「檄を飛ばす」の正しい意味とは?誤用しやすい使い方や言い換えも

「檄を飛ばす」は「自分の考えや主張を知らせて、同意を得ること」を意味する表現です。「檄を飛ばす」は誤用の多い言葉の一つですが、やはり社会人としては正しい意味や使い方をしっかり把握しておきたものです。

ここでは「檄を飛ばす」の意味と語源の他、誤用の例や使い方の注意点と例文、類語や英語などをわかりやすく解説します。

「檄を飛ばす」の意味や由来とは?

「檄を飛ばす」とは「声明を出し同意を促す」の意味

「檄を飛ばす(げきをとばす)」とは「自分の意見や主張したり声明を出して、同意を促すこと」を意味します。つまり、自分の主張を多くの人に理解してもらい、賛同や決起を求めることを「檄を飛ばす」といいます。

「檄を飛ばす」は、複数の人に向けて自分の意見や考えを主張し、聞き手に同意を促す行為を表します。そのため、純粋に自分の主張を述べるだけではなく、相手に「そうだ」と同意してほしいという意思が強く込められています。つまり「共に立ち上がろう」と呼びかけるような行為を「檄を飛ばす」と呼んでいます。

「檄を飛ばす」の由来・語源は「飛檄」

「檄を飛ばす」とは、檄文(げきぶん)を早く広く届けることを意味する「飛檄(ひげき)」を語源に持つ言葉です。「檄文」は人に賛同してもらいたい内容が記された「木札」のことを意味します。古代中国では、この木札を同意を促す目的で回覧していました。

檄とは「示し文」という意味もあります。古代中国の軍事招集において、人に勇んで参加してもらう意図で書かれた文章を指し、「軍に参加したい」と思わせるようやや挑発じみた表現で書かれているのが特徴です。

「檄を飛ばす」は三国志でも使われている

「檄を飛ばす」は中国の後漢末期から三国志時代を描いた「三国志」でも使われています。この中に、曹操(そうそう)が董卓(とうたく)を倒すために、各地の強者に招集を求める手紙が送られたことが記されています。

「共に悪人をやっつけよう」と呼びかけた内容を広い地域に向けて発する行為は、まさに「檄を飛ばす」ことを表しています。

「檄を飛ばす」の使い方と例文

「檄を飛ばす」を「怒る」の意味で誤用しやすい

「檄を飛ばす」は誤用の多い言葉であるため注意が必要です。最も多いのが「怒る」や「活を入れる」と解釈しているケースで、「叱咤激励(しったげきれい)」の「激」と混同されたためだと考えられます。

たとえば、「重役に檄を飛ばされた」とは「重役に声明を出された」という意味であり、「重役に活を入れられた」「重役に怒られた」という意味ではありません。このように現代の使い方においては「檄」を「激」として解釈し、誤用されている場面が多く見受けられます。

「檄を飛ばす」は、あくまで「世間に自身の主張を知らせ、同意を求めること」を表す言葉です。くれぐれも誤った使い方をしないように気をつけましょう。

「檄を飛ばす」は複数人に対して使う表現

「檄を飛ばす」は「世間や大勢の人に対して自分の主張を伝え、同意を促すこと」を意味します。つまり「檄を飛ばす」は基本的に「複数人」に対して使う言葉であるため、一人に対して使うのは適切ではありません。

たとえば、一般企業を例にとれば、多くの社員が参加する朝会や新年の挨拶の時、社長が主張や豊富などを述べる時に使われます。自分の主張や考えを述べ、相手に賛同をしてもらいたい場合は、「檄を飛ばす」を使わず、シンプルに「伝える」や「知らせる」などの表現を使いましょう。

