「パラダイム」とは、一定期間や分野において広く受け入れられるモノの見方や解釈などを総称する言葉です。「パラダイム」はアメリカの科学史者が提唱し広まった言葉ですが、一般的にはどのように使えば良いのでしょうか?
ここでは「パラダイム」の意味や英語表記、使い方と例文、「パラダイムシフト」などについて解説します。
「パラダイム」の意味と語源とは?
パラダイムとは「ある分野や時代で基準となる概念」
「パラダイム(paradigm)」とは「一定の期間や時代、特定の分野において広く受け入れられている規範的なモノの見方や捉え方」を意味します。わかりやすく言うと「その時代に当たり前だとされた価値観や考え方」のことです。
一般的な辞書の中では「規範」や「範例」というように端的にまとめられていますが、「パラダイム」が実際意味しているのは、「認識の仕方」や「支配的な解釈」となります。また「パラダイム」は産業や思想をはじめ、経済、学問などあらゆる分野で活用される方法論の一つです。
語源はトーマス・クーンの「科学革命の構造」
「パラダイム」は、アメリカの科学史家「トーマス・クーン(Thomas Samuel Kuhn)」が書いた「科学革命の構造(The Structure of Scientific Revolutions)」で世に知られるようになった言葉です。
この書でクーンは、「パラダイムとは一つの定まった期間において、科学者に自然に対する問い方や答え方の範例を与えるもの」と提唱しています。
「パラダイムシフト」の意味と使い方とは?
パラダイムシフトとは「当たり前が変化すること」
「パラダイムシフト(paradice shift)」とは、支配的な理論のベースとなる前提が急激に変化することを意味します。
「シフト」とは「物事や状態が別の方向へ移動する」ことを表すため、「パラダイムシフト」で「その時代に当たり前という立ち位置にあった事柄や現象などが、劇的に別のものへと移り変わる」という意味になります。
たとえば、一昔前には当たり前だった考え方や価値観が、新しい時代に入った途端に無意味なものになってしまったり、また別の事柄が考え方における支配権を握るような「変革」を「パラダイムシフト」と呼んでいます。
「パラダイム転換」と表現する例も
「パラダイムシフト」は、クーンが提唱したパラダイムの概念から発展した言葉ですが、分野や環境によって「パラダイム転換」や「パラダイムチェンジ」と呼ばれることもあります。また、意味の解釈や使い方は人によって異なるようです。
たとえば「パラダイムシフト」を「発想の転換」や「常識を覆すこと」、また「固定観念を捨てる」などと解釈したり、「斬新なアイデアで時代に革命を起こす」と捉える人もいます。
一般的には、「パラダイムシフト」は「時代が大きく動き、その時代の常識が変わる」といったニュアンスで使われることがほとんどです。
「パラダイムシフト」はビジネス戦略の一つ
「パラダイムシフト」は利益を目的とする産業界において、切っても切り離せない項目の一つです。「モノが売れない」「サービスが繁盛しない」理由は、消費者のパラダイムシフトによるものが多く、常に消費者の足跡や世間のトレンドを追跡することがビジネスを継続させる重要な鍵となります。
「パラダイムシフト」を積極的に試みる企業は増えていて、時代のトレンドを企業が研究し利益追求のための変革を求める動きが出ています。市場での存在感を維持するためにも「パラダイムシフト」は企業が力を入れる戦略の一つです。また、「パラダイムシフト」は古い体質から脱出するために必要な行動意識でもあります。
「パラダイム」の各分野での使い方と例
「パラダイムシフト」の歴史的な例
- ニュートンによる万有引力の法則で、世界観や常識が変わった。
- 大化の改新で豪族中心の政治体制から天皇中心制の政治へと移行された。
- ペリーの来航で、鎖国時代が終焉し開国を迎えた。
「産業」におけるパラダイム
産業におけるパラダイムは、主に「トレンド」という意味で使われます。つまり、その時代に注目される「技術」や「制度」また「社会文化」によって生まれる「流行り」を表します。
たとえば、昭和に流行ったおもちゃや家電製品などが、平成には時代遅れとなる感覚や解釈などが「産業パラダイム」のわかりやすい例です。産業におけるパラダイムは、時代の動きや風潮などを表す規範となるものでもあります。
「統計学」におけるパラダイム
統計学におけるパラダイムとは、一定の期間において、基準となるモデルや尺度という意味です。その時代に活用されている信頼度の高い科学的データや、多くの研究所でまかり通っている概念などを指します。たとえば、看護研究や臨床に関係する解析分野で広く使われています。
その当時に当たり前だった情報やデータは、時代と共に変化が変化することがあります。一定の期間ごとに最新のデータをアップデートすることで、より信頼できるデータを絞り出すことできます。
「行動」におけるパラダイム
行動におけるパラダイムとは、消費者行動や世代行動などを例に、ある一定のグループの行動や判断の規範となる手本を表しています。たとえば、ある一定の時期において、若者がロングスカートを時代遅れだと認識する、就職せず起業することを良しとする、といった価値観などを指します。
行動におけるパラダイムは、あらゆる企業にとって重要な概念です。なぜなら、その時代に流行る商品や、その時代に人々が求めるサービスなどを理解することで、消費者の需要に応えることができるからです。おのずと利益にも反映するため、販売促進へとつながることも期待できるでしょう。
「パラダイム」の類語とは?
パラダイムの類語①「共通認識」
「共通認識(きょうつうにんしき)」とは物事を同じように理解していることを意味します。双方が持つ共通の認識を表し、同じ物事や同じ言葉、同じ思想などについて同様の解釈と見解を持つことを「共通認識」といいます。
パラダイムの類語②「時代精神」
「時代精神(じだいせいしん)」とはその時代に根付く考え方や物事の捉え方を意味します。そもそも「時代」とは社会構造や政治形態、文化思想などを例に、ある目安によって区切られた期間の長さを指します。
それは昭和時代や平成時代であったり、封建時代や軍国主義時代であったりと、対象になる項目によって変わります。それらの時代に人々の心に深く浸透した物事の捉え方を「時代精神」といいます。
パラダイムの類語③「社会風潮」
「社会風潮(しゃかいふうちょう)」とは、それぞれの時代の推移にしたがって見られる、人々の傾向や価値観、雰囲気や流行りを意味します。その時代に流れる世間のムードや状況、世論や社会全体の流れを総称して「社会風潮」と呼んでいます。
たとえば、戦後に見られた社会風潮には、高度成長期における「大量生産(マスプロデュース)」が挙げられます。
まとめ
「パラダイム」は英語の「paradigm」が語源で、アメリカの科学史者クーンが「科学革命の構造」で唱えた言葉です。意味は「一定の期間や分野で、広く受け入れられるモノの見方や解釈」となりますが、簡単に言うと「ある時代に当たり前とされた考え方」のこと。
また「パラダイムシフト」は「それが当然であるという考えが劇的に他に変化すること」を意味します。