「立て込む」とは「一か所に集中すること」を意味する言葉です。仕事では「忙しい」や「取り込む」というニュアンスで用いられますが、職場やビジネスメールではどのような状況で使われるのでしょうか?ここでは「立て込む」の古文での意味を含め、仕事での使い方と例文、類語や英語フレーズを紹介します。
「立て込む」の意味とは?
「立て込む」とは「一か所に集中するさま」
「立て込む」とは「一か所に集中するさま」を意味します。わかりやすく言えば「多くの人が一か所に集まっているさま」「用事が多く集まるさま」を表す言葉です。いずれにしても「立て込む」とは、多くの人や物事などが一気に重なって起こることを指す言葉となります。
「立て込む」は「忙しい」の意味でよく使われる
「立て込む」を使う場合は「多くの用事が重なり忙しい」「多くの人が集まり込み合う」という意味になります。
たとえば、「本日は仕事が立て込んでいる」なら「本日は仕事が重なり忙しい」という意味です。「遊園地は日曜になると立て込む」という文章では「遊園地は日曜になると多くの人で込み合う」という意味になります。
「立て込む」の古文の意味は「戸を閉める」
古文において「立て込む」とは、現代の「立て込む」が持つ意味とは異なり「戸を立て込む」という意味があります。「戸を立て込む」とは、「戸や障子などを閉める」や「閉じ込める」という表現で、今昔物語や徒然草などにも使われています。
「忠明をたてこめて殺さむとしければ」
今昔物語集「己も入りて、たてこめて」
徒然草
「立て込む」のビジネスでの使い方と例文
「立て込む」で仕事の状況を伝える
「立て込む」はビジネスシーンでよく使われるワードの一つです。職場でスケジュール調整をする際に「その日は立て込んでいる」と表現する場合や先方に「打ち合わせが立て込んでいる」と伝えることもあるでしょう。
相手に「立て込んでいる」ことを伝える場合は「申し訳ありません」と一言添え、あわせて別日で調整できないか都合を伺うようにしましょう。相手から「立て込んでいる」と回答があった場合は、断りの連絡として受け止め対応するのが無難です。
「立て込む」は目上の人にも使える尊敬語
ビジネスシーンで上司や取引先に「忙しい」と伝える際、失礼ではないかと感じることはないでしょうか。受け手としても「忙しい時に邪魔をしてしまった」と恐縮してしまうかもしれません。
このような場面で、「立て込む」は「忙しい」ことを代弁してくれる敬語表現となります。たとえば、上司や取引先の相手に「今日は忙しいので…」と伝えるより「今日は立て込んでおりまして…」としたほうがやんわりと断ることが可能です。
また、「立て込む」には「バタバタとしている」というニュアンスも含まれるため、相手に手が回らないという状況を間接的に伝えることもできます。
「立て込む」をビジネスメールで使う
ビジネスメールの返信が遅れた時、「立て込む」という表現を使って謝罪の意を示すこともできます。たとえば「本日は会議が立て込んでおり、メールの返信が遅れてしまいました」とすれば、相手も受け入れやすいでしょう。
社内外の人が多く関わるビジネスシーンでは、メールの返信スピードもマナーの一つです。大幅に連絡が遅れた時は「〇〇で立て込んでいた」と丁寧に伝えましょう。
「立て込む」を使った例文
- 来週はイベントの準備で立て込んでいるため、会議に参加することができません
- 仕事で立て込んでいるわけではないが、今日は残業せず帰宅する予定だ
- 美味しいと評判であるレストランであるせいか、昼夜を問わず立て込んでいる
「立て込む」の類語や言い換え表現とは?
「立て込む」の類語1「取り込む」
「取り込む」は不意の出来事や急に舞い込んできた用事などで、急に忙しくなり手が離せる状況ではないことを意味します。つまり「取り込む」はある一つの物事に追われて落ち着かない状態になることを指す言葉です。
仕事では「お取込み中、失礼します」などと言ったりしますが、これは相手が急な用事や重大な案件で手が離せずバタバタとしている時に相手を気遣って使われる言い回しです。
また「取り込む」は「立て込む」とはやや異なり、人が何かに集中していることに対して使われる表現です。そのため「人気店が大勢の人で取り込む」といった使い方は誤りとなります。
「立て込む」の類語2「犇めき合う」
「犇めき合う(ひしめきあう)」は、大勢が一か所に集まり押し合いへし合いになることを意味します。大人数でぎっしりと埋まり、互いが押し合うようになって騒いでいる状態です。つまり、身動きが取れないほど人であふれているような場面で使われます。
「立て込む」と似たような意味がありますが、「犇めき合う」は物理的にぎゅうぎゅう詰めで自由がきかないような状況で多く使われます。そのため、「予定が犇めきあっている」「仕事が犇めき合っている」という使い方はしません。使い方において異なる点があるため、言い換えの際には気をつけましょう。
- 入口が犇めき合っている
(入り口に大勢の人が集まっている状態) - カップルで犇めき合っている
(カップルだらけの状態)
「立て込む」の類語3「すし詰め」
「すし詰め(すしづめ)」とは、大勢の人や物事が隙間なくぎっしり入っている様子を、折箱に詰められた寿司にたとえた言い回しです。ただし、「すし詰め」には敬語の意味合いはありません。
上司や取引先に対して「予定がすし詰めでして」「仕事がすし詰めでして」と使うのも適切ではありません。このように使ってしまうと、大忙しであることを自慢しているように聞こえてしまうため注意しましょう。
- すし詰めの電車
(身動きが取れないほどの満員電車) - すし詰めのコンサート会場
(ファンでぎっしり埋められた満員御礼のコンサート)
「立て込む」の英語表現とは?
「立て込む」の英語1「busy」
「立て込む」をシンプルに英語にするなら「busy(忙しい)」が最も適切です。英語圏では目上の人や上司に対しても、失礼な感情を与えず「busy」を使うことができますが、どんなことで忙しいのか「busy with …」を使って伝えましょう。
I’m busy with new project
新規のプロジェクトで立て込んでいる。
「立て込む」の英語2「be caught up with」
「be caught up with」もよく使われる熟語表現です。「急に忙しくなってしまった」というニュアンスで使われ、そこから抜け出せないくらい忙しい状態を意味します。似たような熟語表現「be swamped with」はさらに状況的に過酷で「身動きが取れないほど非常に忙しい」となります。
I have been caught up with schedules since last week.
先週からずっとスケジュールが立て込んでいた。
まとめ
「立て込む」は「一か所に集中している様子」を表す言葉です。古文の場合は「戸や障子を閉める」「閉じ込める」の意味で使われます。仕事で使う場合は「用事が重なり忙しい」「手が離せない」という意味合いです。
また「立て込む」は敬語表現でもあるため、上司や取引先などに対して忙しいことを伝える際も使えます。ビジネスメールでは、返事が遅れた謝罪の言葉として理由を簡潔に添えるとより丁寧な印象になります。
(やる事がたくさんあり非常に忙しい)
(複数の会議が重なっていて忙しい)
(多くの予定が入っているため忙しい)