「檄を飛ばされた」場合の言い回し

「檄を飛ばす」は「世間に主張を知らしめて同意を促す」という意味がありますが、ここには「相手に対して行動や変化を求める意思」が含まれています。

そのため、「檄を飛ばされた」ことを表現したい場合は「檄をもらう」「檄をいただいた」などは文法的に正しいとは言えず、「ご意見をいただく」「ご指導いただく」など「檄」を使わない表現に言い換えるとよいでしょう。

「檄を飛ばす」を使った例文

  • 今年の抱負について、社長が社員に向けて檄を飛ばしていた
  • 部長から檄が飛ぶ前に、顧客分析を徹底的に行っておこう
  • 大学の講義で起業のメリットについて檄が飛ばされ、ますますやる気ができていた

「檄を飛ばす」の言い換えに使える類語とは?

「檄を飛ばす」の言い換え表現「檄文を回す」

「檄文を回す」は「自分の意見を主張して示し、同意や賛同を求める」という意味を表します。「檄文を回す」は「檄を飛ばす」とほぼ同じ意味で使われる言い回しですが、「回す」という言葉が使われているため、「飛ばす」に比べて「広範囲に渡って知らしめる」というニュアンスが強まります。

また「檄文」という古代中国の木札を表す言葉が使われているため、「檄を飛ばす」よりも古典的で硬い表現として伝わることがあります。

例文

会長から新年早々、売り上げに対する檄文が回された。

「檄を飛ばす」の類語「声明を出す」

「声明を出す」とは「公の場で主張や意思を示すこと」を意味します。「声明を出す」は、ある事柄についての意見や意向を、メディアや公共の場を使って発表することを表します。そのため、公に国が国民に対して発したり、組織が世間に対して伝えることに対して「声明を出す」という言い回しを使います。

また「声明を出す」は相手に一方的に伝えるニュアンスが強く、必ずしも同意を求める意思を含んでいるとは限りません。また「檄を飛ばす」は公共の場面でなくても使われますが、「声明を出す」は公共に知らしめる目的のみで使われます。

例文

過激軍は敵国への攻撃をストップするという声明を出した。

「檄を飛ばす」と「発破をかける」の使い分け

「檄を飛ばす」と同じような意味として誤用される言葉に「発破をかける(はっぱをかける)」があります。「発破をかける」とは「相手を激励したり、激しい口調で応援すること」という意味です

よくある誤用の原因に「檄を飛ばす」を「頑張れと励ます」と誤って解釈しているパターンが挙げられます。それぞれの言葉に合った対応ができるよう、正しく理解しておきましょう。

「檄を飛ばす」の英語表現とは?

「檄を飛ばす」とは英語で「issue a manifesto」

「檄を飛ばす」は日本語独特の言い回しであるため、ざっくりと意訳する必要があります。たとえば「主張を知らしめる」という意味なら「issue a manifesto」というフレーズを使うのが良いでしょう。

「issue」は「布告する」、「manifesto」は「政策や政党に関する宣言」や「声明文」を意味します。つまり「issue a manifesto」で「主張を布告する」や「声明文を出す」という意味となります。

また「檄を飛ばす」は「相手に勇んで行動してもらうように呼びかける」というニュアンスもあります。こういった意味合いでは「encourage(そうするよう励ます)」という単語も使えるため、文脈で上手に活用してみてください。

「檄を飛ばす」を使った英語例文

  • The CEO has issued a manifesto to the government calling for financial cooperation.
    我が社のCEOは、政府に金融的な協力を呼びかけるよう檄を飛ばした。
  • The teach kept on encouraging his student to never give up.
    最後まで諦めないよう、先生は生徒たちに檄を飛ばし続けた。

まとめ

「檄を飛ばす(げきをとばす)」とは「自分の考えや主張を世間に示し、賛同を促すこと」を意味し、語源は古代中国の「飛檄」となります。「檄を飛ばす」は文章の内容によって「檄文を送る」「発破をかける」などに言い換えも可能です。

また「檄を飛ばす」は誤用の多い言葉の一つです。「活を入れる」や「怒る」といった意味で使わないように気をつけましょう。