけ」となり、物事を始めたり問題を解決する際にきっかけとなるものを表します。

また、「端緒」は物事の始まりそのものを指す「発端」と混同しがちですが、意味や使い方が異なるため上手に使い分けをしましょう。また、状況によって「契機」や「引き金」などの類語を言い換えの語句として活用してみてください。