「モラトリアム」の意味とは?使い方や熟語表現を例文つきで解説

「モラトリアム」はニュースなどの各メディアなどでよく聞くカタカナ語ですが、意味や使い方が今一つよくわからないという人も多いのではないでしょうか?

ここでは「モラトリアム」について本来の意味と現代の意味を確認しながら、使い方、モラトリアムを使った熟語、そして英語表現を併せて紹介しています。

「モラトリアム」の意味と使い方とは?

早速、「モラトリアム」意味と使い方を英語のスペルと併せて見てみましょう。

派生した意味は「大人への猶予期間」

「モラトリアム」の意味は「大人への猶予期間」です。「モラトリアム」はもともと支払い猶予という意味がありますが、現代の「モラトリアム」は心理学用語として派生した意味で使われることがほとんどです。

心理学的な観点から見た「モラトリアム」は大人の領域に足を踏み入れ始めた大学生などの学生が「一人前の大人になること」を猶予されている期間を意味しています。これは心理学者エリクソンによって唱えられたコンセプトであり、いわば「大人になるための準備期間」を指す言葉です。

しかし、日本ではさらにここから意味が発展し、大人になるための猶予期間を過ぎても大人になろうとしない、またはそこから逃げている様子を「モラトリアム」と表すようになっています。

本来の意味は「支払い猶予」

「モラトリアム」の意味は、「支払い猶予」「一時停止」です。英語の「moratorium」のことです。もう少し詳しく言えば「モラトリアム」とは天災や災害などにおける債務に対しての支払い猶予期間、または法律が公布されてから施行されるまでの猶予期間のこと指しています。

「モラトリアム」の使い方と例文

「モラトリアム」は社会的には大人に達しているにもかかわらず、心理的な成長を避け、人生の選択を先延ばしにしている状態を指しています。広い意味で言えば、大学を卒業しても仕事をしない、興味のあることをあれもこれも手出しし一つに絞れない、という様子も含まれるでしょう。

しかしながら、真っ向から否定的に相手を傷つけるような口調で「モラトリアム」を使わないようにして下さい。就職しないのは家庭の事情や、その他のプライベートな要因が原因であるかもしれないからです。簡単な例文を挙げてみましょう。

  • モラトリアムから脱出しようと1年ぶりに就職をした
  • 人生の重要な選択を延期し、大人への成長から逃げ続けることがモラトリアムである。

「モラトリアム」の3つの熟語と意味とは?

続いて「モラトリアム」のつく言葉を3つ厳選し、あわせて意味を紐解いていきましょう。

モラトリアム人間は「逃げ続ける人」

「モラトリアム人間」と社会人として責任を持った行動をしようとせず、立派な社会人になることや尊敬される大人なるという「人生の選択から逃げ続ける」若年層を指しています。

モラトリアム人間に見られる共通点は「定職につかない」「現実逃避」「社会との関係を持たない」「優柔不断である」などが挙げられます。いつも「自分はもっと素晴らしい人間である」という概念を抱き、現実から目を遠ざけ、身近にある集団に入ろうとせず、ものごとの取捨選択ができない人が多いと言われています。

モラトリアム症候群は「無気力な状態」

「モラトリアム症候群」は「アイデンティティ拡散症候群」とも呼ばれる精神病理にあたると言われています。主な症状は「無気力」「組織への帰属を怖がる」「過剰な自意識にとりつかれる」「社会的自己の選択を避け、永遠に決断をしないという心理状態になる」などです。

既に出来上がった社会に自分が飲み込まれてしまうことを嫌い、現実の世界が自分には適切でないと判断してしまう傾向があります。

「モラトリアム症候群」に陥る原因はさまざまですが「親の過保護」また「親のネグレクト」など子供の頃に置かれた生活環境などが影響されているようです。

モラトリアム期間は「大学生の期間」

「モラトリアム期間」は一般的には「大学生」「大学院生」の期間(18歳から22歳前後)を指しています。知性はもちろん身体的にも肉体的にも成熟し「大人」というタイトルをもらいながらも、社会に出ていないいわゆる「アイドリング期間」です。言い換えれば、まだまだ社会人として出発することを延期している状態でもあります。

心理学者エリクソンが唱えた「モラトリアム」の概念にはもともとマイナス要素はありません。純粋に「大人になるための猶予期間」であり「必要な準備期間」を意味していましたが、現代の「モラトリアム」が持つニュアンスは大学生が就職をすることをせず、社会に出ることを拒否するような状態を指すようになっています。

「モラトリアム」を使った英語表現とは?

最後に「モラトリアム」を使った英語表現についてみてみましょう。国際的に仕事をする人は会話に取り入れてみてもよいのではないでしょうか?

英語では「支払猶予」の意味で使う

英語の「moratorium」は現代の日本における「モラトリアム」や心理学における「モラトリアム」の意味で使われることはあまりないかもしれません。ほぼ「支払い猶予」「一時停止」「予定の凍結」などの意味合いで用いられるため、使い方において方向性を留意しておきましょう。

「モラトリアム」を使った例文

  • We are going to impose 3 days moratorium on your payment
    支払いの猶予を3日間与えることとする。
  • Here is the sign saying moratorium of construction.
    「建設の一時停止」の看板がある。

まとめ

「モラトリアム」は本来の英語の意味、心理学的な意味、現代の日本で使われている意味とそれぞれ異なるため、使い分けを上手にする必要があります。本来は天災や災害などで支払いに対し支払いの猶予を与え、その期間を指していましたが、心理学者エリクソンの唱えで「大人になるための準備期間」を意味するようになり、現代では「大人になることを避け続ける様子」などを表す言葉へと派生しています。

「モラトリアム」の状態から脱出するのは本人以外の誰でもありません。精神的に健康でいられるように生活のリズムを整えて、どのような逆境でも耐え抜く柔軟な力をつけていきましょう。